会議
魔王が来るまで思い思いに話していた彼らは、ピタッと話を止め静かになる。そして、イスから立ち上がり扉の方に体を向ける。
姿勢を正し待つこと数秒。扉が開き、ベトラーそして魔王が部屋に入る。皆が礼をとる中、魔王は席に着いた。
「皆、座れ。」
魔王の声で皆が席に着く。
席に着いたことを確認し、ベトラーが話始める。
「さっそくですが、昨夜、女神様から異界の者をこの世界に連れて来た、という報告があったそうです。」
「女神様が…?なぜかしら?」
ダリアナが疑問を口にする。
ベトラーが魔王を見、魔王が答えた。
「なぜかは分からない。事情があるそうだ。」
「どういった者が来たのでしょうか?」
次いでルークが質問する。
魔王は少し考えた素振りをし、端的に伝えた。
「ヒューマンの女で、名はシズク、仕えている者とリシアの森に住んでいる。そして、女神から加護を与えられているそうだ。」
皆、表情が固まった。魔王が何を言ったか分からないというように…。
しばらくし、ダンが沈黙を破った。
「本当にヒューマンがリシアの森にいるのですか?加護というのも…信じがたいことです。」
皆、半信半疑に魔王を見る。
「あぁ。そう思うのも仕方がない。私も知っていることはないに等しい。…女神はヒューマンではなく、魔族と交流を持たせたいそうだ。」
「なぜでしょう?ヒューマン同士の方がいいでしょうに…。」
リズは頬に手をあげ首を傾げている。他の魔族たちも同じように思っていた。
「ヒューマンにしては強い力を持っているそうだ。仕えている者も…。ヒューマンに利用され争いに巻き込まれるのではと、懸念しているようだな。」
「争い…。ヒューマン同士か…、魔族に戦を仕掛ける火種か…。」
レグルが私案し、それにガルムは余裕の表情を浮かべる。
「どっちにしても、ヒューマンだ。俺らの敵じゃないだろう。」
皆、それぞれ思考をめぐらす。
「女神の話だと、本人は争いを望んでいないそうだ。とはいえ、どんな人物か分からない以上、無視することも出来ないだろう。…一度確かめに行く。」
魔王の言葉を受けて、ベトラーは今からすべきことを考えた。
「では、仕事の調節と人選を。…リシアの森は陛下以外、受け入れない可能性がありますが…。」
認められた者しかあの場所に行くことは出来ないが、どんな人物がいるか分からない以上、陛下1人では危険かもしれない…。
「あぁ…だが、1人で行くことを認めはしないだろう?人選はお前に任せる。日程は一週間後だ。2、3日開けておけ。」
「かしこまりました。」
話が終わり、魔王が部屋から立ち去る。幹部たちは、立ち上がり礼をして魔王を見送り、再び席に着く。