目が覚めたら…
「んー…。」
と、まどろみの中ゴロンと寝返りを打った。ふわふわの布団が気持ちいい。
……布団?あれ?いつ家に帰ったんだろ?外にいたはずなのに…。
まだ寝ていたいと思うけど、ゆっくりと目を開ける。
いつもなら天井が見えるはず、なんだけど…。天井どこ行った??
上半身を起こし辺りを見回すが、明らかに自分の部屋ではない。
どうしてこんなところにいるんだろ?
誘拐?いや、それはないな…。だって…。
見渡す限り白い空間。私がいるベッド以外何もない…。どこかの部屋だというなら壁があるはずだけど見える範囲にはなさそうだ…。こういうのを果てがない、というのだろうか?
改めて辺りを見ても、誰もいない。…どうすればいいのか分からず途方にくれる。
とりあえず、落ち着こうと目を瞑り深呼吸し、ゆっくりと目を開ける。
「目が覚めたのね、よかったわ!」
ビクッ!
誰もいなかったはずなのに、急に隣から声がした。
声の方に目を向けると、そこには長い銀髪にアメジストの目の美女が…。
ぽけ〜
「大丈夫?体に違和感はあるかしら?」
ぽけ〜
「えっと、シズクさん?」
ぽけ〜
「あ、あの…何か言って欲しいのだけれど…」
「…はい??…え?誰ですか??」
あまりのキレイさに見いってしまった…。
いつまでもぽけ~としていた私に困惑していた美女は、話したことで一安心したようだ。
「やっと反応してくれたわね。よかったわ!私はシア、あなたのいた世界とは違う世界の女神です。」
ん?美人さんなんて言った?違う世界?女神?
「…あー夢ね!よかった。おやすみなさ〜い。」
次はちゃんと起きるために横になり、寝に入る。
それに慌てる自称女神。
「え?…えっ!?待って!夢ではないわ!お願い、起きて!」
体を揺さぶる女神を無視し、頭まで布団をかぶる。
意地でも起きない、と固く目を瞑り布団をぎゅっと握る。
こんなの夢のはず!そうでないと目の前に女神とかおかしいじゃん!ゲームやラノベじゃないんだから!
起きて!と諦めない女神は強行手段に出た。ガシッと布団を掴まれ、剥ぎ取られてしまった。
あー!布団が…!
遠ざかる布団に手を伸ばすと、女神と目が合った。
「お願いだからっ、私の話を聞いてー!」
と、必死の形相でハァーハァーと息を整えている女神。
「…はい。」
仕方ない…とりあえず話を聞こうと、向き合う。
話を聞く気になった私に、女神はほっと息を吐く。
「よかったわ、まずはイスに座りましょう。お茶とお菓子を用意していますから。さぁ、こちらへ。」
女神にたくされ、ベッドを降りる。
いつ用意したのか、何もなかった場所にテーブルセットが用意されていた。
テーブルには紅茶とクッキー。席に着き、女神が入れてくれたお茶を飲み一息。
「えー、いきなりのことで混乱していると思いますが、どうか落ち着いて話を聞いてくださいね。」
私は頷き、少し姿勢を正した。
「では。先程も言いましたが、ここはシズクさんの住んでいた世界とは別の世界、異世界と言えば分かりやすいでしょうか?」
「異世界…、何で私、異世界に?」
私なにしてたっけ?最後の記憶は…そうだ!コンビニに行って、帰る途中にある公園のベンチに座ってて、そしたら頭に衝撃が…。それからの記憶がない…。
「頭に何かが当たったような気がしますが…。私、死んだんでしょうか?脳震盪?は違うか?…まさかボールが当たってとかですか?」
私の質問に女神はおどおどし出す。
「えーと、あなたの死因は…。」
なかなか言わない女神に、余程の事情があるのかと思ったが、いつまでもこうしていてもらちが明かない。
「知っているなら教えてください!」
さっきから、女神の目はずっと泳いでいる。そんなに言いづらいことなの?
「あのー、そのー、……っごめんなさい!原因は私なの!」
ガバッ、と勢いよく頭を下げる女神。その拍子にゴツンとテーブルに額を打ち付けた。
「…え?どういうことですか?…というか大丈夫ですか?」
勢いよくいったな…。痛そう…。
「えぇ、大丈夫よ。ありがとう。」
額を押さえ、涙目になっている。
「それで、女神様?が原因っていうのは?」
「どうぞ、シア と呼んでください。そうですね、何から話せばいいか…。」