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CERVATOS  作者: 春戸 稲郎
七月
61/66

処刑


 旧校舎のそこかしこの教室は、マリベルの手配によって畳が敷かれ、客たちが丁だ半だと騒ぎながら金を賭けていた。ツボが開かれて出目が決すると、寺銭のない完全に公平な配当が客に渡される。

 ツボ振りを務めるのはどの教室でも着物を着た女子児童の仕事で、男子児童はその脇で「丁ないか半ないか」と威勢よく声を張っている。子供たちの誰も彼もが、仁侠映画で予習したかのような見よう見まねの姿で、どこか〈ごっこ遊び〉のようでもあった。しかし、だからこそいつも以上に〈セルバトス〉は和やかだった。

 そんな中、四人のヤクザたちが案内されたのは、体育館の隣の武道場だった。

 かつては剣道の練習で踏みしだかれてきた黒い板張りの床に茣蓙(ござ)が敷かれ、その中央に、黒地に鞠の着物姿の異国の少女が、静かに腰を下ろした。

「それでは、始めさせていただきます」

 目の前に居並ぶヤクザに向けて、右手にツボを、左手の指にふたつのサイコロを見せる。

「……入ります」

 マリベルは流麗な動作でツボの中にサイコロを入れると、すとん、と小気味良い音を立てて、サイコロを封じ込めたツボを(ぼん)茣蓙(ござ)の上に置いた。

 勝敗の決まった丁半勝負はこのようにして始まり、夜明けと共に終わった。


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