侵略者
―――七月の第二土曜日。
午前七時に、開業準備中の旧校舎に刑事の岩下がやってきて、マリベルを連れて行った。
マリベルがいないことを事前に織り込んでいたメンバーは、予定どおり午後八時に〈セルバトス〉の営業を始める。
営業開始と同時に、先週やってきたヤクザたちが大挙して来店した。
職員室の中、運営を任されたそらなが、監視班の瑠奈とともにモニターを見つめる。
「案の定……実に横柄な態度ですね、瑠奈さん」
「騒ぐ、怒鳴る、因縁をつける、酒を持ち込む、席を占領する。文句なく数え役満ね」
染谷のいる机の上にあるモニターからでも、ヤクザたちが〈セルバトス〉の中で傍若無人、跳梁跋扈に振る舞うのが見て取れた。
どこで見つけてきたのか、正式な客からの紹介で、二十人ほどのヤクザたちは〈セルバトス〉に乗り込むと、すぐにすべてのプレールームに散開し、それぞれが持つ悪意を惜しみなく披露して、周囲の客を威圧した。
一般の客はヤクザたちの大声に眉を顰め、ひとり、またひとりと、静かに〈セルバトス〉を去っていき、午後十時を前にして、ヤクザ以外の客はほとんどいなくなっていた。
「ある意味、参考になるくらい統率された、効果的な嫌がらせです」
「ゆすりたかりはヤクザの十八番だからねぇ」
「ここまでは姫様の想定どおり……とはいえ、やはり腹立たしいものです」
「また先月みたいに〈成敗〉してきたら?」
笑いながら提案する瑠奈に、「ご冗談を」とそらなは鼻で笑う。
「試してみたい気持ちは山々ですが……いい頃合です。そろそろ話を持ちかけてきます」
「気をつけてね、そらなちゃん」
愛奈が心配そうな目で見つめると、そらなは微笑んで首を振る。
「心配無用です。先週のような失態は晒しません。……染谷先生も、どうかそのままで」
「……わかった」
染谷が頷くと、そらなは三郎を引き連れて職員室を出て行った。
これからそらながヤクザたちに持ちかける〈ある提案〉、その話し合いにおいては、付いていったところで邪魔になるだけだった。
果たして相手が乗ってくるかどうか。
染谷はモニターの中で、ヤクザと話しはじめたそらなを見つめた。
―――一時間後、ヤクザは全員〈セルバトス〉から出て行き、そらなが職員室に戻ってきた。
監視班のメンバーがそらなを迎えると、彼女は真剣な表情でこう言った。
「皆さん。……交渉成立です」
その言葉に、メンバーのそれぞれが目を見合わせて、同じく真剣な表情で頷いた。
そらなは監視班のメンバーの前に立つ。
「相手方は条件を飲みました。……来週の金曜、〈セルバトス〉の利権を賭けて、ヤクザたちと勝負をします……!」




