我慢
「馬鹿だなぁおまえー! あんなダブルダウンがうまくいくわけねーだろぉ?」
「うっせーなぁ! おめーだってちまちま賭けてんじゃねーよ。金玉ついてんのか?」
「おうよ。女泣かせの釣竿が昨日もビンビンだぁ」
ぎゃはは、と、三人の若い男たちの下卑た笑いが、ブラックジャックルームに響いた。三人は見るからに酔っ払っており、周囲にいた客は眉を顰めて遠巻きに見つめていた。
聞くに堪えない下品な会話に顔をしかめながら、すたすたとそらなは三人の男に近付いた。
「梶木様、よろしいですか?」
「ん? どうしたのお嬢ちゃん。お兄ちゃんたちと遊びたいの?」
酔っ払いのひとりがそう言うと、なにがおかしいのか、残りのふたりが大笑いする。
そらなは表情から笑みを消して、氷のように冷たく応対する。
「お楽しみのようですが、ほかのお客様もおられます。少しお静かにプレーなさってください」
「『お静かに』だって。かわいー!」
三人の若い男はまた笑う。垂れたそらなの両の拳の中で、爪が手のひらに食い込んだ。
「梶木様、岡田様、杉本様、どうかほかのお客様のためにも、お静かに願います」
努めて冷静に、そして丁寧に頭を下げて頼み込むそらなを見て、ようやく男たちは黙った。
「……あーあ。しらけたよ。どうしてくれんだよ、なぁ?」
「いーよもう。場所変えようぜ」
「なぁハラ減らねぇ? メシ食いたいんだけど」
「俺は減ってねーよ。もうちょっと遊ばせろ」
三人は舌打ちを残してブラックジャックルームを出て行った。
そらなは深く息を吐き出して、「……親の金で遊ぶ甘ったれめ……」と誰にも聞こえぬように呟くと、彼らが床に捨てていったタバコの吸殻を拾い集めはじめた。
そこへ、ひとりの女子が駆け寄ってきた。
「来てくれてありがとう、そらなちゃん。土屋さんが呼んでたよ? あとはわたしがやるから」
「ふー…………それじゃあ、お願いします」
ポケットティッシュに乗せた吸殻を託すと、そらなは教室を出ていった。




