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CERVATOS  作者: 春戸 稲郎
五月
31/66

陰謀


 職員室にマリベルが戻ってくると、瑠奈がひらひらと手を振った。

「麻雀ルームの理事長先生が二連続のトビでパンクした模様でーす」

「はやっ。早漏にもほどがあるわね。こっちに来てる?」

「未練がましく麻雀ルームをうろうろしてるよ。もしかしたらまた来るかも」

「フリオに退出させるように連絡して。そうすれば帰るでしょう。……こっちはどう?」

 マリベルは三ヶ月前の監視カメラの映像を検分しているパンチョと染谷の背後に回る。

「時間かかりそうだ。このときの南都先生、かなりうろちょろ動き回ってるから大変だよ」

「まだ場慣れしてなかったからね」

 マリベルとパンチョの会話を聞き、染谷はため息。

「一生慣れなくてもよかっただろうに……ところで、理事長先生の軍資金が尽きたそうだけど、ここの麻雀はそんなに高いの?」

 染谷の質問に、マリベルは、さぁ、と答える。

東風(とんぷう)戦一回でトビラスになったとして、レートの低い卓は十二万、高い卓は六十万の負けになる設定よ。高いかどうかは人次第ね」

「……僕には〈低いほう〉が低くないな。大きい負けだ」

「賭博を楽しむためには分相応のレートで勝負すべきなのよ。百万しか持っていない人間と一千万は余裕で負けられる人間とでは、対等な勝負にもならないわ」

「賭博は金力の差か……おっと」

 染谷がリモコンを操作して、映像を早送りから一時停止させた。

「この人じゃないかい、マリベル。南都先生に話しかけている」

「部屋は……南都先生の主戦場になるブラックジャックルームね。再生してみて」

 マリベルとパンチョが見つめる前で、染谷は再生ボタンを押した。動き出した無音の映像の中では南都がテーブルについてプレーを始めたが、話しかける男も彼女の隣に腰を下ろした。

「確定だ」と、パンチョ。

「南都先生はナンパを無視するためにブラックジャックに手を染めたのね」と、マリベル。

「皮肉なものだ。……ところで、この男は誰なんだい?」と、染谷が尋ねる。

 映像は南都の頭が陰になって、話しかけている男の顔が見えなかった。貸して、とマリベルがリモコンを取り、早回しで映像を進め、男がナンパを諦めて席を立ったところで一時停止。

「これは…………意外な人物が関わっていたわね」

「というと?」

「染谷先生、ちょっと静かにしてくれる?」

 黙れと言われて染谷は口をつぐむ。マリベルはぶつぶつと何事かを呟きながら思案を始める。

「ふむ……もしかして……これは……別の陰謀かしら?」

「陰謀?」

「その端緒かもしれないわ。……晴彦さんに事情を聞きに言ったアイナはまだ?」

 折よくそのとき、愛奈が職員室に戻ってきた。

「ただいま戻り……みんなどうしたの?」

 自分が注目を集めたことに困惑している愛奈に、マリベルがすたすたと近付いた。

「話は聞けた?」

「え、うん。それはちゃんと。……でも、なんだか変で、余計こんがらがっちゃった」

 その反応を予見できていたのか、「やっぱりね」とマリベルは頷く。

「詳しく話を聞かせてちょうだい。場合によっては……いいえ、裏付けが必要ね。今すぐ稲に調べさせるわ。パンチョはそれを片付けたら、ホセと一緒に聞き込みに回ってくれる?」

「えー? マジかよぉー」

「お願い。もしかするといろんな問題が、来週一気に片付くかもしれないのよ」

「へいへーい」

 気の抜けた返事をするパンチョが今まで見ていた映像を消そうとしたのを、染谷が止めた。

「僕にも教えてくれる? この人は誰なの?」

「あれ? 先生もこの人、見たことあるだろ?」

 でもしょうがないか、とパンチョは呟く。

「俺たち〈セルバトス〉のメンバーならすぐにわかるんだけどな。この人は無間斎さんだよ」

 話に聞くインチキ宗教家の名前が出てきて、彼の何がマリベルに〈陰謀〉と言わしめたのか、染谷にはまだ、皆目わからなかった。


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