表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CERVATOS  作者: 春戸 稲郎
五月
27/66

賭博の十戒


 マリベルが封筒の中から取り出したのは、便箋に直筆でしたためた〈賭博の十戒〉。

 それは〈賭博で勝つための掟書き〉ではない。〈賭博を娯楽にするための戒め〉だった。

 ―――その一、賭博は自分の金ですること。

「自分の自由にできるお金だけで楽しむの。自分や家族の生活費、誰かと約束して積み立てているお金、会社のお金、そして人から借りたお金を賭博に使ってはいけないわ」

 ―――その二、現金で勝負をすること。

「賭博でお金を失うのは、とても痛い。でも痛みは大切な危険信号でもある。これが麻痺するとあっという間に破産するわ。だから賭博は絶対に、痛みのわかる現金ですること」

 ―――その三、賭博に使う金額を事前に決めること。

「これ以上負けたらおしまい、という線引きをするの」

 ―――その四、賭博に使う時間を事前に決めること。

「丸一日でも構わない。ただし、『絶対にこの時間まで』という時刻を決めておくの」

 ―――その五、ゲームのルールを把握すること。

「できるだけでいいわ。控除率や戦法を把握しておけば、なおのこといい」

 ―――その六、賭博の負けを賭博で取り返そうとしないこと。

「賭博のどつぼに嵌るのは、失ったお金を取り返そうとして高い勝負をするときよ。高くなる勝負に慣れていって、いつか決定的に負ける。負けは負けとして受け容れること」

 ―――その七、賭博を生活の一部にしないこと。

「遊園地には毎日行かないでしょう? カジノも同じ。たまに遊ぶから楽しいの。遊園地に毎日通い詰めている人を想像して。日常生活が破綻していると思わない?」

 ―――その八、できるだけひとりで賭博をしないこと。

「自分が熱くなっているときに諌めてくれるような人が望ましいわ。遊園地も気の合う友達と一緒のほうが楽しいでしょう?」

 ―――その九、賭博以外の趣味を必ず持つこと。

「直接は関係ないけど、ほかの趣味があれば、そちらに回すお金について考えることもできる。稼いだお金をすべてつぎ込む価値は賭博にはないわ。ただの娯楽だもの」

 ―――その十、イカサマの誘いには乗らないこと。

「賭博における一番の罪。イカサマに走るということは、目的がゲームを楽しむことからお金を得ることに変わる。そうなった人は、お金のためならどんなことでもやりかねない」

 これらはすべてマリベルが、誰かに教わり、独自に学び、獲得した心得である。

「掟に十一個目があるとすれば、〈これらの掟を、賭博をする誰かに教えること〉だと思う。だからわたしは、南都先生を信じて、これを託すわ」

 そう言って、マリベルは南都に、戒めを詰めた封筒を渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ