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CERVATOS  作者: 春戸 稲郎
五月
19/66

ブラックジャックルーム


 隣の教室、ブラックジャックルームに入ると、マリベルはひとりの客に近付いた。

南都(なんと)先生、調子はいかがですか?」

「あ……あぁ、マリベルちゃん」

 二台置かれた七人がけのブラックジャックテーブルに、度の強い眼鏡をかけた、野暮ったい格好の三十前後の女が座っていた。

 眼鏡の下の、隈のできた目を擦りながら、南都は首を振る。

「今日はぜんぜんダメね。もう二十万円も負けちゃった」

「少し間を置かれてはいかがですか? 締め切り明けでお辛いのでは?」

「いいの。大丈夫。もう少しで勝ちの波に乗れそうなの」

「……そろそろ日付が変わります。家庭科室でフルーツやお菓子を召し上がられては? 仮眠でしたら保健室をご利用できますが?」

「ありがとう、マリベルちゃん。……考えておくから」

 勝負を続行するらしい南都に、マリベルは一礼してからその場を辞した。


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