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やっと転生!

「おーい。…もしもーし……聞こえるかー?」

そう言いつつ手を休めず動かすが…コイツ、全ッッ然!起きねぇ!


「ふぅ…アレだな…。朝に弱い息子を起こす母親ってこんな感じなんだな…すげぇ、疲れた」

いい仕事した感覚で服の袖で額の汗を拭う。


唖然と見ていたゴブリンがハッとした顔で近寄ってきた。

「いやいやいやいや!!何処の家庭に息子を殴りまくって起こす母親が居るんですか!というか…もう可哀想だからやめてあげて下さい!!切実に!!」


「………。うるさいぞゴブリン。コイツには起きてもらわなきゃ俺が困る。つーか仕事しろよ!!サボって寝てんじゃねーよ!!ってか起きろよ!!」


俺が言うのも何だが……

散々殴りまくった顔には青アザが何個も出来てる上に、血が凄い事になっていた。

コイツが人間だったら間違いなく死んでいただろう。

…と言うより…これでも起きないなんて流石に変だよな?

なんだコイツもっと強く殴った方がいいのか?

これでも結構力入れて殴ってたのに…。

この『カミサマ』タフだな。

っじゃねえ!マジで…真面目に!!

起きろよ!!いい加減にしろ!


「それにしても起きませんね。これだけ殴られて起きないとは…異常ですね。というか、まさかこちらの神が寝ているとは。……あとホントにソロソロやめてあげてください。」


そう言いながらため息をつくゴブリン…

少し遡る事数時間前…



カミサマの『とても親切な好意』により、俺は異世界の死者の客間から本来の客間に送ってもらえることになっていた。


「おい、準備出来てんならもう行こうぜ」

何やら道具を引っ張り出しているゴブリンを急かす。


「ちょっと待ってください。あと少しで終わります…」

手元の道具を調整し「よし出来た」と呟いたゴブリン。


「お待たせしました!それでは、行きましょうか!」

「おう、さっさと行くぞ。」


送るという話になってからここまで長かったわ…

感覚的に多分2時間は経っている……筈だ…

「あぁ、すいません。貴方は途中で寝てたので分からなかったかも知れないですが、地球での時間経過で言うと6時間弱経ってます」

「……あぁ…そう…。ハァ」


いくら俺の為とはいえ溜息付いても仕方ないと思うんだ…。

いつの間にか寝てたようだが、最初準備してる所を眺めていたが…

…真っ白で何も無い空間の筈なのに躓いて転び、道具を亜空間らしき所から取り出そうとすると亜空間の設定が悪かったらしく手を突っ込んだまま振り回されていり、飛ばされてしばらく戻ってこなかったり、(多分、ここら辺で寝たんだろな…)という事で散々だった。

見ているこっちが疲れてくるわ。

…と言うか…何故俺よりゴブリンの方が元気なのか…。

チラリと恨めしげにゴブリンを見る。


「…すいません。本来隣の神の間に行く事なんて無いものですから、機械の調子を整えるのに時間掛かっちゃって…」


そう言いながら道具のスイッチを付け起動する。

道具は懐中電灯にそっくりだった。

スイッチを付けるとライト部分が光り、真っ白な筈の空間の床にクッキリと少し大きめの白い円が現れた。

どうやら丸い円は場所に定着するらしく、ハンコと懐中電灯を混ぜた様なものみたいだ。

ゴブリンが言うには、この円に入ってライトを消せば望んだ所に飛ばされるらしい…。

懐中電灯恐るべし。

地球にも欲しいわ。

個人用に。

きっと某タヌキにも引けを取らないだろう。



「では、ライトを消しますね。」

そう言ってライトを消すと目前が真っ暗になった。

一瞬視界を奪われ、なんだ?と思う間もなく目的地に着いた。


「……図書館……か?」

着いた場所はとても広く、左右前後にびっしりと本棚に入った本が並んでいた。

本の背表紙には読めない文字が書かれている。

…何語だコレ。


というか…ゴブリンの部屋は一面真っ白な簡素な部屋だったのに対して、ここは凄い数の本が並んでいる。

高級な図書館って感じだ。


「おい、来る所間違えてないよな?…お前の部屋と全然違うぞ。」

振り返りつつゴブリンに問う。


「あぁ…空間は神の好みによって自在に変更可能なんです。僕の場合は死んだと告げられた方達が状況をなるべく早く理解出来る状況とする為に敢えてああしています」


「あぁ、道理で…つまんない部屋だったな。」

「……すいませんねぇツマンナクテ…」

膨れっ面したゴブリンが小さな声で反論する。

「…なにか言ったか?ん?」

俺は心が広いので優しい笑顔で聞き返す。

「…い、いいいいいいえぇいえいえいえ!何でも!?」

なんで怖がる。

チャーミングで優しい微笑みだろうが。

「は!?あれで!?どこが!?」

「…あ?」

こいつ普通に心読むよな。

「あ、はい。ごめんなさい。」


まぁ…確かに憶えていたとはいえ真っ白な空間に突然入れられたら信じざるを得ないよなぁ…

「ところで…俺の担任のカミサマいなくないか?」


辺りを見回すと図書館の中に書類の積まれた机があるものの、カミサマとやらの姿は見えない…

「可笑しいですねぇ……」

そう言って歩き出すが足場の積み重なった本に、足を取られて転んだ……コイツ本当に神かよ…(汗)


「どんくせーな…」

呆れた目で言いながら歩く


「ひ…酷い……あっ…そこ危ないですよ!」

慌てて注意するゴブリンだが時既に遅し。

足に何かが引っ掛かって転んだわ。


「うわっ……痛てぇな!何だよ!」

本は無かった筈だが……?

そう思い足元を見ると……足があった…。


「…ッ!?!?」

「大丈夫ですか!?」

走ってきたゴブリンもこの足を見て固まった。

「………俺の足が2本増えた…。」

思わず現実逃避を口にする。


「いやいやいやいや!!貴方は産まれてから死ぬまで、死んだ後も足は2本ですよ!」

空気を読まない駄ゴブリンがッ…

「えぇ?…ごめんなさい…?」

何で疑問形なんだ。

「……すいません…。」

まぁいいや、思考を正常に戻そう。

「え!?軽くないですか!?」


「………こういう時ってこの足の持ち主死んでたりするよな…こういうシーンサスペンスとかで見た気がするわ…」

喚くゴブリンを華麗にスルーして、思った事を口にすると…

「…まっさかぁ…ははっ」

乾いた笑い声が響く……


本の山に隠れた上体を確認すると…

頭から血を流していた…

「おい!大丈夫かよ!しっかりしろ!!」


隣から『何か僕の時と扱いが違う!?』とか言って泣き喚いてるが…今は無視だな。

頭から血を流した中性的な顔立ちの神を揺するが

…反応はない…。

俺…生き返れなくなったりしねぇよな?…

そう思った時だ…寝息が聞こえてきたのは…


「……寝てんじゃねぇよ!!」

思わず『叩いて』しまった…。

「ちょ!?何してるんですか!?」

「起きねぇ…嘘だろ!?『叩いて』も起きねぇとか!」

「いやいや……思いっきり殴ってましたよね!?」

んな細かい事いちいち指摘すんなよなぁ…


「チッ」

「え!?舌打ち!?」

ヒィッとか言いながら下がるゴブリン…。

「もういいからなんとかしろよ!同じ神だろ!」

「はい!ごめんなさい!……でも…神って普段眠らないんですよ?……もしかしたら起きない…かも…?」


…今なんつった?起きない?じゃあ俺はどうなる?

「仮に起きなかったとして…俺はどうなる」

…こいつのせいじゃないのに…八つ当たりっぽくなっちまった…。


「…生き返れないですね。元の地球には」

含みのある言い方だな……元の?

「はい。僕の担当世界で良かったらそちらで転生しませんか?」


……異世界か…。

クロモンのゲームが出来なくなるのは…断腸の思いだが。

生まれ変われないよりはマシか。

取り敢えず次の人生が歩めるのなら何処だっていいわな…。

まぁ…元はと言えばカミサマのせいだしな。

責任とってもらおうか。


「あぁ…お前の担当世界に転生してやんよ」

「…なんで上からなんですか!…まぁ…いいですけどぉ…」

…何か拗ねてやがる。

「拗ねて無いですぅ…。じゃあ転生させますよ?」

……ん?今!?は!?ちょっ展開はやっ…

「では!いち、にの、さん!」

「このッ…駄ゴブリンがあああぁぁぁぁぁ!!!!!」


床に大きな穴が開き落ちながら叫ぶ俺。

何故か嬉しそうなゴブリンと、俺の叫び声を最後に俺の体は深い場所へと落ちていった…

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