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ゴブリン

「……し」

……な…に?


「……もし!」

うるさいなぁ……眠いのに…


「もしも〜し!!」


「ッ!?うるっ…せぇ!!」

大きな声がいきなり耳元で聞こえるもんだから眠い瞼を閉じたまま、虫を払い除けるように声の聞こえた方へ腕を振る。

空を切る音と共に右手拳に気持ち悪い感触がする。

右手拳の感触が誰かの『顔』だと理解する前に殴られた者特有の短い声が聞こえる。


「へぶぅ!?」


あれ………誰か殴った?

どうしよう…見るの怖い。

えー俺喧嘩とかした事ねぇのに…。

「き…君……ゴフッ……いきなり…なにす…」

あぁぁぁ…喧嘩になる前に謝らないとなぁ…。

あ、…でも……怖い人だったら嫌だし…目閉じたまま殺っちまうか。

喧嘩も殺人もやった事は無いけど…目を閉じてればイケる気がする。


急いで立ち上がる為両足を空中に向かって勢い良く投げ出す。

足裏に何か当たった感触がする。

…うむ……なかなかいい音がした。

(一応目を閉じてるから確信犯ではありません。)


「ごふぅッ!」

…ドサッ

……どうやら結構飛んでしまったようだ…。

…死んだか…?

飛んで行った人を蹴った勢いで後に転がりそのまま立ち上がる。

「……どうもすいません。丁度いい位置に人がいるだなんて思わなくて…大丈夫です?」


ゆっくり目を開くと……赤いペンキを被った…もとい、血を垂れ流している異様に顔のデコボコした背の高いゴブリンが寝ていた。

「………。」

俺がやったのは分かっているが…現実逃避くらいさせてくれ。

顔を殴ってしまった時の初撃は…わざとでは無いので…。


…まぁまずは、しらばっくれる方法でいくか。

取り敢えずいっぱい謝っとこう!

クロモンにも登場するゴブリンにソックリだから…あだ名はそのままゴブリンでいいか。


にしてもこのゴブリン…気絶してね?

うわぁ…見た目的に怖くない人だったから良かったけど…

さっきの事無かった事にする為にも…殺っちまえば良くね?

やべぇ名案!…人は俺とコイツだけ…。

首の骨折れば死ぬっしょ…。

「!?…チョッ…ちょっと待ってください!!」


パシッ

首の中心に向かって足を振り下ろそうとした所を掴まれた。

不覚!!

「チッ……あぁ…すいません…どうも見えなくて踏んじゃう所でした。…怪我大丈夫ですか?記憶あります?一体誰にやられたんですか?俺が捕まえてきましょうか!」


しらばっくれる為にちょっと苦しい言い訳を質問に変えて尋ねる。

「…いやいや……僕をこんな風にしたのは貴方ですからね?っていうか貴方と私しか居ないですからね!!!??」

そう言いながら俺の足を離すゴブリン。




…チッ記憶残ってた。

って……いうか……それよりも…

「……喋った…」

クロモンの中のゴブリンにソックリな外見で喋られると

…ハッキリ言って気持ち悪い。

ので、1m程後ずさる。

ゴブリンってクロモンのゲームにも出てきたが知能が低く『話す』という事すら出来ない種族だったなぁとぼんやり思い出す……。

と言うかゴブゴブとかギャッギャッとか鳴いてた。

最早ゴブリン=野生動物。

なので流暢りゅうちょうに喋らないで欲しい。


「え?僕がやったんですか?…いやいや、そんな事しないですよ?俺喧嘩は苦手だしやった事ないので…」

知らないフリ、知らないフリ。


「誰かに呼ばれて慌てて起きようとしたら手がなにかに当たったみたいなんですけどね?此処には遮蔽物しゃへいぶつが無いはずなのに、いやぁ…不思議な事もあるもんだ!あははは!!」


「それです!」

「うわっ」

突如叫ぶゴブリン。

マジでビビった。



「僕はゴブリンではありませんし!第1貴方何というアグレッシブな起き方するんですか!!痛いじゃないですかぁ!そもそも!無かった事にしないでくださいよ!!性格悪いですよ!貴方!!」



………なんか言ってる。

というか…心の声ダダ漏れだったりする??

あー……めんどくさ…。

もういいや…愛想良くすんのツカレタ。

「お前は何。つーかここは何処?…俺何でこんな所で寝てたんだ?……もしかして迷子か?…だとすると……お前も迷子か。」


「僕はこの世界の神です!迷子なのは貴方だけですよ!!」

ビシッと指を俺に向ける…ゴブリン。


…は?俺だけ?……迷子?


「そうです!覚えないんですか?貴方…亡くなってますよ?」


「……は?」

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