レミリアは手紙を書きたい
ただちょっと洒落た小文が書きたかっただけです。
真っ昼間から延々と文字を書き続けている。
地霊殿への協力協定の呼び掛けの手紙なのだが、私は文章力があまり無いと言えるだろう、疑心暗鬼になって、果たしてこれで伝わるのだろうか?と考え、実に4時間ほど纏まらずに萬年筆を持つ手も休ませ自らも机にうつ伏せになっている。
部屋の奥に置いてあるジュークボックスからは絶えずちょっと前のジャズが流れている。
喉が渇いてきた。
「咲夜、いる?」
すると振り向いた時にはもう既に彼女は居た。
「紅茶を頼めるかしら?」
「茶葉はどれになさいますか?」
私はただ喉が渇いていただけなので、特にそう言う何かに縛られたくは無かった。
「お任せするわ」
「畏まりました」
すると彼女は瞬きしない内にカップに紅茶を注いでいた。
その血のように真っ赤な紅茶を一口飲んだ。そんなには味わずに喉に伝わせた。
ふと、振り向いてみると、もう彼女は居なかった。
文章が纏まらないまま1時間が経った。
もう、正直飽きていた。萬年筆の先のインクは乾ききっていて、何と言うか、萬年筆までやる気が無い。
気分転換にジュークボックスからコンポに変えて、90年代のそこまで派手では無いジャズを流した。
既に想像力なんて無かった。
書く言葉も思い出せない。
そもそも言葉って何だっけ?
文法も解らない。
言葉が完全にゲシュタルト崩壊を起こし、もはや字も読めない状態だ。
コンコン
「お姉様、いる?」
「居るわ」
我に帰る。
言葉が話せた。
脳で文章を想像し、声で形にできた。
「何の用?」
「鉛筆、貸して」
「良いわ。はい」
¼も書いていないその紙は、新しく黒い粒子が混ざり合ったインクのついた萬年筆の先で文字で埋め尽くされていった。
最後にサインをして、封蝋を垂らしスカーレット家の紋章を押す。
すっかり冷めた紅茶を飲み干し、またうつ伏せになる。
書き終わった数時間、私はコンポをジャズからチルアウトに替えて、ベットに横になった。
外ではもう、朝日が昇ろうとしていた。