25話 便利な魔法
「は、はじめさん……? い、いったい何をしたんですか……?」
血を抜かれ横たわるレッドボアを見ながらミリアが恐る恐るはじめに尋ねる。
「(血生臭い‥早くシャワー浴びたいよ。)いえ、何をと言われても‥普通にエクストラクションを唱えただけです……。」
はじめはまだ自分の魔法の異常性をしっかりと把握していないのだ。
この世界にいる者ならリカバリーもそうだがエクストラクションも普通の回復魔法と抽出魔法で、ゆっくりと傷を治すものと鉱物から鍛治に使える成分を抽出するのが一般的である。
しかしはじめのリカバリーは他者に使えないが回復速度があまりに早く、ほとんどの傷を一瞬で治してしまう。
そしてエクストラクションは、はじめが想像してる成分さえあれば抽出できてしまうという規格外の魔法だ。
「わ、わたしが知ってるエクストラクションは鉱物から抽出する魔法だと記憶しているんですが……。」
「クロムさんは知っているのですが自分のエクストラクションは鉱物だけでなく、およそ何でも抽出できるみたいなんですよ。ただ、自分の知識とその成分がある事が前提みたいですが……。
あ、クロムさんが基本この話しは他言無用みたいな事を言っていたのでミリアさんも黙っていてくれると嬉しいのですが……。」
「言いませんよ! そもそも他の人に言ったとしても信じてもらえないくらい別物の魔法ですし……。
と、とりあえずレッドボアなんて中々食べれない食材も手に入ったので今日はご馳走ですね!!」
「(え? イノシシ食べるの? 美味いのこれ? イノシシなんて食べた事ないんだけど?)中々獲れないんですか?」
「そうですよ! レッドボアは気性が荒く山奥に生息するモンスターなので村の近くにはそんなに降りてこないですよ!
しかも、はじめさんの魔法のお陰で血抜きもしないでいいなんて……本当便利な魔法ですね!」
「(便利かもだけど、毎回こんな血だらけになるなら一生使わないわ。)とりあえず川でもいいので身体を綺麗にしてきてもいいですかね?」
「あ、ごめんなさい! まずははじめさんの汚れを落とさないとですよね!」
こうしてはじめとミリアは近くの川で汚れを落とし、採取したスネア草と副産物のレッドボアを引きずって村に戻るのだった。




