18話 愚者
朝御飯を食べ終え、はじめとクロムは庭先に来ていた。
そこでクロムが用意した様々な鉱石、木材、果物、武器になりそうなものを出され、はじめは次々とエクストラクションで抽出をして行く。
「お前さん‥本当何でも抽出できてしまうな……ハハ……。
しかも、普通の人が使うエクストラクションより魔力消費が少ないし、発動速度も十分早い、何より本来手で触れておこなう魔法なのにお前さんの場合多少なら離れてても発動できるなんて……もう開いた口が塞がらないわ。」
(まあ、天才だからな! 才能の塊たるこの俺だぞ?)
天才かどうかも才能の塊も置いといて。
確かにはじめの知識はこの世界においては、凄く進んでる部類になる。
そして、はじめの魔法エクストラクションがその知識を使うには相性の良い魔法なのだ。
はじめが想像した成分さえあれば抽出されるのだから。
「お前さんのエクストラクションはもうよく分からないから、そういうものだと考えるわ……。
いつか王国に行ったらギルドか魔法学院にでも行って調べて見るといい。」
もうクロムも、なかば投げやりである。
「そ、そうなんですね。 わかりました王国はいつか行ってみたいので、行ったら調べてみますね。」
「とりあえず、お前さんのリカバリーを調べてみるか。
簡単なのは傷を治す事だからな、まず指にでも傷をつけてみろ。」
「え? 自分で指に傷つけるんですか?」
「何をそんなビクビクしてるんだ。 わかったわかった、俺が自分の腕に軽い傷をつけるからお前さんがリカバリーで治してみろ。」
そう言いながらクロムは自分の腕にナイフで軽く傷をつける。
「ほれ、早くリカバリーを唱えて治してみろ。」
「リカバリー!」
……はじめのリカバリーは発動しなかった。
「リカバリー! リカバリー! え?」
「治らないな……お前さん、もしかして自分しか治せないのかもしれん……。」
「じ、自分しか治せないんですか!?(全然いいんだけど、自分治せるなら。)」
「……いつか誰かに言われるから先に伝えておくが、どんな怪我や病気さえ治してしまうのが賢者で、その対局で自分しか治せない回復職を愚者と言われているんだ。」