13話 才能
「よし! これで完成っと。」
野菜炒めとデザートにプリンを作り、はじめはご満悦な表情だ。
「クロムさーん! できましたよ!」
「おーできたか、腹が減って待ちくたびれたぞ!」
「ちょっとデザートを作ってまして、少し時間がかかりました。」
「デザート!? うちにそんなもん作る食材なんてなかったはずだが?」
「台所に果物があったのでそれでつくったんですよ。」
「りんごか。 デザートって言われたから貴族の奴らが食べてるものかと思ったぞ。」
(あれやっぱり、りんごなんだ……俺の知ってるりんごの倍はあるぞ。 その貴族様が食べてるデザートは知らんが俺のもそこそこ美味いよ。)
ちなみに王国の貴族が食べるデザートは高級食材の砂糖を熱して固めたカラメルか、パンに砂糖を塗した菓子パンくらいで、デザート文化の発展はしていないくらいに砂糖は高級食材なのだ。
はじめが作ったプリンはこの世界では初めて生み出されたデザートである。
「おう、美味かったよ! ごちそうさん。 あとは、はじめが切ったりんごでも食べるか。」
「切ったりんご? いえ、作ったのはプリンですよ?」
「ぷりん? なんだそれは?」
「これですよ。」
そう言ってはじめは作ったプリンをクロムの前に差し出すが、クロムは苦笑いした顔をする。
「なんだこの柔らかそうな物体は……。」
「プリンですよ? この世界にはないんですかね? バニラオイルもゼラチンもなかったし、熱とりもあまいので出来栄えはそんな良くないですが。
まあ、とりあえず食べてみて下さいよ。」
そう言われクロムは恐る恐るプリンを口に運ぶ。
「!!!」
「なんだこれは! びっくりするくらい甘くて美味いぞ!! うちにこんな食材ないはずだが……。」
「いえ、台所にあった食材ですよ。 卵と牛乳とりんごから魔法で抽出した砂糖で作りました。」
「は? りんごから魔法で抽出? お前さん何言ってるんだ!?」
「いやいや、普通に教えてもらったエクストラクションでりんごから砂糖を抽出しました。」
はじめはそう言い、何食わぬ顔でプリンを食べる。
(りんごから取れた砂糖だからか、りんごの味が結構するな。 初めてりんご味のプリンなんて作ったけど結構美味いな。)
「……お前さんエクストラクションは鉱物にしか作用しない魔法だぞ? 馬鹿も休み休み言え。」
「え? いえ、普通に使えましたよ?」
はじめはりんごをクロムの前に取り出し、エクストラクションと唱える。
そこにはりんごから抽出された砂糖が出現した。
クロムはあんぐりとした顔で呆然とする。
「お前さん‥これは‥これは凄いことだぞ!」
(だろ?才能の塊だからな俺は。 どうせなら攻撃できる魔法で才能が欲しかったけど……。)