12話 プリン
「とりあえず、晩御飯にするか。」
ミリアが帰宅し、夕方に差し掛かったところでクロムさんが提案する。
(なんでおっさんと2人で晩飯なんだよ。 せめて女の子いないと気分も上がらないし食も進まないわ。)
「わかりました。 もうお腹空いて倒れる勢いでしたよ。 何か手伝う事はありますか?」
先ほどの言いようからこれだ。 本音と建前がこうも違うとは……。
「お前さん料理はできるのか? 俺は男一人暮らしだから腹が満たせばいいくらいの飯しか作れないから期待するなよ?」
(大丈夫だよ、おっさんに期待する程飢えてはないよ。)
「自分も一人暮らししてましたのである程度の料理はできますよ! あとは趣味でお菓子作りくらいですかね。」
「お菓子? なんだそんなもんも作れるのか?
お菓子なんて王国でも上流階級の奴らが食べる高級なものだぞ? うちに砂糖なんて高級食材があると思うなよ。
じゃあ、とりあえず家賃がわりに晩飯を作ってもらおうか。」
(そんなもんってなんだよ、そんもんって。 この世界は甘味が高級なのか……。 )
「わかりました、 台所お借りします。」
「おう、勝手に使っていいぞ、そんな大層な食材はないけどな。」
はじめは台所で物色して幾つかの食材に目をつける。
(よくわらない野球ボールサイズの卵、無駄にカラフルな野菜、根菜っぽい何か、牛かわからないミルク、りんごっぽいフルーツ……異世界だわ。)
「そういえば、エクストラクションって抽出だよな? りんごっぽいやつから糖分とれるんじゃね?
物は試しでやってみるか。」
「糖分でろ糖分でろ……エクストラクション!」
淡い光とともにそこには砂糖と思しきものが現れた……。
(まさかこんな簡単に高級食材が作れてしまうとは……これが才能とご都合主義か、異世界だな。)
「よし! とりあえず野菜炒めとプリンでも作るか! 野菜炒めはすぐできるとして、 先ずはこの砂糖とりんごっぽいのを細かくして煮詰めてカラメルソース替りを作り、コップにミルクと砂糖を熱いくらいで温め、といた卵を少しづつ入れてと。 バニラオイルないから砂糖を多めに入れとくか。 ラップが欲しいがないからお湯が入らないようにフライパンで温めてと。 よし!少し固まってきたな! 冷蔵庫欲しいがないのか……とりあえず冷水であら熱をとるか。 これで放置っと。」
この適応力は、はじめの数少ない美徳といえよう。