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かくにん

目が醒めると見慣れた自分の部屋の天井が目に映る。そのまま横を向くと、自分のベットがある。


あれ?なんで俺は床に寝かされてんの?


体を起こし、ベッドを見ると少女がよだれを垂らして幸せそうに眠っている。落ち着いて見ると幼いながらも将来が楽しみな顔立ちをしている。スラリと通る鼻筋に薄紅色の唇。特徴的な真っ白な髪の毛が腰まで伸びている。長い睫毛に、赤い瞳、、、


「うわっ、びび、びびるわ!いきなり目、開けんなよ!!」


胸に手を当て突然のでき事にドクドクと暴れる心臓を抑える。


「ふぁー、よお寝たわい。」




欠伸をしながら体を起こすが、まだ意識が覚醒してい無いのだろう。体がフラフラしている。


「寝起きの所悪いけど色々聞きたいことあるんだけど質問していいか?」


聞きたいことや、心配事が沢山あるがなぜか心は平穏を保てている。


「そうじゃな、もう家族じゃからな、遠慮はいらん。なんでも聞け。」


「いま質問増えたぞ、家族ってどーゆうこと?俺と君が?」


大げさに自分と少女を交互に指差し質問する。


「まずは、君、という呼び方をやめてもらおう。我が名はアイリス・シャルロット。アイリスと呼んでいいぞ。」


ふふんっ、と満足げに腕を組む彼女は見た目より子供っぽく見える。


「そうか、アイリス。俺は神崎真白だ。」


「じゃあ、シロでいいな。」


全然よくない。すごい犬の名前っぽいじゃないか。しかし、訂正した所で話が進まなそうな気がするのでそのままにしておく。


「それじゃ、アイリス。俺とアイリスが家族っていうのはどーゆうこと?」


「ついさっきシロは儂らと同じ吸血鬼になった。儂ら吸血鬼の真祖は魂を切り分け、他者に与えることができる。」


「そうなるといま俺の中にはお前が半分いるってことになるのか?吸血鬼って牙で噛めば増えるんじゃないの?」


魂うんぬんの話になると信心深くない俺は理解し難くなる。それに吸血鬼ってのは噛まれたらその人も吸血鬼になったりするもんだと思っていた。それよりも、こいつラキアと同じ真祖とか言ったな。


真白の中で警戒心が芽生える。


「いや、四人存在する真祖以外は普通に人間と同じ方法で増えるぞ。」


アイリスは、噛んだだけでふえるわけねーだろ、みたいな顔でこちらを見ながら答える。


「そ、そうなのか。イメージと違うなぁ。」


「話を戻してよいかの?魂を切り分けた相手を儂は眷属として扱う。まぁ、眷属といってもシロの頭じゃ理解できんじゃろうから家族と言い換えたわけじゃ。」


「なるほどな、まぁ、理解はした。お前が俺の頭の出来をバカにしていることも理解した。」


確かに頭がいい方ではない自信はあるが、自分よりおそらく年下であるだろう少女にバカにされるのは少しムッとしてしまう。


いや、あれか、お決まりのパターンで実は、すごく年上とかそーゆうやつか?儂とか言ってるし。


「アイリス、、、さんは何歳なんですか?」


呼び捨てにしようかと思ったがもし年上だったら失礼だと思い敬称をつけた。


「生まれてから16年になるな。」


「年下なんかいッ!」


思わず大声で突っ込んでしまった。


「何を一人でバタバタしているんじゃ?大丈夫か?頭」


「大丈夫だよ、これが正常なんだ、ほっとけ。」


「まぁ、よいか。これからよろしく頼むぞ。」


ニヤリと笑うアイリスはなにか悪巧みをしている子供のそれだった。


「あぁ、よろしく頼む。で、次の質問だがアバウトな質問で申し訳ないが、アレは何だったんだ?」


一番聞きたかったことだ。目の前の少女、アイリスのこと。ラキアという男のこと。そして茜のこと。


「まず、儂とあの気持ち悪い男を呼び出したのはシロと、奏太とか言うやつじゃな」


気持ち悪い男ってのはラキアのことだな。おそらく図書館で奏太が俺に唱える言葉を教える時に、その言葉を呟いたことでラキアが、俺がその後に唱えたことでアイリスが呼び出されたのだろう。


ということは、あの模様を見ながら唱えればいいだけなのか?俺はあの文字読めなかったしよく分からんな。


「儂等はなんて言うのかの、、、異世界の住人といえば良いか。まぁ、これからはシロの世界でもある。」


異世界の住人という言葉にも驚いたが、その後の言葉に話の腰を折らざるを得なくなる。


「俺の世界?」


「シロはもう此処には居られない。シロがここに存在することをこの世界は許さないからの。」


嘘をついている様子はない。こんな突拍子もないことを信じてしまうのはそれほど強烈な体験をしたからだろうか。


「お前が殺されかけていたあの女は何かしらの理由が作られ真実は誰にも知られることはないじゃろう。世界の強制力は凄まじいからな。」


茜のことを思い出そうとすると、首を飛ばした時の感触が蘇る。それ以外をおもいだせない。胸に大きな穴が開いている感覚。それでも心は冷めていて、涙すら流れてこない。


「茜の体はどうなったんだ?」


「下手に埋葬するよりそのままにしておくべきじゃ。」


アイリスが俯き、悲しそうな顔をする。

少し意外だった。


「なんで俺こんなに落ち着いてるんだ?おかしくなったのか?」


「おかしくなってはいない。体だけでなく心も儂らに近づいてきている証拠じゃな!」


一転変わって、良かったな!と言わんばかりにアイリスは、楽しそうに教えてくれる。


確かに都合がいいかもしれない。前までの俺じゃあ、耐えられなかったかもしれない。


「そうなのか。それで、ラキアは今どこにいるか分かるのか?」


もっとも気になっていた質問を口にする。


「もうこの世界にはいない。あいつはもう儂等の世界に戻った。」


「そうなのか?」


「あれだけ血の匂いがプンプンする奴じゃぞ。移動すればすぐわかる。」


「そうなのか、、、。」


ラキアの顔を思い出すとフツフツと怒りが湧いてくる。頭に血がのぼる。


あいつに対する怒りは人間の心を失いかけている今でも揺いでいないようだ。


「まぁ、儂に任せておけば良い。儂の目的にとってもあいつは邪魔じゃからの。」


まぁ、話がSF過ぎて信じ難いが、嘘じゃあないんだろう。


ググゥ〜


俺の腹が鳴る。


「飯にしようか、アイリスも何か食べるだろ?」


立ち上がり、部屋のドアノブに手をかけ話しかけるが、


「儂はまだ寝る。」


と言い残して布団の中に戻っていった。



そう言えばいま何時だ?体感的にはすごく長く寝ていた気がするが、アイリスは俺が吸血鬼になったのはついさっきだと言った。


壁にかかっている時計を見ると針は0時を回った所だ。図書館を出たのが21時半頃、ラキアと出会ったのは22時前だろう。


2時間くらいしか経っていないのか、なんか時間の感覚おかしくなってる気がするな。


ーーーーーーーー








ーーーーーーーー

「明日の夜には出発するからの。準備しておけ。」


次の日の朝、食パンを口にくわえながら、アイリスは唐突につぶやく。


「いきなり過ぎだろ。出発ってお前らの世界にだろ?」


「それ以外何がある。出来れば今すぐ行きたい所じゃが、シロに気を、ムグッ、使って明日にしてやっておるんじゃ。それに、まぁ、今日一日過ごせば、ムググッ、わかることじゃ。それにしてもこのパン美味しいのう。」


「含みのある言い方だな。あ、バカ!俺の分まで食うなよ!」


アイリスはもふもふとハムスターの頬袋のように口の中にパンを詰め込みながら話をしていた。


ゴクリッ、と飲み込んでこちらを指差して一言、


「ともかく、明日の夜出発!これは変わらんぞ!」


ふんすっ、と鼻息を鳴らして腕を組むアイリス。

ーーーーーーーー





ーーーーーーーー

結果として俺の周囲の人間は俺の事が記憶から消えていた。いや、正確には話しかけて少し経つと俺だと気付いてくれる。そんな状況になっていた。アイリスによると明日にはもう話しかけても思い出せない人の方が多くなるらしい。

茜は行方不明という扱いになっていた。


「奏太も俺の事を気付いてくれなかったな。」


奏太は側から見てはっきりわかるほど精神的に病んでいた。茜の事が気がかりなのだろう。


「なぁ、アイリス。奏太に話しちゃダメか?茜の事」


「別に構わんが、信じてはもらえんと思うぞ?」


「あのままじゃ見てられないんだ。奏太は俺の友達なんだ。」


「まぁ、後悔の無いよう話す事じゃ。もう帰ってはこれんからの。」


やっぱり帰れないのか。まぁ、いいか、みんな俺の事は憶えていないから悲しむ人はいない。俺は少し寂しいが。それに、もともと俺には両親も居ないから都合が良かった。


「そうするよ、ありがとう。」


信じてもらえるだろうか。いや、たぶん俺は信じてもらえるかじゃなくて奏太に話して少しでも自分の気持ちに整理をつけようとしているだけなのだろう。


あぁ、俺最悪だな、、、


そんな事を考えながら眠りについた。

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