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お別れ

ビチャビチャとおびただしい量の血液が茜の口から流れ出てアスファルトを赤く染めていく。


ぐちゅっ


謎の男は手を引き抜いた。

支えを失った茜は受身も取れず硬い地面に倒れ、体が小刻みに痙攣している。


「ははぁ〜、あったかぁ〜い。やっぱり男より女の方が柔らかいし美味しいなぁ〜」


真っ赤に染まった手をペロペロ舐めながら独り言のようにつぶやく。



「初めまして、僕の名前は〜、ラキア。死人の王ラキアだよ。」


とんがり帽のようなフードがついた真っ黒なロングコートをきた男はポケットに手を入れ気だるそうに自己紹介を始める。


先ほどまでビクビクと痙攣していた茜の体はもう動いていない。


ーーー怖い

ーーーーー怖い怖い怖い怖い怖い怖い


「君の名前はなんt「うわぁあー、助けてー」


近づいてくるラキアにより恐怖心が増幅され

、その場に立っていることができなくなる。


後ろを向き全速力で駆ける。


「え〜、挨拶しただけなんだけど〜」


ラキアは追ってきていない。


ハァ、ハァ、ハァ

すぐ近くにあった廃ビルに駆け込み息を整える。


ダメだ、なんだアレ。茜はどうなった?これは夢か?夢だよな。


どれくらい時間が経っただろう。


コツン コツン


「ひぃっ」


後ろからナニかの足音が聞こえる。


部屋にあるロッカーの中に隠れ足跡のする方向にあるドアを見ていると、ガチャッとドアを開け、女の子が入ってくる。見慣れた顔だ。


その顔を見た瞬間、真白は思考を放棄した。


「茜!良かった、やっぱり夢だったんだ!」


駆け寄り茜の体に両手を回して抱きしめる。

茜は動かない。細い肩は呼吸による上下運動すらなく、触れる肌は石像のように冷たい。


「なぁ、返事してくれよ、、、。どうせ夢なんだろ。もうやめてくれよ。頼むよ。」


咽び泣く隼人に返答はない。


「あ゛ッ」


脇腹が 熱い。初めはそう思った。真っ赤に熱した鉄の棒を押し付けられたのかと錯覚した。

その後すぐに、我慢し難い激しい痛みが襲う。


痛いイタイ痛い痛いイタイいたい痛いイタイ


引き抜かれたナイフにより、傷口が広がり、体内から急速に血液が失われていく。

ヨロヨロと後ろに下がり壁にもたれかかることでやっと立っていられる。


「あーあ、こりゃ死ぬんじゃないか?お主」


不意にその場にそぐわない楽しそうな声で話しかけられる。


茜が入ってきたドアの前に女の子が立っていた。自分と同年代、と言うには少し幼い少女だ。一目見ただけで人間ではないことがわかった。目が赤い。それに笑っている彼女の白い歯がおかしいのだ。犬歯というには余りに鋭利すぎる。


「儂が助けてやろうか?お主の願いを一つだけ聞いてやる。不本意ながらこっちに儂を呼び出したのはおぬしだからのう。アハハハッ」


少女はカラカラと笑って言う。


茜は俺を刺した場所から動かない。


「さぁ、何を望む?まぁ、一つしかないか、この女を殺して命を助けろってとこかの?」


ふふんっ、とお前の望みは分かるという顔で話しかけてくる少女はなぜか嬉しそうだ。


「あぁ、助け、、て、くれ」


「俺は、俺の幸せ、な日々を、、、壊し、、たラキアを許せない。」


「俺に、力を貸してくれ!」


少女は、ニタァっと蕩けた笑みを浮かべると、嬉しそうにスキップでこちらに向かってくる。


少女が横を通り抜ける瞬間ですら茜は動かない。


目の前に少女の顔が近づいてくる。綺麗な顔だ。薄い桃色の唇が開き、不似合いな長い歯が見える。


「いくぞ〜、ほいブスリ」


間の抜けた掛け声とともに少女の歯が首筋に突き立つ。直ぐに歯を抜き、少女は離れた。


「全然なにも変わらないんだけど?なにが変わっーー」


言葉の途中で違和感に気づく。痛みがない。服をめくると刺された傷はふさがっていた。


「すごいじゃろう?儂らの体は。」


尋ねる少女は嬉しそうだ。


「吸血鬼、、、ってことだよな。」


「そろそろ時間切れじゃ、あの女動き始めるぞ。」


「どうすればいい?俺の時みたいにあの傷直してくれよ!押さえつけとけばいいのか?」


「むりじゃな、完全に魂の離れた肉体は修復はできぬ。残念じゃの。」


大した興味もなさそうにそう言う少女にフツフツと怒りが湧いてきた。


「なんなんだよッ!茜が何したんだよ!何も悪いことなんてして無いじゃないか、、。助けてやってくれよ!」


俺は膝をつき縋りついて少女に頼み込む。

呆れたような顔をされ払いのけられた。


「そうじゃな、悪いのはお前じゃ。お前ともう一人が儂らを呼んだんじゃろ。責任を押し付けるのは辞めるんじゃな。」


その場に膝をつく俺に現実が突きつけられる。


「あの女はもう死人じゃ。魂が戻ることはない。眠らせてやるのはお前の責任じゃろう。」


目の前に刀身から柄まで赤い剣が差し出される。


「これを使えば動かなくなる。頭を落とせ。」


俺は無言で受け取り、茜の前に立つ。

さっきまで一緒に歩いてたんだ。高校に入学して、一目惚れして、告白して付き合うことになった時は死ぬほど嬉しかった。たまに喧嘩とかしたけどそれでも一緒にいてくれた。茜と一緒だとなんでも楽しかった。茜の顔を見てると思い出が次々と湧き出てくる。


「ごめんなぁ、茜。水族館、、、行きたかったな、、。」


確かな重みを感じる剣を横薙ぎに振る。

大した抵抗もなく剣は振り切られ、血が吹き出した。

ゴロゴロと頭部は転がり壁にぶつかって止まった。


こちらを向いている彼女の顔はいつもと変わらない。


ーーオエエッ、 ゴホッ ゲェ


胃の中のものをすべて吐き出しその場に横になる。


「あーあ、汚いのう。まあ、今は眠るといい、起きたら楽になってるはずじゃ。儂はこの後の、、、、、、、」


少女が俺を見下ろして何かを話しているが、とてつも無い睡魔が襲ってきて、聞き取ることができ無い。


あぁ、眠い、あれ?俺何してたんだっけ?なんかわからんけどこの赤い毛布あったけえな。これ何でできてんだ?


すごく『美味しそうな』匂いがする。



そんなことを思いながら神崎隼人は深い眠りについた。



「眠ったか。いや、それにしてもまさかこんな所でハーフを手に入れられると儂にも運がめぐってきたかのう。」


少女はカラカラと笑っていた。


少女は呟きカラカラと笑った。

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