乳房のように冷たく
⚫復習
迷子になったエンを探しつつ、脳裏で回想するラディ
※ラディは正式な名前ではありません(1話参照)
ブックマークありがとうございました。励みになります。
そもそも友人になる以前に、
拾ってくれてなかったらあの時に死んでいた命だがね。
私の正式な名は......止めておこう。
やや廃れ始めている風習ではあるが、貴族が無闇にそれを明かすのははしたないことなのだ。
勿論、私もそのように幼小から教育を受けている。
身分は、古くから続く由緒ある家で、貴族の名門の中でも上位に属する家柄であることは自負している。
私の家は...外交を担う非常に責任ある立場にあり、第一印象として、能力の他にも見目が重視される。
なにも見目が麗しければいいとかそんなアホな事では決してなく、むしろ美醜含め多種多様に揃っている方が都合が良い。
事実、会談や取引の内容によっては、“交渉人”のポーズが懸かってくるので、有利に進める為にも、人選のつどその外観とそれによってもたらされる効果が考慮される。
ただし、当主の伴侶においては、国家の窓として“見せびらかすこと”が仕事の一部に入るため、見くびられないためにも、やはり容姿の美しい者が選ばれる。
そうして代々、容姿の整った者をめとっていったため、結果その直系の血から産まれた私も一定水準以上の見た目はしている。
我が家では、まぁだいたい普通くらいだが。
....そこまではいいのだが、私には問題があった。目鼻立ちはともかく、問題は...色味。
アッシュグレイの髪と、藍に近いものの、日に当たると透けるブルーの目。
睫毛はどちらかというと白に近い。
偶然だが、貴族という責任ある立場に生まれながら駆け落ちし、逃れた国での生活が立ち居かなくなって狂い、大勢の関わりない人間を虐殺した
現在でも語り継がれる恥辱にまみれた犯罪者とよく似た色味だった。
ちょうどソレが処刑されて30年目に私が誕生したこと、両親が暖色よりの色を持っていること、また、おり悪くここ数年、やはり暖色系を持つ赤ん坊の出生率の方が高く、この組み合わせの色を持つの者が私しかいなかったこと
そして、血の繋がりこそないが、系譜を目を皿のようにしてたどれば、遠い遠いものでも一応ソレは親戚に入れられなくもなかったこと。
貴族社会において、こういったことは本当は珍しいことではないのだが
4代前の当主の奥方の継母の妹婿のはとこのさらに従兄弟の再婚相手の....と永遠に遠い無いに等しい関係だ...
とはいえ、かなりタブーな事件であったし、他国との関係を逆撫でしないためにも、私が外交に直接は加わらないことは早い段階で取り決められた。
....しかし、人の想像力とは豊かなものだ
別に、水面下で面白おかしく笑われてるうちは実害はなかったのに。
たとえ何があっても、私は上に立つものとして、羽虫の囁きなど気にならないのだから。
しかし、古い家と血は常に確執を抱えているもの
このことを火種に焚き付けた人間がいたのだ。大事になり、そして火消しに我が家が奔走している隙を狙い、
私は拐われた。
フッ.....その時の記憶はスラムのドブに全力で投げ捨ててしまったから、まぁ覚えていないな。価値のない経験だったとだけ言っておこう。
それからしばらくして、エンに出会ったのだ。
アレは本当に貴重な体験だと幼いながら強く感銘を受けた。
まさか、自分と同じくらいの子どもが一人で自立して生きているなんて想像もできなかったから、今までの世界観にヒビがはいる衝撃があったな。
※謝罪
もともと、このページでは、さらりとラディの経歴を語り、エンとの出会いの方をしっかり書くつもりでしたが、上手く書けませんでした。しかも、やや一人称っぽいかもしれませんが、私は普段、3人称を意識して執筆しています。一人称オンリーは苦手なのです(当人の表層の意識を通してしかかけないので、自分でも気づけない複雑な感情とか、裏事情とか挟み込めないので)。ところが、何故か私は今回に至って「よし、一人称やろう(?)」と思い込み、書いてみた結果、なんか、前話で走馬灯走るくらいラディが焦ってたのに、悠長な自己紹介文ができてしまい、コレ不味いでしょと本気で焦ったものの、何時間もかけたものを今更棄てることも出来ず、揚げてしまいました。これからはもっと精進します。すいません。