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前座2:ゾンビ物は展開の早さが命なのに…

…う…、ここは…。


「誰かの…部屋?」


気が付いたら俺は、日常系アニメなどでよく見る普通の部屋にいた。

だけど女子になったわけじゃないからな。

男の方の日常系アニメなどでよく見る部屋だ。

あれ?よく考えたら日常系アニメって女キャラばかり…、


「って、そんなことはどうでもいいんだよ!!」


くだらないことを考えている内に全てを思い出した。

俺は確か、神野郎の勝手な行動により、異世界にとばされたんだった。

ここが異世界かどうかの保証は今の所ないが、

俺の趣味である、アニメや漫画、果ては二次同人物の装飾がまるでないこの見知らぬ部屋にいる時点で、ここは今までの世界とは違うと言えるのではないだろうか?


「それにしてもこの世界の俺、イケメンだなぁ…。」


鏡があったので自分の姿を確認してみての一言だ。

ナルシスト発言キモしと思うかもしれないが、前世の自分と比べたら天と地の差だからね、仕方ないね。

そして先程から独り言を発している時に聞こえるこの声-つまりは今の俺の声なんだが、

俗に言う、ええ声イケボである。耳の癒しである。

ほほぅ、少しはこの転生、期待できるのではないか?


『自分の容姿は堪能したか?それじゃあ質問の続きだ。』


「ぬぉぁわ!?」


突然の声に驚き、素っ頓狂な声を上げてしまう。


『ふむ、その姿にその声だと、悲鳴も甘美なものに聞こえるな。 どうだ?今夜辺り、私の家で』


「ぶん殴るぞ、殴れたらだけど。」


『…産まれて初めて、殿方にふられたわ…。

 この台詞を言うのも334回目になるけど。』


「じゃあ初めてじゃねーじゃねーか!一瞬ビビったよ!

 こんな奴が今までモテていたのかって!

 後、神の世界でモテるモテないっていうのがあるのかって!

 ていうかあんた、あのチームに恨みでもあんの!?」


神が誘うとか世も末だな。

俺が死んだのもこいつのミスかなんかじゃねーのか?


『こんな奴ってあのなぁ…これでも容姿には自信があるんだぞ?

 実際に君だって前回、胸以外はグラマラスって思っただろ?』


「前回って言うな前回って。

 それよりもあんた、質問の続きって言ってたろ?

 ってことはあれだ、あんたも何か訊きたいことがあるんじゃないのか?」


俺がそう言うと、またあの真面目な感じに戻る。


『そうだな、それじゃあ3つ目の質問になるな。

 これは質問というか、確認に近いかもしれん。』


「確認?」


『ああそうだ。君にはこの世界でとあるものを手に入れて欲しいんだ。

 それが手に入るのは…私の見込みだと、ゾンビ発生1週間後だ。

 だから、君にはそれまで生き延びてほしいのだよ。』


「成る程な…前回もそうだったけどあんた、さり気なく妙なワードいれているよな。

 それについては後でたっぷりと訊くからいいとして、

 その手に入れて欲しいものってのは、具体的にどんなものなんだ?」


『ほぅ、抵抗はないのか?突然異世界に飛ばされたと思ったら、

 そこで急に何かを求められることに。』


「求める?確かにあんたはさっき俺の身体を」


『そのことは忘れろ。忘れてください。』


異世界にとばされたこと、そこで何かを求められること…、

つまり、理不尽な今の展開に怒りはないのか、

危険な身に晒されることに抵抗はないのか、ということだろうな。

けど…、


「…その質問は無粋だね。」


『無粋?何故?』


「何故なら俺は…



この異世界転生が、楽しみでしょうがねーからだよ!」




…満面の笑みで答えてやった。その笑顔はきっと、俺の今までの人生の中の、どんな笑顔よりも美しいのだろう。


イケメンに転生したからな。


『…ふ、そうか。ならば先程の君の質問に答えねばな。』


相手も何処か安心したような笑みを浮かべる。

それは今までの笑顔の中で、最も美し…くはないな。


『手に入れてほしいものは簡単だ。そいつは通常、生物世界にあってはならぬものなんだ。

 未来の運命アヴニールデスタンといってな、それがなんらかのきっかけで生物世界に落ちてしまった時、それは生者に宿り、運命を狂わしてしまう。』


「それが、手に入れて欲しいもの、なのか?」


何故にフランス語?と思ったが、そこは触れないでおく。


『そういうことだ。それと、先に言っておくが、

 あってはならぬものがある理由…これに関してはすまない、口外できぬのだ。』


神の世には神の世の事情があるってことか…。


『そして、その「未来の運命アヴニールデスタン」を手に入れる-取り戻す方法はただ一つ。



 宿り主を、殺すことだ。』



「…マジか。」


『神が認めた殺し、というのもおかしな話だがな、

 とにかくそれは君の罪にはならぬから安心せい。

 それに、宿り主を殺さねば君が死ぬと思ったほうがいいだろう。』


「それ程までに重要なものってことかい。」


なんだか急に話がでかくなってきたな。

まっ、そうでなきゃ転生した意味なんてないしな。

この世界、本当に期待できそうだ。…できそうなんだが、


『で、君が一番気になっているこの世界、つまりゾンビ世界についてだが、

 ゾンビが出てくるまでは今までの世界となんら変わらんから安心しろ。

 さっきも言った通り、現状確認に務めるのが一番だろう。

 人間関係然り、身体能力然り…。

 肝心のゾンビについてだが、某傘社が産みだしたものより遥かに戦闘力は劣っている。

 武器を持った一般人なら、勇気さえあれば倒せる位だ。囲まれたらアウトだろうが。』


「つまり、この身体ならなんとでもなると思っていいんだな?」


『まっ、あんまり説明したら面白くないだろうし、話はここまでだ。

 それに、私が君に干渉できる時間も限界に近づいてきたようだ…。

 それじ…な…協栄かなえ。絶……生き……?』


フッと、あいつは消えていった。正直、訊きたいことはまだあったんだけどな。




「結局あいつ、何者なの?」


とにかく、漸く俺の異世界転生ライフが始まったようだ。

 



 



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