前座1:これが本当の轢き肉である。
今、俺-(和澤 協栄)の目の前には、俺-(和澤 協栄)の死体がある。
え?意味が分からないって?オイオイ、普通は分かるだろう?
それじゃあもう少し分かり易く言おうか。
今、自分の目の前に自分の死体がある。
まだ分からない?だーかーらー!俺が死んで!幽体?になったの!
何で分からないんだ!
『お前さんも自分の言っていることに疑問符付けているじゃないか。
幽体?って。』
「は!?な、何者じゃ!?」
突然の声に驚き、何故か堅苦しい言い方になってしまう。
いやこれ、堅苦しいっていうかなんというか…。
とにかく声がする方へ振り向いてみると、胸以外はグラマラスな、
神々しい?女性がいた。宙に浮いていることから、彼女は人外であることを察することが出来る。
ていうか今の俺に話しかけられるのは人外くらいだろ。
ていうか神だろ。
『しかしねぇ、君には文章力がないねぇ。そんな奴は異世界転生でもしてらっしゃ~い!』
と、唐突に話を始めたと思ったら、なんか、扉を作りだした。
んでもってその扉が開き、俺が吸い込まれて…、
「てちょい待てやァァ!!話が急すぎるだろ!
全くついて行けないんだけどぉ!!」
なんとかドア枠にしがみつき、吸い込まれずにすんだ。
『うん、そのツッコミ、33,4点。」
「なんでや(ry」
『因みに1000点満点中だからな。か、勘違いしないでよね!』
「全く嬉しくもないし心にも響かないし何の意味もないツンデレだな。
って、それより早くこの扉をなんとかしてくれ!」
『はいよ~。』
扉からの吸引がなくなっていき、扉が閉まる。
それに巻き込まれぬように、俺は扉から離れる。
閉まった扉の上部にD○SONと書かれていたが、無視する。
『君の言いたいことは分かる。だから早速質問及び回答を受け付けよう。』
「回答って、この場合受け付けるっていうのか?」
『そりゃあな、お互いに質問回答をし合うわけだしな。』
質問をし合うって…、まぁいいか。
『先ずは一つ、君は今、自分がどういう立場であるのか分かっているのかい?」
今までのおちゃらけた態度や雰囲気とうってかわって、
厳粛で真面目な感じになる。
やっぱり神なのだろうか?その辺も質問で分かるか。
「立場、ねぇ…。」
ちらっと、俺の死体現場を確認する。
野次馬や通勤中の人達の悲鳴やら何やらが飛び交っている。
因みに俺の死因は、線路内への飛び降り→電車でGO!
飛び降りと言っても自殺というわけではなく、
通勤ラッシュ時で混雑している駅のホームで、ちょっとした人混みの流れのせいで運悪く線路内に落ちてしまい、そしてこれまた運悪く、特急に轢かれたわけだ。
あそこが停車駅だったら、死なずに済んだのかもなぁ…。
後、通勤中の皆と、色々金を払うことになりそうな両親へ、御免なさい。
「…この有象無象に飛び散っているものが、俺だったんでしょ?」
正直グロい。幽体?じゃなければ発狂していたかも。
『有象無象、ねぇ。言い回しはともかく、君が死んだことは理解できているようだな。』
幽体?になっている時点で分かることだけどな。
変な現実主義者とかには受け入れがたいことだろうが、中2病である俺はすぐに理解できた。
「それじゃあ次は俺から質問させ」
『駄目だ、私からの質問が終わっていない。
君の次の生は私が握っているという立場上、君からの文句は受け付けない。
故に君からの質問は私の質問が終わってからだ。』
「ちょ、おま、」
なんだこいつは!いやでも、次の生は私が~とか言っていたし、
やっぱり神的な何かで間違いないんだろう。
じゃあ質問は一つ減ったな。
『君の次なる生の場は、ゾンビから逃げる戦うのサバイバル世界となるわけだが、
覚悟はできているな?』
…ん?
『ああ、安心したまえ。その世界とこの世界の君の身体能力は違うからな。
ゾンビと戦えない軟弱な身体では、君も転生に同意できないだろうし。
それに君には生き残ってもらわねばこちらも困るからな。』
いや、そうじゃなくて、
『それじゃあ元気いっぱい!新しい世界へレッツ&ゴー!!』
さっきの扉が開かれ、俺はそれに吸い込まれていく。
吸引力が変わらない…と思っていたら先ほどの何倍もの吸引力っぽく、
抗うことができなかった。
「ちょ、待てや!!俺の…俺の…俺の話を聞」
『続きは、異世界にて☆』
色々言いたいことはあったが、とにかく一言。
「畜生めェェェェェェ!!」
『(スマンの、協栄。君を巻き込んでしまって…)』