1歩目
---誰のせい?---
この有り余る財宝が水に変わればいいのに、と誰かが祈りを捧げたのだろう。
乾燥しか取り柄のない大地は茜色の雪に埋もれ、世界で生活を営む者たちの生気を無尽蔵に吸い取っている。
オレは行き倒れているゴミ袋を前足で拾い上げると、顔にペシャリと貼り付けた。
いい加減に吹雪いて先が見えないのだ。この状況でも平然と目を開けていられるやつは、目そのものが本体だというオレのおじさんぐらいだろう。
視界が確保できたことで近くの様子が分かる。
さっきまでは一面焼け野原に見えて、敵か味方かの判断もできない世間知らずみたいなことになっていたが、もう平気だ。
ふむ、この近くにある建物はコンビニらしい。珍しいことに妖怪を売っている。
一つ買ってみようかと思ったが、あいにく手持ちにメダルはない。
仕方がないので、アミノ酸を買ってまた吹雪いている外に戻ることにした。
予言によると天気は益々荒れるらしい。ここらで家に戻るのが良いのだろうか。
体を震わせて胸周りに固まっていた雪を野に返すと、オレは自宅の匂いがする南の方へと進路を取った。
父さんと母さんはまだ人間をやめてるのだろうか。それとも、人間として生活を営んでいるのだろうか。まず健康かどうかも怪しいな。
そう思った時にオレは少し後悔をした。もし大病を患い寝込んでいたら、今のオレでは楽にしてやれないかもしれない。さっきのコンビニで鋭いものでも買えば良かった・・・。
少し歩いたところで壮年の妖怪とすれ違った。オレはふと気になったので時間を聞く。
「三時」
オレは答えてくれた妖怪に丁寧な謝辞を述べた。
1歩進む