表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

序章

 橙乃ままれ先生著「ログ・ホライズン」の二次創作です。

 〈大災害〉から約ひと月後、〈円卓会議〉が設立される直前あたりが舞台設定となっています。

 あるクエストに挑んだ、零細ギルド所属で発展途上の中級プレイヤー達が、奇妙で不可解な体験をします。たどり着いたダンジョンで彼らの前に現れる真の敵とは!?

 中級プレイヤー達の、〈大災害〉後の世界で必死に踏ん張る姿を楽しんでいただけたらと思います。


 独自設定もいろいろ入れ込んでいます(特にバトル方面)。予めご了承くださいませ。

「ふぁーっ、終わった終わったぁ。本日の任務終了っと」


 ここはとある大学のキャンパス。

 五月の穏やかな陽気の中、連休前の最後の授業を終え、開放感に湧く学生達が次々と校舎から出てくる。

 その中にあって、周りの学生からは頭ひとつ分は大きいであろう、ひときわ体格のいい青年が、およそ学びの舎に似つかわしくない、気の抜けた声で大きな伸びをした。

 するとその大男に並んで、眠たそうな顔で背を丸めて歩く青年が、諭すような呆れたような口調で突っかかる。


「◯ッちゃん、任務ってなんだよ、任務って。ゲームもいいけどよ、授業ぐらいはちゃんと受けねぇと親御さん泣くぜ?」

「あんだよ、そういうおめぇだってずっと寝てたんじゃねぇか」

「睡眠学習だよ、睡眠学習ぅ。変な言いがかりつけっと、もう試験で答案見せてやんねぇぞ」


 お互いに肘で小突き合いつつ、二人は中央の広場に繋がる歩道を歩いて行った。


 楽しげに談笑し合ういくつかの集団とすれ違いながら、二人が中央広場の入口に足を踏み入れたところで、斜め前の方から片手を上げて声を掛けてくる者がいる。


「よぉー、今、授業終わったとこか?」


 実直そうな面立ちに程よく体格のいい、スポーツマンタイプの青年だ。


「うっす」

「◯◯ちゃん、お疲れっすー」

「お疲れー」


 三人は挨拶を交わしながら広場の中央付近で合流すると、連れ立って大学の正門に向かって歩き出した。


「いよいよ明日だなっ!」

「ああ、いよいよだ」

「待ちに待った新パック! 楽しみだねぇい」


 何の話題かなど言わずものがなというように、三人は目を輝かせてお互いの顔を見やっている。


 とその時、一行の後ろの方から、風に乗って張りのある涼やかな声が聞こえてきた。


「おーい、◯◯くーん」


 三人が振り返ってみると、こちらに向かって手を振っている人物が見えた。女性のようだ。


「お、◯◯、おめぇんとこのクラスの姫さんがお呼びだぜ。ったく、うまくやりやがったな」

「バカ、そんなんじゃないって。ただのクラスメートだよ」

「またまたぁ、◯◯ちゃん。誰もそんなふうに思ってないっしょ」

「ちげぇって」


 遠目に見ても「姫」という呼び名が相応しいと知れるその女性は、艶のある長い髪を揺らしながら、愛嬌のある穏やかな笑顔を浮かべて三人に駆け寄ってきた。


「もう、◯◯くん、外で待っててって言ったじゃない。どんどん先に行っちゃうんだから。あ、みんなもお揃いね。授業お疲れさまぁ」


「よっす」

「◯◯っち、まいどぉ」


 ひとしきり挨拶を交わし合うと、今度は四人で、中央広場から正門に向かって伸びる道を歩き出した。

 午後の柔らかい日差しと、頬を撫でる穏やかな風がそよぐなかで、一行はまた同じ話題に花を咲かせる。


「ね、ね、みんなも明日の夜、もちろんログインするんでしょ。楽しみよねー」

「当然! メインストリートに陣取ってスタンバイよっ。新しいスキルにダンジョン。腕が鳴るなっ、おい」

「私は新しい召喚獣に期待、かな。かわいいの増えるといいなぁ」

「オレはもっともっとレベル上げたい! まだまだ先は長そうだけど、百レベルってのにも早くなってみたいしな」

「うんうん、そうよねぇ。〈黒剣騎士団〉とか〈D.D.D〉の人達とか当然そこ目指すだろうし、何よりかっこいいもんねー」

「だねぇ。サイト情報によると今度のアップデートはハンパないらしいわ。ガンガンレベル上げて、新しいダンジョン初制覇っしょ」

「え、お前って、そんなに上昇志向強かったっけ?」

「いやいやいや、◯◯ちゃん、オレっちのことナメてない?」

「あはははははっ」


 談笑しながら歩いていくうち、一行は分かれ道に差し掛かった。

 一方は大学の正門へ、一方は別の校舎へと通じている。


「なあ、オレ達これから部室に顔出してくけど、二人はどうする?」

「ん、いんや、オレ等はこのまま帰るわ。今夜はバイト入ってっし、それにおめぇらの邪魔してもワリィからな」

「ちょ、だからー」


 ニヤリと笑いながら、男子二人は、男女二人に軽く手を振る。


「じゃあ明日の夜なー。寝落ちすんなよぉ」

「ほいじゃーねぇ」


 男女の方も手を振ってそれに答える。


「はーい、またあちらで会いましょー」

「ああ、またなー」


 お互い後日の再会を約し、それぞれが別の方向に歩き出した。

 二組が離れていくのにつれて、話し声も次第に遠ざかっていく。



「さぁて、明日は食料たくさん買っておかねぇとな」

「はは、◯ッちゃん、それ以上身体デカくなったらどうすんだよ……」

「向こうで体力使うからいいんだよ………」

「そういう問題じゃねぇ…………」



「じゃあ、行こっか」

「うん……」

「今夜はログインできそうか?………」

「んーどうかなぁ。するとしても遅くになるかなぁ…………」




 ーーこの翌日、全世界で実に数百万人ものゲームプレーヤー達に、思いもよらぬ悲劇が降かかった。


 これはその日から、ひと月ほど経った頃のお話ーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ