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片想いとイタズラメール

作者: R_

~♪♪♪


夜、勉強をしていると私のケータイにメールがきた。自分の誕生日の夜まで勉強しかやることがないだなんて、内心苦笑いをしていたときだった。


(誰からだろう…?)


メール友達などという人が私にはいなかった。故に、心当たりが全くない。しかもこんな時間に…。不審に思いながらメールボックスを開いてみると、知らないアドレスから。


(…見るくらいなら、大丈夫だよね……)


そんな軽い気持ちで開いてしまった。そこには…。



『ハッピーバースデイ!

ひかりさん、おめでとう。


突然ゴメンね(笑)

どうしても、お祝いしたかったんだ。


いや、ただきっかけが欲しかっただけかもしれない…。


同じクラスの相良 良太です。

僕の気持ちをどうしても伝えたくてメールを送りました。


僕はひかりさんのことが好きです。もしよかったら付き合って下さい。


返事はいつでもいいです。



ホントに突然こんなメールゴメンね!

では、おやすみなさい。』



「……?」


見間違いなのだろうか。しかし、2回、3回…。いくら見直しても…。これは告白というやつだ。……いやいやいや!?まさか…私が?しかも、相良くんからだなんて……。きっと今鏡を見たら、顔が真っ赤に染め上がっているのがわかるだろう。それほどにまで、興奮していた。心臓なんてばくばく鳴ってるし、手も少し震えてる。ケータイを落としてしまいそうだ。


私のずっと隠してた想い…。中学生の頃から相良くんのことが好きだった。でも、それは叶わないと勝手に思い込んで、諦めようともした。だけど…自分の想いにウソなんて付くことは出来なくて。だから、想うだけにしよう、ずっと隠していこうって思ってた…。だって私と相良くんとでは、違いすぎるから。


私は、高校生にもなっておさげだし、地味すぎてクラスでの存在感なんてものは無いに等しい。根暗ではないが、クラスメートたちは私のことを、おとなしい子としてとらえているだろう。だけど…相良くんは違う。私とは全く違う。クラスの中心人物で…。マンガや小説によくいる、女子にも男子にも人気のある…いわゆる主人公立ち位置の人。


(こんなの、ありえないよ……)


本当に、あるわけがないんだ。接点だってただのクラスメートってだけ…。もしかしたら、話したことあるかもしれないけど…。そんな……。明日…どんな顔して登校すればいいの……。期待しても…いいの?



「…ふあぁ~……。」


目覚まし時計が鳴る前に起きてしまった。自惚れないようにとは思っていたが、身体は正直だ。ほとんど眠れなかったように思う。それなのにこの早起きだ。まぁ…いいか。その分、早く学校に行けるのだから。


学校に着いたけど…。やっぱり、人が少ない。いつもの朝のように、人の話声で溢れていない。自分のクラスに着くまで、他のクラスを横目で見てたけど、5、6人の男子が集まっていたところがだいたいだった。


「ーーで、ーーーだろ?」


「いやーーーの、ーーーー。」


(私のクラスもか……。)


入りづらい…。男子の声しかしない。はぁ…。気は進まなかったが、こんなところにいても仕方ない。扉を開こうと手をかけると……。


「そーいやぁ、相良ー。お前も送った?」

(ドキッッッ!!!)


思いっきり反応してしまった。私の心臓は正直すぎる。相良くんもいるのか…。でも、盗み聞きはいけない……。しょうもない葛藤をしている間に、男子の話は続いていく。


「あーー。相良も送ったんかーアレ。」


「えっと…。いやー……。」


「まぁ、大丈夫だろ。あんなの誰も信じないって。」


「違っ…………。」


アレ?…何のこと?足が動かない。嫌な予感がする…。聞いちゃいけない。そう本能的に思ったが、遅かった。


「ニセ告白メール(笑)考えたヤツもアホだよなー。」


「やるヤツもアホだけどな。」


「あはははは!!!」



男子たちの会話を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。…何……?今…何て……。手が震える…。昨日とは違う意味で。先の事なんて考える余裕など、あるはずもなく。私はその場から逃げ出した。



(…ウソだったんだ……。遊びだったんだ…。)


悲しい気分になったとき、いつも来ていた大樹の下。日陰の涼しさが今は心に強く突き刺さる。冷静になって考えてみれば、相良くんなんかに私が釣り合う訳がない。バカだ、私。自惚れちゃって……恥ずかしい。騙された事が悔しいのか、悲しいのか…。いつの間にか涙をこぼしていた。


キーンコーンカーンコーン……


朝礼の時間が始まってしまった。サボりなんて初めて…。


(どうしようかな…。)


こんな顔、誰にも見せたくない…。鏡を見なくてもわかる。目も鼻も赤くなって、不細工な顔。考えるとまた涙が出てきてしまった。私の口からは嗚咽しか漏れない。風がふき私の髪を乱す。そんなこともお構い無しにずっと泣いていた。ずっとずっと泣いて…。


何分くらいたっただろうか。私の目からはもう涙は出てこなくなっていた。この学校は少し変で、朝礼後のチャイムがない。ここからだと時計も見えない…。戻ろうと思い、扉の方へ振り返ったときとても強く風が吹いた。そして…開かれる扉。


「ひかりさん…!!」


(なんで……。)


「さ……がら…君…。」


突然現れた人。私の好きな人。そして…今は会いたくなかった人…。それなのに…視線が逸らせない。こんな状況なのに、会えて嬉しいって気持ちが残ってる。驚きと緊張と…いろいろな気持ちが混ざって混乱する。ドキドキしすぎてぼーっとしてしまう。


「…!!」


私の顔を見てハッと何かに気がついたように驚いた。あ…!やだ……泣いてたの気づかれたよ…。こんな顔見られたくなかった…。


「…ひかりさん……。」


悲しそうな…それでいて何かを決心したような…。こんな表情の相良君を見るのは初めてで……。


(何を云おうとしてるの…?)


と、いうか。どうしてこんなところに相良君が?何で?私の頭の中はそんな疑問でいっぱいだった。そして相良君が何を言うのかと、内心ビクビクしていた。


「ゴメン!!!!!」


ガバッッッ


謝罪の言葉と共に勢いよく下げられた頭。な、何!?相良君が私に謝って……て、あー…。そっか…あのイタズラメールのことを謝ってるんだ。相良君のことだ、良心に動かされ私に謝りに来てくれたんだろう。確かにあんなメールよくないけど、普通の子ならイタズラメールだって気づいたはずだ。最近流行ってるらしいし…。


「ううん…。あのメールのことなら……イタ…ズラだって……わかっ……。」


何で。涙がまた流れ始めた。イタズラメールだってわかってるのに。何で。何で、何で、何で……!相良君を困らせたくないのに…。


「…っ…うぅ………。」


言わないといけないのに、私の口からは嗚咽しか出なくて。もう、何も言えなくなってしまった…。あぁ、きっと相良君は困ってるんだろうな…。


「違うんだ!!!!」


「…!?」


「…っっ。僕がひかりさんに送ったメールはイタズラとかじゃなくて……!!」


相良君が放った言葉は私の心を揺さぶるには十分すぎるものだった。…イタズラじゃない……?だって…朝、男子が…。思い出せ…。しっかり…あのときの会話を思い出せ……!!


『あーー。相良も送ったんかーアレー。』


『えっと…。いやー……。』


『まぁ、大丈夫だろ。あんなの誰も信じないって。』


『違っ…………。』


……相良君は…。…否定してる。何で気づかなかったんだろう……。ううん。それより…何で否定してるの…?状況がうまく把握できない。もう涙は止まっていた。その代わりに鼓動がはやくなるのを感じる。苦しいほどに、ドキドキしている。


「あのメールに書いたのは、全部本当のことなんだ……!…だ、だから…。」


足が手が身体が…震える。今起きてることが、信じれなくて、嬉しすぎて。


「…っ……。僕はひかりさんが好きです…!…付き合って下さい。」


これは…私の妄想とかじゃないよね?そんなことを考えてしまうくらいにまで、私は動揺していた。…だって。中学のころから約2年間近く…ずっと片想いしてて。叶わないって…叶うことなんてないんだって諦めてて……。視線を少し上げると、不安そうな表情をしている相良君がいた。…あぁ、本当のことなんだ。そう確信すると余計に私の心臓は強く鳴った。


「わ、私も……相良君が好き…です…!」


私がそう言うと、相良君はビックリしたような顔をしたあと、私の大好きな笑顔になった。それにつられて私の表情もゆるゆるしてしまう。空を見上げると透き通った青色に真っ白な雲。心地よく風が吹く。大樹が風に吹かれ鳴く。こんな何気ないことが、今はなぜかいとおしくて。また二人して顔を見合って笑いあった。

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