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78.妖精の迷宮


 【妖精の隠れ森】では素材を集めにくい、盗られてしまうことと言うことで、採取場所を変えることにしたリリィ。




「うぅっ……、すいません……」

「気にするな、俺もいくつか盗られたしな」

「それでも、クナイだけ全部盗られるとはね……」

「はうっ!」

「おいおい、慰めているんだから、横槍は止めてくれよ」


 クナイだけ入手素材は0になっていた。

 これでは素材が集まらないと判断して、場所を変えることにしたのだ。




「南は止めて北に行こう」

「確か、北は……『妖精の迷宮』だったな」


 クナイは妖精と言う言葉にピクッと反応する。

 クナイは妖精に素材を盗られまくってしまったからちょっと苦手になってしまったようだ。

 だけど、【妖精の迷宮】には、素材を盗む妖精はいない。




「大丈夫だ、次の【妖精の迷宮】に素材を盗む妖精はいない」

「本当ですか!?」


 パァッと顔が輝くクナイ。それ程に素材を盗む妖精が嫌なんだな……、とわかりやすい子だった。

 そう決まれば、リリィ達はすぐに【妖精の迷宮】に向かった…………




◇ ◆ ◇ ◆ ◇






「ここが【妖精の迷宮】ですか……?」

「ただの森にしか見えないね」


 初めて来るリリィとクナイの目には普通の森にしか見えない。

 これが迷宮だと言い張るには、何かがあるなは確実なんだが…………




「まっ、中に入ればわかるさ。案内は任せとけ」


 内容を知っているギロスが誘導し、中に入っていく。

 確かに、ここで突っ立ったままじゃ、何もわからないのはわかるが…………




「なんか、ギロスは自信満々に見えるのだが……?」

「あ、リリィもですか? 前にやったことがあるからその自信だと思いますが……」


 前にやったことがあるから大丈夫だろうと考えているかもしれないが、運営がβ時代と同じままにするかどうかは…………









「なんだこりゃぁぁぁ!? ここの道は湖に繋がる道じゃなかったのか!?」

「ここは……、沼だね」

「うん、沼」


 ここまでは惑いの花、立て札、妖精の幻覚などに道を惑わそうと邪魔が入ったのだが、ギロスはそれらを気にせずに先に進んでいった。

 リリィとクナイもギロスについていき、たまに出てくるモンスターの相手をしたりしていた。


 ギロスの話によると、【妖精の迷宮】には、湖があってあそこはいい素材を落とすモンスターが多いらしい。

 まず、そこを目指したのに、着いた先は沼だったわけだ。




「ギロス? 君にはこれが湖に見えるの?」

「んな訳があるか!? まさか、運営が変えた?」

「まぁ、変えただろうね。【ネリフィの街】を見れば、誰でもそれに思い付くのだけどね……」


 β時代の【ネリフィの街】には大樹が無かったとギロスから聞いたのだから、フィールドも変わっていてもおかしくはないと思ったが、ギロスは変わっていると思ってなかったようだ。




「そんな……」

「沼の中に入るのは勘弁よ? 匂いが再現されているし……」

「うん……」


 沼の中にもモンスターの気配がするから【泳ぎ】を持っていれば、入れるのだが、リリィは拒否した。




「確かに入りたいとは思わないな……」

「まぁ、沼は入らないからどうでもいいけど、帰り道は大丈夫だよね?」

「………………」

「その顔は、駄目みたいだね」

「ぎ、ギロス!? 戻れないのですか!?」

「す、すまねぇ!」


 帰り道も覚えていたのだが、行きと違った道を通らなければならないのだが、それさえも変わっている可能性が高いのだ。




「動き回っても出口が見つからなかったら、わざと死帰りをするしかないな……」

「えー……」


 ギロスは道順を覚えているから、街に戻る道具を持ってきてなかったのだ。

 変わっていたことに気付かなかったのだが…………

 クナイも素材を入れる枠を作るために、アイテムは回復薬しか持ってきていないのだ。






「念のために作って置いて良かったな……」


 リリィは一本の鍵を取り出していた。

 〈ギルド帰還の鍵〉だ。




「リリィ! そ、それは……」

「〈ギルド帰還の鍵〉だよ」

「ここから出られるのね!?」


 死帰り以外に出られる方法を見付かったので、クナイは喜んでいた。

 だが、リリィとギロスは浮かない顔だ。




「くっ……、貯めていたのに……」

「諦めろ」

「え、ええ? 何が……?」


 クナイだけわけがわからず、困惑するしかなかった。

 リリィが説明してくれた。




「この鍵は、【ウィータの街】にあるギルドハウスに帰れる鍵なんだけど、条件があるの」

「え、条件って……?」

「一回使う事に、一人、10000yen払わないと駄目なの」

「お金を払わないと駄目なの!?」


 やはり、クナイは驚いていた。だから、リリィとギロスは浮かない顔をしていた。




「わ、私のお金はギリギリなんですよ……」

「これは最終手段だね。動き回って出口に着ければいいんだけどね。さらに素材を集めないと駄目だし」

「そ、そうですね……、出口を探しましょうよ!! 念のために使わない素材を売るために沢山集めないと!!」


 もし、鍵を使うことになっても使わない素材を沢山手に入れて、売ればいい! と考えているようだ。






「スマン……、ここの素材は高く売れる物が少ないんだ。しかも、出る確率は低いときている」


 ギロスの言葉に嘘はない。ここの素材は良いものが取れるが、売却額が安く設定されているから、プレイヤーのとこで売っても安いのだ。




 そのことで、またクナイは「そんなぁぁぁーーん!!」と森の中に響いたのだった…………







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