76.珍品
マナがギルドに入会した翌日。
午前中はクナイとギロス達が第三ボスに挑む予定と聞いている。
その間、リリィは…………
「はむはむ、これは美味しいな」
一人で【ネリフィ街】を歩いていた。
【ネリフィ街】にいるプレイヤーはまだリリィだけだが、屋台などが出ていて買い物や食べ歩きをしていた。
今、手に持っているのは森の自然から採れた【マウイの茸】であり、松茸みたいな風味が漂っており、食指が動くほどだ。
「ん〜、これは酒が欲しくなるな」
この世界では酒は20歳以上じゃないと飲めない! と言う法律はない。
だが、飲み過ぎるとたまに【二日酔い】と言う状態異常にかかることがあるらしい。
【二日酔い】の効果はただ気持ち悪くなるだけだが、とても戦闘が出来ないと思うほどに気持ち悪くなってしまうから、リリィは飲まないようにしているのだ。
飲むなら、現実の世界で飲めばいいだけなのだ。
味が現実の世界より落ちるのもあるが…………
「お、あそこに海の幸、スルメがある! ……って、何故、酒のツマミばかりなんだ?」
他にもチーズたら、焼鳥、漬け物などの屋台もあった。
せっかく、森の街なんだから森の幸に関する屋台ばかりにすればいいのになぁ。でも、どれも美味しいからいいか。
そう納得して、リリィは続けて屋台を回るのだった…………
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そろそろ腹が膨れたと感じた所で…………
「あ、あれは雑貨屋?」
目に着いたのは、黒いテントだった。
占い屋みたいな所だったが、色々な物が置いていたから、雑貨屋だと思ったのだ。
「ねぇ、ここは雑貨屋?」
女性の店員にどんなお店なのか、聞いてみた。
店員の服は黒いビキニに、黒いマントを着ていて、エロいお姉さんのようだった。
「ふふっ……、違うわよぅ。黒魔術の店よ」
「黒魔術……? どんなお店なの?」
「それはねぇ、黒魔術に関する魔術を使える物を売っているのよぉ」
説明して貰ったけど、イマイチわからなかった。自分が使える闇魔法とは違うのか? と、思いながら品物を見てみた。
「札?」
「はい。この札、一枚で一つの魔術を使えるわよぅ」
「魔術って、魔法なのか?」
「魔法と少し違うけど、魔法に似ているわね。例えば、貴女みたいに闇魔法しか使えなくてもこの札があれば、他の系統の魔法が使えるわ」
「っ!? 何故、闇魔法しか使えないと……?」
「貴女は【聖母殺しの者】という称号を持っているでしょ? 私にはわかるわ……」
まさか、見破られるとは思わなかったが、そうゆう設定だと納得し、詳しく聞いてみた。
「そうか。なら、どうして札を使うと別の系統である魔法を使えるんだ?」
「この札は別の人の魔法が込められているから、貴女が魔法を使えなくても発動出来るわ」
「つまり、自分の魔法じゃないから使えるということ?」
「そうよ。この札は魔法が込められているけど、物に込めて他の人が使うから魔術と言うわよぉ」
「なるほどな。じゃ、一つでいくらだ?」
「基本系統の火、水、土、雷、氷は一枚で5000yenで光と闇は8000yenになるわ。全て、範囲魔法が込められているわ」
「高いな……」
「しかも、一回で使い捨てになるから気をつけてね」
一回しか使えないのは、勿体ないが、リリィは闇魔法以外は使えない称号があるから、念のために買っておいた方がいいだろうと考える。
「……よし、闇以外のを三枚ずつくれ」
「あら、意外にお金を持っているわね。金額は99000yenだけど、沢山買ったから、90000yenにオマケにしてあげるわ」
「ありがとう」
もしも、ある系統の魔法以外は無効! というモンスターが出て来たら使おうと思う。
また来てねぇと手を振ってくるお姉さんと別れる。
あのお姉さんはエロかったなぁ……
見た目は少女だが、中身は25歳の独身男なのだ。
表情に出さないように理性で押さえていたので、少し疲れたリリィだった。
ん? あれは、なんだ?
次に見付けたのは、草ばかり売っている店だった。
製薬術に使う草なのか? と予測しつつ、店に近づいてみる。
「おやぁ? お嬢さん? 何かお買い上げで?」
今度は優しそうな顔をしたおばあちゃんだった。
何を売っているのか、聞いてみた。
「ここでは薬草類を売っているのよ」
「薬草ですか……」
置いてある薬草を見せてもらった。
薬草、毒薬草、麻痺薬草など普通の店でも売っているのもあったが、目に着いたのが、これだった。
〈謎草Z〉
様々な効果を引き起こす草。
前に製薬術で作った〈謎の物体X〉の名と似ている。
様々な効果が出る草か…………あ、これをマナに渡したら何が出来るか面白そうじゃね?
〈謎草Z〉は一束で100yenと安いから、十束買ってマナに渡すことに。
午前の買い物は面白い物が買えたから満足して鼻歌を歌うリリィだった…………