71.ネリフィの街
すいませんが、ストックが切れたことを忘れていたので、今週と来週は一話ずつしか出せません。
よろしくお願いします。
リリィは【沈没の水龍】を倒し、次の街に転移された。
転移された先は、森のような街だった。
ほぉ、なんかエルフがいそうな街だな?
この街の名は【ネリフィの街】と呼ばれている。
【ウィータの街】は、真ん中に水が流れつづける城があったが、【ネリフィの街】は天まで届きそうなそびえ立つ大木があった。
大木の中に入れそうな入口も見えた。
大木の中にどんな物があるのか、わからないがリリィはワクワクしている。
「ほぇー、運営は良く考えるな〜」
【ウィータの街】は幻想的で素晴らしかったが、【ネリフィの街】も森の中に街があり、現実世界では見られない大木も調和していて感動するほどだった。
しばらく街を眺めてから、雑貨屋、武器屋、防具屋、仕立屋に向かって商品を見てみた。
雑貨屋は、ようやくMP回復薬を買えるようになっている。ただ、高いのだ。
10%体力が回復する回復薬が200yenに対して、10%回復するMP回復薬は、5000yenなのだ。
これなら自分が作った方が安いだろう。カリンの店では半額の値段で売られていて、今ではもう売切れになっていると聞いた。
また売ってもいいが、暇が出来てからにすることにした。
次に、武器屋は前の街より強い武器が売られていたが、リリィが欲しいと思う武器はなかった。
防具屋はメイデが着るのを探してみたが、前の街でも探してみたいのですぐに買わなかった。
最後に、仕立屋だが…………
「まさか、材料持ち込みでオーダーメイドしか受け付けてないとはね……」
そう、ここの仕立屋は、オーダーメイドで注文しなければ、買えない。品が置いてないのだから。
材料はほとんど売っていたため、今は布に使う材料がないのだ。
さらに、オーダーメイドは高くなるので、お金をあまり持ってないプレイヤーは注文も出来ないだろう。
材料を渡して、さらに高いお金も取られるなんて、鬼畜な……と、思うが、ここでしか使われない技術もあるのだ。
自分も、いつか注文するかもしれない。
「ふむ、大木にも行ってみるか……?」
街の象徴とも言える、大きな大木。中になにがあるのか、リリィは楽しみにしつつ、向かう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「え、中に入れないの?」
「はい、すいませんが、許可証がないと入れません」
「じゃあ、その許可証はどうやって貰えるの」
「それは教えることが出来ないのです。自分の力で見つけよと、領主と決められているのです」
「そうですか……、領主とは?」
「はい、ここに住んでいる方で、この街を纏める方の一人となります」
住んでいる……?ここは領主の館ということか?しかも、領主の他に、街を纏める人がいるような言い方だったな……
気になることばかりだったが、大木の前に立つ門番が質問は終わりだと言うように、黙ってしまった。
これでは、あとは自分で調べなければならない。
「うーー、ギロスに聞いてみるか?」
迷ったら、ギロスに聞く!それが決まったらすぐに行動するリリィ。
【ウィータの街】にあるギルドハウスに帰るリリィ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ギロスはギルドハウスにいたので、早速聞いてみた。
ギロスはいつもギルドハウスにいるな?と思いつつ…………
「はぁ?【ネリフィの街】に大木だとぉ?そんなの聞いたことも見たことがないぞ!?」
「え、β時代にはなかったの?」
「ああ、森の中にある街というのは変わってないが、大木は無かったのだ。しかし、もう第三のボスをクリアしたのかよ……?」
「うん、一瞬だけクソゲーだと思ったわ」
「……クソゲー?それはどういうことなんだ?」
ギロスに第三のボスと戦った時のことを話した。
水精が防御無視して水龍のエネルギーを溜めたこと、水精を倒すと、水龍が全回復し、空を飛んだ。
さらに、永続ダメージを与える毒の霧に、相打ち覚悟で打ち合っても相手は少ダメージで、こっちは大ダメージを受けたこと。
飛ばないとこっちの攻撃がなかなか当たらないし、最後の水の槍が嵐に乗って吹き荒れる技など…………
話を聞いていたギロスは顔を青ざめていた。
よく考えると、私はよく勝てたな?他のプレイヤーだったら、クソゲェェェェェー!!と掲示板が炎上するんじゃないのか?
「………リリィはそんな相手に勝てたな……?」
「まぁね、他の人だったらクリアは無理じゃない?」
「俺も勝てる気がしねーよ!!」
やっぱり、そうだよな…………
β時代では、水精を倒しても、そんな水龍にならず、海中にいたままだったようだ。
おそらく、β時代の時は弱すぎたから、そういう設定に作り直されたと思う。
「あ、聞きたいが、あの水龍は水精に力を封じられているとか言わなかった?」
「そういえば、言っていたな……」
ギロスが気付いたことを聞いてみた。
「もしもだが、水精より水龍を先に倒したらどうなるんだ?」
「はっ!?ま、まさか……」
先に水精を倒さずに、水龍を倒したらどうなるか……
水龍の力は解放されずに、残った水精を倒すだけで終わったんじゃ?と気付いたのだ。
「可能性もありそうだな。水精を先に倒して水龍を覚醒させ、勝ったら何かあるんじゃないか?本来の倒し方が先に水龍を倒すことだったら……」
リリィはすぐにアイテムボックスの中を確認した。
ボスが衝撃すぎて、終わった後も報酬のことを忘れていたのだ。
調べたらこんな物が入っていた。
水龍の弓矢 STR+75 射程25m
効果1……矢に水属性を付加させることが可能。
効果2……【弓矢術】の【パワーチャージ】を使った場合、射程が40mになり、威力は削減されない。
こんなの、第三のボスでは貰えないような武器の性能だった。
しかし、あの強さに勝ったなら、これを貰えてもおかしくはないだろう。
ギロスが思い付いたことは間違ってないかもしれない。
「あったよ……、これね」
「うおっ!?なんだ、この性能はよ!!」
射程が長いと、威力は落ちてしまう。さらに、【パワーチャージ】は射程は伸びないが、この弓矢を使えば、射程が伸びてさらに、威力も削減されないのだ。
弓矢を使うプレイヤーは金を沢山積んでも、欲しがるプレイヤーが多いだろう。
「やはり、リリィは人外レベルだな」
「失礼なっ、まだ人間だよ!」
「ははっ、まだか。とりあえず、その情報を掲示板に載せるがいいか?」
「構わないよ。私は掲示板を見ないし、任せるよ」
リリィは疲れたと言いながら、ソファーに沈む…………