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60.アイアンメイデン



 甘酸っぱい喫茶店の件が終わり、ログアウトした鷹野は、いつも変わらない現実世界を過ごし、夜八時に再ログインした。









「……なんか、現実世界よりこっちの方が充実しているのはいいことなのか……?」


 リリィは気付いていた。それは良くないことだと。だが、鷹野は今までネットゲームばかりで他のことをしてこなかったから仕方がないと思う。


 ……まぁ、現実世界でもきちんと生活出来ていれば問題ないよなぁ。


 体調を崩すまでやっているわけでもないので、気にしないことにした。

 次に何をするかはまだ決めてないが、そろそろ新しい武器か防具が欲しいなと思い、武器屋と仕立屋に行ってみることに。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 まず、武器屋に行ってみた。


「すいませんー、何か新しいの入っていますか?」

「お客様、いらっしゃいませ。どんな武器をお求めで?」

「うーん、とにかく新しく入ってきた武器を見せてもらえますか?」

「はい、わかりました。こちらをご覧下さい。この武器が最近に入ってきた武器です」


 そう言って、見せてくれたのは……



 鋼鉄の曲刀 STR+35



 グレイトハンマー STR+63 AGI-10



 というものだった。どちらもリリィが持つ呪いの武器より下だった。


「うーん、これだけなんですか?」

「すいませんが、これらが一番新しい武器なんです」

「そうなんですか。すいませんが、今回はいいです」


 そう言って武器屋から出た。次は仕立屋に向かおうと思ったら、知らない女性に声を掛けられた。


「すいません。武器屋で聞いていましたが、満足できる武器がなかったとか?」

「え…、は、はい。あの、貴女は?」

「あ、すいません。私は武器屋の娘でリナと言います」

「私はリリィと言います。それで武器屋の娘がどうして私を?」


 NPCから声を掛けられたから何かクエストがあるのかと思ったら……


「貴女は武器屋で満足できる武器が見付からなかったで間違いないですね?」

「……まぁ、そうですが」

「なら、武器屋の娘として満足できる武器を紹介したいと思います!」

「へ、あるの?」

「はい。それは……」




 リナは武器屋に置いてある武器を紹介ではなく……、ある場所に凄い武器があると言う情報を紹介してもらえた。


「へぇ、【リーベリアの海域】の南を奥まで進めば【沈んだ王都】があるんだ……」

「はい。そこには凄い武器が眠っていると言われています」

「ふむ……」


 今は仕立屋に行く途中だったが、それは後でもいいし。それに凄い武器があると情報を貰えたから早く行って手に入れた方がいいだろうと考えた。もし、他のプレイヤーもこの情報を持っていたら競争になりそうだからだ。


「早速、行ってくるね!」

「はい、お気をつけて下さいね」


 そう言って、リリィは【リーベリアの海域】に向かおうと足を動かした。




「あ、どうして私に…………あれ、いない?」




 どうして私に情報を?と聞こうと振り返ったが、もうリナはいなかった。


 もう行っちゃったかな?まっ、手に入れてから聞けばいいか!


 リリィはそう納得して【沈んだ王都】がある【リーベリアの海域】に向かった…………




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 へぇー、こんなところにあったんだ……


 リリィはリナに言われた通りに南を進んで行ったら岩で出来た壁が見えた。所々、ボロボロになっているとこがあったが、おそらく、城壁だと予測出来た。


『ここが【沈んだ王都】ですか?』

「多分ね」


 リリィは一人だけだと時間がかかりそうだから【リーベリアの海域】に行く前にドーラを召喚して置いたのだ。

 クナイやギロスも誘おうと思ったが、二人ともログアウト状態だったので、誘えなかった。


『街っぽいですが、所々が壊れていて一本道になっているみたいですね』

「あ、本当だ。街を全て探検しなくてもいいんだね!」


 これだけ広い街の全てを探検となると一日だけでは無理なので、これは助かると思った。


「んー、どんな武器があるのかな?」

『さぁ?wiwnではこの【沈んだ王都】のことは書いてなかったんですか?』

「いや、書いてあるかは調べてないし。始めから知っていたらつまらないでしょ?」


 リリィは攻略本を見ない方なのだ。知らない方が楽しいからだ。


『わかりました。では、この一本道を進んで行きますか?』

「まぁね、この道しかないし。そのまま行けば、王が住みそうな城に着きそうね。一応、罠に気をつけて行こう」


 あるかはわからないが、罠に気をつけながら進むことに。








「むっ、敵も罠もなしに城まで着いちゃったけど……」

『そうですね。運営は手抜きでもしているんですかね?』

「ははっ、運営は貴女の生み親なんだけど……」


 生み親である運営相手に愚痴るドーラに笑ってしまった。


『私はマスターの召喚モンスターです。運営よりマスターの方に優先権があります』

「えっと、私が第一みたいな?」

『そうですね。運営は生み親ですが、育てるのはマスターですから』


 ドーラはこう言っているけど、AIが運営より私についていくのがいいと自分で判断しているということか?


『つまり、私に命令を出せるのはマスターだけと言いたいのです』

「なるほど……」


 ないと思うが、運営からの命令より私の命令を優先するということか。


 ドーラのことがわかったことで、今はお城の中に入っていくことに警戒を強めた。






「……え、ここは陸地と同じ状況?」

『そうみたいですね。陸地と同じ動きが出来ます』

「つまり、空気があるから陸地と同じようなものか……?」


 中に入ったら、身体が違和感を感じたのだ。水中から空気がある場所に移動したような感覚だった。

 試しに身体を動かしてみたら、ドーラの言う通りに陸地と同じように動けた。


「陸地と同じように動けるのはわかったとして……また一本道?」

『そうですね。他の道は瓦礫で塞がれていますね』


 行ける道は一本しかなかった。他の道はないのでそのまま進んだ。窓もランプも一つもなかったので少し暗かったが、見えないというわけでもない。


「ん、地下への道?なんか、地下に強者がいそうな気がするんだけど……」


 ここまでは一本道だった。ただ宝がおいてあると言う楽な道はないと考えている。なら、宝を守る強者がいると想像出来た。


「でも、凄い武器のためだしね……」

『どんな武器か聞いていますか?』

「あ、いや。聞いてない。ただ、凄い武器があるとしか」

『つまり、どんな攻撃をしてくる敵がいるかわからないって言うことですね』


 もし武器が何かわかれば、敵はどんな攻撃方法を使って来るかは予測出来るが、リナは凄い武器としか言ってなかったのだ。

 もしかしたら敵のドロップ品がリナの言う凄い武器の可能性もあるのだ。


「まぁ、ここで足踏みしていても仕方がないし、行こうか」

『はい、了解しました』


 暗い中、地下への階段を降りていった……




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 階段を降りたら、広い部屋が広がっていた。部屋の真ん中にぽつんと何かが置いてあった。


「んー、暗くてよく見えないな……」


 少し近付くと、真ん中に置いてあるものの正体がわかった。




「……え、あれはアイアンメイデンだよね?」

『はい。それで合っています』




 置いてあったのは、拷問で有名なアイアンメイデンだった。アイアンメイデンは一人、入れそうな大きさで銀色だった。


「まさか、これが敵?」 『わかりませんが………!?開きます!』


 ドーラの台詞の途中にアイアンメイデンの開く場所がゆっくりと開いたのだ。

 開くとアイアンメイデンの下に血が流れていく。その中には…………




「……小さな女の子?」




 中にいたのは、10〜12歳に見える少女だった。元は白い服だったが、血まみれになっているように見えた。では、下の血はあの少女のだと思える。髪色は、銀色の髪だった。つぶっていた目がゆっくりと開いていく……




 ゾクッ……




 リリィはあの少女の目を見ただけで恐怖を感じていた。


 うっ、なんてな冷たい目なのよ……




「……………」




 少女は何も言わずにアイアンメイデンから出てゆっくりとアイアンメイデンの扉が閉まっていく。

 完全に閉まったら、何もなかった所から他の拷問道具が出てきた。誰でも知っている電気椅子とギロチンの刃が三枚が鎖に繋がって少女の右手に絡まった。

 右手にギロチンの刃三枚、後ろにアイアンメイデン、左には電気椅子が浮いていた。

 少女の準備が終わったら久しぶりにあのアナウンスが聞こえた。



『稀少イベントが始まります。”拷問少女”(トート・メイデン)を倒せ』



 …………また稀少イベントかよ!?何かグラフでも立ったのか……?


「ドーラ、あの敵を倒さなければならないみたい」

『はい。三種類の武器が気になります』


 ドーラはギロチンの刃、アイアンメイデン、電気椅子での何の効果を持つのか気になるようだ。


「って、電気椅子はバチバチと言っているんだけど……」


 武器の一つの電気椅子がバチバチと音を出し…………、リリィの危険察知が反応して気付いていたら身体を後ろに動かしていた。ドーラもリリィに習うように後ろに下がると…………




 バリィィィィィィィィィィンッ!!




 二人のいた場所に電流攻撃をされていた。


 はぁっ!?電気椅子が電流攻撃をすんのかよ!?


『っ、左を!』

「ギロチンの刃か!」


 メイデンの右手が動いており、ギロチンの刃を操ってリリィの左から仕掛けていた。


「【魔死のオーラ】に、【黒太刀】!!」


 リリィは【魔死のオーラ】で自分を強化して、【黒太刀】で向かってくるギロチンの刃を弾いて、【浮遊術】と【ステップ】の組み合わせである【空中ステップ】で天井ギリギリまで跳び上がった。


「ドーラ!【闇の槍】!!」

『はい!【怨霊の波動】!』


 メイデンは、どう見ても操作系のモンスターに見える。ほとんどの操作系のモンスターは本体が弱いはずだから二人は武器を無視して、本体を狙った。メイデンに迫る魔法攻撃だが…………




「【身代わり】……」




 メイデンがそう言うと、メイデンとアイアンメイデンの場所が変わり、魔法攻撃はアイアンメイデンに当たった。


「身代わりにした……?」

『全く効いてないみたいです』


 身代わりにされたアイアンメイデンには傷一つもなかった。つまり、メイデンの防御技のようだ。


「ただあの子に攻撃するだけじゃ、今みたいに防がれるみたいね」

『はい。隙を見つけて攻撃しないと当たらないかと』


 【身代わり】の技を使われる時間も与えずに素早く攻撃を当てないと倒せないと理解した二人。つまり、ギロチンの刃、電気椅子の攻撃を気をつけつつ、近付いて零距離で攻撃するのが一番だと考えるリリィ。

 と、考えていた時にまた電流攻撃が来た。さっきと違って全位方向に放たれていた。


「うっ!攻撃が読めない!!」

『マスター!後ろ!!』


 後ろを見ると、すでにギロチンの刃が来ていた。リリィは慌てずに空中ステップで上に逃げようとしたが……


「ぐっ!?」

『マスター!』


 いつの間に、上には身代わりにされついたアイアンメイデンが浮いていた。上には電流が流れてなかったので上を見ずに空中ステップで逃げたのが悪かった。

 まさか、アイアンメイデンが上に待ち受けていたとは思わずに……




「【アイアンスタンプ】……」




 メイデンがそう呟くと、アイアンメイデンがハンマーのように下の平らの部分で叩き落としにきた。


「し、しまっ……」

『マスター!【怨霊の波動】!』


 ドーラが魔法でアイアンメイデンにぶつけたが、少しズレただけで弾くことが出来なかった。リリィも【空中ステップ】で横に逃げるが間に合わず、左手に当たってしまった。




 バァン!!




リリィは当たった衝撃で吹き飛ばされ、体力の四割が減ってしまった。


「け、けほっ……、まさかアイアンメイデンも武器として使われるとはな……」


 リリィは起き上がりながら愚痴った。


『マスター、大丈夫ですか?』

「ああ、四割減ったが、大丈夫だ。部位破壊もされてない」


 左手に大ダメージを受けたが、打撃だったからなのか部位破壊は起こってなかった。


「気を締めて、倒さないとね……」

『はい』


 メイデンの攻撃方法は大体わかった。まだ別の攻撃方法があるかもしれないが、大体の攻撃は見れたと思う。

 リリィ達はメイデンを倒せるのか…………





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