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55.『逃走者』本選編その4



 一つ目の指令が終わり、残り90分。リリィはようやく、見付けた。


「ここなら、逃げ切れるだろう……」


 ここは遊園地の遊具があるテーマパークステージ。真ん中の近くにある観覧車から離れて、別のステージと隣り合わせた隅っこに、リリィが探していた道を見付けていたのだ。


「ここなら道が5つも別れているし、【ベルゼブブ】無しで逃げ切れるかな?」


 今は、【ベルゼブブ】を出来るだけ使わないで逃げ切りたい。使用時間があと21分しか残っていないのだからだ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 西部ステージ……




「カリンさん、やるですね!リリィは行かなかったのかな?」


 そこにはレンガで出来た建物の影に隠れているクナイの姿があった。

 リリィだったら指令に参加しそうだったが、クリアしたのは別の人だったから参加してないかと思ったのだ。


「んー、考えても仕方がないですね。しかし、敵になかなか会いませんね……、まぁいいですけど」


 全く敵に会わないクナイは、楽勝だけど、暇だなーと思うのであった。




ピーピーピー!




 っと、上空からまた音が鳴ったかと思ったら、テレビに文字が書かれていた。



『ハーイ、敵に会わなくて暇だと思う人が出てくる頃と思って、次の指令を出しますよ〜』



 えっ、一回の指令がクリアされたばかりなのに、もう次の指令!?



『今回の指令は、【ご褒美を得るために、敵を解放しろ〜〜】ですっ☆』



 …………はい?ご褒美のために敵を解放しろ?



『そう、自分が恨まれ役になっても、ご褒美が欲しい方は、黒服の鬼を解放してください〜。これが『幽鬼』が封印されている場所が表示される地図です〜☆』



 と、地図が表示された。所々に赤いマークが3つ表示されていた。

 そこには西部ステージにも一つ表示されていた…………


「あ、ここから近いですね……、でもなぁ……」


 クナイがいる場所からそんなに離れていない。行って解放すればご褒美を貰えるが、敵が増えてしまう。自分は増やしても問題ないが、リリィ達に迷惑をかけてしまうな……と、ちらっと思ったら、テレビに続きが書かれているのを見たらそんな考えは消えていた。書かれていたのは…………








『制限時間75分になる前に解放すること。解放した方だけ、〈スキルの種〉か〈ジャンボスイーツケーキのチケット〉のどちらかをプレゼントします。もちろん、最後まで生き残れなかった場合、解放してもご褒美は貰えません!!』








 と。クナイが目についたのは、〈ジャンボスイーツケーキのチケット〉だ。ジャンボスイーツケーキは、第二の街、【ミディアの街】にある喫茶店のメニューに載っている大人気のデザートのことだ。

 見た目はあらゆるのスイーツを盛り込んだショートケーキのようだが、見た目通りだけでは知りえない味、甘さが舌をとろけるのだ。ジャンボが付いているなら、ホールで出されるが、ケーキ好きにとっては食べないと言う理由がないのだ。

 だが、ケーキ好きであるクナイはまだ食べたことがない。理由は金額にあって、大人気のメニューだが、20000yenという金額となっているため、手を出せないでいた。

 しかし、たった……今、ご褒美で〈ジャンボスイーツケーキのチケット〉が出ている。逃せないクナイはすぐに行動を起こしていた。周りから見る人がいたら、リリィ達のことはどうすんだよ?と思うかもしれないが……






「こ、これは逃せません……!!」






 すっかり頭の中からはリリィ達のことは消えていたため、止める理性はなくなっていた。


「やりますぞぉぉぉ〜〜」


 地図で確認しながらクナイは進んでいく…………




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 少しだけ戻る。ギロスの方は…………


「クソォ……、まさか地雷が仕掛けられているとは……」


 まだジャングルステージにいたのだ。先程、赤い鬼に罠を掛けられてダメージを受けてしまったギロス。あと一回、ダメージを受けたら退場になってしまう。


「あと一回かよ………」



ピーピーピー!



「ん、また指令か?早過ぎんだろ?」


 ギロスは音に気付いて上空のテレビを見た。クナイの時と同じように『幽鬼』を解放すればご褒美を貰える指令だ。


「はぁ、こんな餌に引っ掛かる馬鹿がいるかよ……」






ピーピーピー!



『クナイが西部ステージの『幽鬼』を解放しました!!』






「はぁぁぁぁぁっ!?」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 リリィの方も……




「はぁっ!?クナイ、何してんの!?」




 叫んでいた。『幽鬼』が周りにいるかもしれないのに、盛大に叫んでいたのであった……

 運良く、周りに『幽鬼』はいなかったので襲われることはなかった。


「まさか、〈ジャンボスイーツケーキのチケット〉を選んだわけないよね……?」


 リリィにとっては、〈ジャンボスイーツケーキのチケット〉には魅力を感じない。食べたいなら、そんなチケットを使わずにお金で払って食べるからだ。




「あーー……」




 リリィはクナイのことを思い出していた。前の会話で、喫茶店でケーキを食べまくっていたことを……。

 さらにクナイに〈ジャンボスイーツケーキ〉を食べるお金がないことも。それで、リリィはクナイが『幽鬼』を解放したことに納得したのだ。




 そんなことになるなら、私が奢ってやれば良かったな……




 と後悔したが、もう終わったことは仕方がない!と割り切るリリィ。


「よし、数が増えようが、逃げ切ってやる!!」


 気合いを入れ直し、まだ地図に表示されている封印中の『幽鬼』を見た。残っている『幽鬼』の居場所は、テーマパークステージ、ホーンテッドステージに表示されていた。




 ふむ、私もテーマパークステージなんだけど、封印中の『幽鬼』が置いてある場所は反対側になるんだよね……




 反対側というのは、リリィはテーマパークステージの北の隅っこにいて、置いてある場所も隅っこなんだが、ちょうど反対と言える南の隅っこにあった。


 …………行くの辞めるか。せっかくここを見付けたしな。


 行こうと思えば、行けるが、せっかくここの場所を見付けたのに反対側に行くなんて馬鹿らしいので、行くの止めた。〈スキルの種〉が欲しいと思ったが、先程の理由と敵が増えすぎては逃げ切れなくなると思い、指令のことを頭の中から排除した。


「うーん、他の人が解放しないといいんだけど……」






ピーピーピー!




『ミナトがホーンテッドステージの『幽鬼』を解放しました!!』














「………まじで?」






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