52.『逃走者』本選編その1
『はーい!これから本選を始めます!!予選で生き残った10名の誰が2時間の逃走で生き残れるのか!?』
本選が始まる時間になり、広場の映像にはミサが映っていた。広場には沢山の観客と参加者も集まって、映像に目を移していた。
『生産職でも勝ち残れるこの『逃走者』、逃げ切って豪華賞品を手に入れるのは誰なのか、見物ですっ!1分後にフィールドに移され、また予選のようにフィールドで説明を行います!!』
フィールドに移される前のリリィ達は……
「ギロス、本選で生き残れたら予選での恥を忘れてあげるわ」
「はい……」
「あはは……」
ギロスが予選で、諦めてリリィとクナイのために犠牲になろうと足を止めていたことにリリィは怒っていた。
だが、本選で生き残ったらそのことを忘れてお仕置きは無しにするということ。
「よし、本選は10人と少ないし、固まるよりバラバラになった方がいいかもね」
「そうですね〜。固まっていると範囲魔法で仕掛けられたらまとめてダメージを受けてしまうしね〜」
「さらにフィールドによって一人の方が逃げやすい道があるかもしれないな。予選は千人以上もいたから道は広かったが、本選は10人だけだからな……」
様々な理由により、リリィ達は予選と違って固まらずに行動することに。
………3………2………1………0!!
本選で逃げ回ることになるフィールドに移された参加者…………
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ん、ここは……」
「遊園地?」
「みたいだな……」
移されたフィールドとなる場所には観覧車、メリーゴーランド、ジェットコースターなどがあった。つまり、遊園地だったのだ。
『へへっ、驚きましたかー?そう、ここはみんなが想像している通りに遊園地だよっ!!ここが本選で逃げ回ることになるフィールドになるよー!!』
ミサの話では、遊園地のような場所がフィールドになるようだ。広さは東京ドームの5個分の広さを誇る。
予選の新宿のような場所と比べると狭いかもしれないが、参加者が10人しかいないから参加者にとっては広すぎると思えるだろう。
「あら、リリィちゃんじゃない!」
「あ、リリィちゃん、クナイ、ギロスもいるわね」
「あ、カリンさんに、カザミさんも」
「あ、こ、こんにちは…」
「ん、始めからみんながいるな?」
ギロスの言葉で周りをよく見ると、他の参加者もいて、10人が遊園地のチケット売場と言える場所に集まっていた。
「まさか、テレビのように始めから黒服の鬼が近くで解放されるわけじゃないよね……?」
「あー、有り得るな。そうなるなら一回のダメージを覚悟しとかないとな」
しばらくみんなで話していると、チケット売場から愛されキャラの姿をしたウサギが出てきた。なんかアメリカンなウサギだった。
『はーい!私がミサだよ☆』
ウサギからミサの声が聞こえてきた。どうやら、ミサがウサギの着ぐるみを着て出てきたようだ。
「なんというか…………」
「パクリ?」
「ああ、パクリだ」
『パクリじゃない!!』
ミサが着ているアメリカンなウサギが、アニメのギャグなアレに似ていたのだ。
『あぁもう!私が考えて作ったんだからっ!!』
ミサは自分で考えて作ったと言い張っている。
長い耳に、毛皮が灰色に近い色に細めの身体をしていて、まさにアレねウサギと変わらないように見えるが、ミサはパクリと認めないようだ。
「まぁいいから、説明をしてよ」
リリィはこのままでは先に進まないから本選の説明をするように急かした。
『そっちがいちゃもんをつけてきたのにぃ…………、いいや、これから敵を見せるね〜。いでよ、『幽鬼』達ぃ!!』
ウサギが召喚するポーズをし、後ろからローラを出すときと同じような魔法陣が書かれて透明な姿をした黒服が出てきた。頭には角があり、鬼と言う証明となっていた。
『幽鬼』は三体いて、テレビと同じ黒服を着ていてサングラスを掛けていた。
『この三体が、『幽鬼』と言って、物理、魔法、状態異常攻撃は全て無効だよぉ。予選にやったことは無駄だよ☆』
つまり、予選にやった状態異常を与える攻撃も使えないということになる。だが、リリィは予測していたことなので、それほどに残念だとは思っていない。
『さらにぃ、色が違うでしょ?赤、青、黄と色があって使う技が違うから気をつけてねぇ。すぐに終わっちゃったらつまんないから、教えたからねぇっ!!』
なるほど。『幽鬼』の使っている技がそれぞれ違うのはわかったが、使ってくる技を詳しく教えずに、自分で解析しろと言うことか…………
『幽鬼』によって使ってくる技が違うとこまでは教えてくれるが、詳しくは説明しないようだ。
『次に、テレビでの『逃走者』でよく出る『指令』があるよねぇ?もちろん、このゲームでもありますっ!!でも、携帯は使わないで上空に浮かぶ大きなテレビにて、『指令』を出しますよぉ〜』
ふむ、確かに大きなテレビと言うか、薄型テレビ?が浮かんでいるな。
『『指令』をクリアすれば………………賞品のランクが上がります!!』
賞品のランク?つまり、クリアするごとに賞品の質が上がるということか?
『もちろん、自分は『指令』に参加しなくても、自分以外の誰かがクリアしても全体の人が貰える賞品のランクは上がります!!始めの賞品のランクでも充分いい賞品が貰えますが、もっといい賞品が欲しい場合は『指令』に挑むといいですね!!運営にしては面白くするために挑んで欲しいと思っているのでっ☆』
まぁ……、面白くするためにエサを用意したと変わらないわな……。もしそんなエサがなくても俺は出来るだけ挑むけどねっ!!
リリィは今回の運営イベントは面白そうだから参加しているのだ。もちろん、勝ちに行くが、『指令』に挑まずに逃げに徹するつまらないプレイをしていたら参加している意味がないのだ。
だからリリィは『指令』が出たら挑む心構えになっている。
『ん〜、説明はここまでかな?始めは2分あげるので、ここから逃げてくださいね♪』
ここはテレビと違って2分を使って『幽鬼』から離れても良いらしい。
「よし、打ち合わせ通りにバラバラにね!」
「はい。気をつけてくださいです〜」
「おう、達者でな」
予定通りに三人はバラバラに逃げることに。
「リリィ達も気をつけてな」
「簡単に捕まるなよ!お互いに逃げ切ろうぜ」
カリンさんに、カザミさんからも激励をもらった。
「二人共も気をつけてね!!」
そうして、リリィ達は広すぎる遊園地の中に逃げ込んだ。制限時間は二時間、上空に浮いているテレビに刻まれている。
2分経った後に『逃走者』の本選が始まるのであった…………