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50.『逃走者』予選編◆後半◆



 【天の玉手箱】と呼ばれる沢山の手に様々なプレイヤーが捕まって退場されていく中、リリィ達は…………


「くそ、見つかったか!」

「うわぁぁぁーーー!」

「やはり、視認されるだけではなく、一定の距離に近付くと察知されるみたいだねっ!!」


 一本の手に追われていた。まだ距離は離れているが、いつか捕まってしまうだろう。追ってくるスピードは自分達と変わらないが、プレイヤー達にはスタミナがあり、疲れるとスピードが落ちてしまう。

 手の方はスタミナのものがないみたいで変わらないスピードのまま、追ってくる。


「くっ、これではいつか追い付かれるわ!」

「だったら……、あっ!」


 ギロスが急に指を指したと思ったら、リリィ達の前に逃げている人がいた。


「成功するかわからんが、やるだけやってやるか!」

「え、何を……?」


 ギロスはアイテムボックスから槍を取り出して、走りながら投擲の構えをしていた。


「まさか、あいつに!?」

「そうだぁぁぁぁぁ!!」


 ギロスは前で走っている男に向けて、槍を投げた。ギロスが投げた槍は…………




「うわぁっ!?」




 見事に当たり、男はダメージは受けていないが、当たった衝撃まではなくなっていないらしく、バランスを崩して転げ回っていた。


「よしっ!今のうちにアレを囮にするぞ!!」

「なんてな無茶をするのですね……」

「でも、こちらは助かるからよくやったわ!」


 こうして、リリィ達は男を囮にして、手から逃げ切ることに成功した…………




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 今、リリィ達は上空から見えないように、屋根になっているとこで周りを警戒していた。


「……ふぅ、巻いたみたいね」

「それにしても、ギロスはなんてなことをするのですね……」

「まぁ、恨みは買いそうだが、このゲームは他人を振るい落とし、10人に残らないと駄目だから、さっきのようなことは想定内だろ?」

「確かに……、敵はあの手だけではなく、プレイヤーも敵ですしね……」

「まぁ、協力が必要なのは本選だけで、予選は必要ないしね」


 予選のルールでは10人の中に残ることが勝利条件なのだからプレイヤーも敵になる。

 さっき、ギロスがやったような妨害行為は禁止にされていない。攻撃してもダメージは受けないが、バランスを崩すことは可能だとわかったのだ。


「とりあえず、手が近くにいるとこでプレイヤーを動けなくすれば数はさらに減っていくわね」

「ああ、えっと、まだ214人も残っているな……」


 その数字は、開始時にミサの顔が映っていた映像の代わりに表示されている。残った数だけ表示され、その数字が10になるまで逃げ切ればいいのだ。


「あの、動けなくすればいいと言っているけど、バランスを崩しただけじゃ、すぐに立ち上がってしまうんじゃ?」

「クナイ、この武器は覚えているね?」


 そう言って、〈血濡れの短剣〉を見せる。


「うん、会った時から使っていた武器だよね……?」

「そう。会った時から使っているわね。で、この武器の効果は?」

「え、ええと……、〈猛毒〉と〈鈍重〉が………………あ!」

「気付いたわね。そう、状態異常だったらダメージはなくても動けなくなるわよ」


 ルールでは、ダメージは与えられないが、状態異常は与えられないと表記されていない。試さないとわからないが、状態異常を掛ける可能性はあるのだ。


「プレイヤーを見つけたら、まず私がプレイヤーを〈猛毒〉か〈鈍重〉にしている間、二人は手を一本おびき寄せるのよ」

「なるほど……、それなら一時間経つ前に出来るだけプレイヤーを減らせるな」

「出来れば一時間以内に終わると楽なんですね〜」


 一時間経ったら手の数が増えて、スピードも上がってしまう。さっさと一時間以内に10人になるようにしておきたいのだ。


「さて、先にプレイヤーを捜すか」

「だったら、私が上から探してみますっ!」


 クナイは【全位歩行】を使って、手に見つからないようにビルの壁を走って上からプレイヤーがいないか捜す。


「えっと……、あ。いた!」


 早速、プレイヤーを見付けてリリィ達のとこに戻った。


「あそこに男女二人組がいたよ〜」

「なら、手は二本必要だな。リリィ、しくじるなよ」

「誰に言っているのよ?完璧にこなすわ」


 リリィとギロスはニヤッと口を歪めて、リリィとクナイ、ギロス組に別れた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「ふむ、二人組だったよね……」


 リリィは無動作に置かれた障害物の影に上手く隠れて手の襲撃を受けないように慎重に進んだ。

 と、クナイが言っていた男女二人組を見付けた。




「よーし、ヤルか!」




 男女二人組はまだリリィに気付いてなくて上空ばかり警戒していた。


 まだ気付いてないのね……。


 リリィはプレイヤーの視界に入らないように近づいていった。

 上空ばかり見ているということは、プレイヤーに警戒してないとも言えるのだ。




「えっ!?」

「きゃあっ!?」




 リリィはある程度近付いたと感じ、素早く二人組の死角に入って状態異常にしようと短剣を喰らわした。

 結果、二人組は何も出来ずに短剣に斬りつかれて状態異常を受けていた。両方とも〈鈍重〉になっていた…………


「なぁ、動きにくい!?」

「リリィちゃん!?」

「ゴメンね。敵はあの手だけじゃないのよ」


 リリィは悪びれたような感じで言う。と、その時に二人からの声が聞こえてきた。




「二本、来たぞ!」

「はぅはぅ〜〜〜」




 クナイとギロスは二本の手に追われながらこっちに向かってきた。


「よし、二人とも逃げるよ!」


 リリィも男女二人組を置いてこの場から離れた。




「クソォォォ!!」

「まさか、状態異常にすることが出来るなんて…………」




 男女二人組はクナイとギロスが引っ張ってきた手に襲われて退場した。


 やっぱり、状態異常は有効だったみたいね。続けてプレイヤーを状態異常にして減らして行くか!!


 リリィ達はその後もプレイヤー達を状態異常にして動きを止めたり、鈍くさせてクナイとギロスが手を引っ張ってきて、減らしていった…………




◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「ふぅっ、大分、狩ったんじゃない?」

「ああ、一時間まであと20分で、残った人数は84人だな。このペースなら一時間以内に終わるだろうな」

「ええ、続けて減らすわよ」

「おーい、また見付けましたよっ!!」

「よし、行くぞ!」


 またクナイがプレイヤーを見付け、こっちに報告してきた。それで、狩りにいく、でよかったはずが…………


「ん、何か上空の様子がおかしくない?」

「あ、あれ?手がいない!?」

「あ、あそこを見ろ!」


 上空に手がいなくなっていることに気付いて、ギロスが【天の玉手箱】の方に指を指していた。

 リリィとクナイも指を指されていた方に目を向けると…………


「あれ、手が戻っていく……?」

「まだ人数は79人も残っているのにぃ?」

「嫌な予感がするんだが…………」

「ええ、私もよ……」


 嫌な予感がするが、リリィ達には【天の玉手箱】に何かすることは出来るわけでもないので、見ているしか出来ない。

 リリィが思考している間も手はどんどんと【天の玉手箱】に戻っていく…………




 ついに、最後の一本の手が戻ったら全ての【天の玉手箱】が消えた。

 残ったプレイヤーは【天の玉手箱】が消えたことで終わったのか?と思ったらミサの声が聞こえてきた。




『まだ終わっていませんよ。45分経ったので、本来の【天の玉手箱】の姿になります!!』



 と説明されたが、何も起こらない。いや、起こっているが、プレイヤーにはわからないのだ。

 まさか、天空の全てが【天の玉手箱】になったとは…………




「うわぁっ!?」「いきなり上空から手が!?」「まさか、天空の何処からでも手が出てくるのか!?」「予測出来ない!」「うわぁぁぁぁぁっ!!」




 と、様々な場所からプレイヤーの悲鳴が聞こえてくる。上空の全てが【手の玉手箱】となっているから上空の何処から出てくるのか予測もできない。周りを見ると上空から手が沢山落ちてくるように襲ってきている。

 人数の数もどんどん減ってる。リリィ達の方では…………


「ヤベェな!?プレイヤーを襲う隙がないな!」

「あぅあぅ〜〜〜〜〜」

「人数はどんどんと減っていくから逃げるだけに集中しても大丈夫よ!!」

「ったく、もの○けのデカブツみたいじゃねぇかよ!!」


 リリィ達は襲って来る手から避けるに集中する。






「よし、今は21人だ!」

「もうすぐで………ま、前を!!」

「ちっ、挟まれたか……」


 今は路地裏にいるが、手に見つかり、前、後ろにもいた。


「くっ、逃げ切れない!!」

「クナイは壁を!私は飛ぶからギロス、落ちないように、【ベルゼブブ】……【飛行】!!」


 リリィは使わないで予選を通過したかったが、逃げ道が上しかない状況では仕方がない。

 ギロスはリリィの手に掴まってぶら下がっている。


「うわぁっ!?」

「よし、STRは変わらないみたいだからギロスを連れて逃げれる。クナイも大丈夫ね?」

「………(コクッ)」


 クナイは【全位歩行】を使っているから話せないが、頷いて返事をした。

 これで一旦のピンチから逃れたが、まだ手は諦めずにこっちに向かっていた。

 だが、【ベルゼブブ】の状態ではAGIが20%アップしているから追いつけない。クナイも壁に付いている看板を上手く使いつつ、距離を少しずつ離していっている。






「今は12人か……」

「あと2人ですね!」


 今は手の追っ手から振り切り、【ベルゼブブ】を解除してクナイも地面に下りている。

 ギロスの方は…………




「うぇぇっ………」




 吐きたくても吐けないような気分になっていた。原因は、リリィが飛んで手を避ける時にギロスは空中で振り回されたからだ。

 ジェットコースターでは味わえないような動きをしていたから気分が少し悪くなっているのだ。


「あと2人だけだから頑張りなさいよ」

「うぇぇっ……、わ、わかっているわぃ……」

「あ、11人になりました!」


 たった今、11人になったようだ。


「しかし、予選で【ベルゼブブ】を使うとは思わなかったな……」

「確か、3分ぐらいは飛んでいたから残りは26、27分ですね?」

「ああ、本選では上手く使わないとスキル無しでクリアしなければならなくなるからね」


 話している内に、また手が上空から現れた。


「ったく、まだ終わらないのね……」

「そうですね〜……」

「まだ気持ち悪いのに、吐きたくても吐けねぇ……」


 このゲームは嘔吐は出来ないようになってあるから、気分が悪くても吐けないのだ。時間が解決してくれるが、今は手に追い掛けられているからゆっくり休めないのだ。


「ギロス!早く走らないと捕まりますよ!?」

「うっ、キツイ……もう駄目だ……」


 ギロスは少しずつスピードが落ちていっている。スタミナが切れている状態に似ていた。


「すまねぇ……、お前らだけでも……」

「諦めんな!あと一人なんだよ!!」

「そうですよ!!」


 ギロスは諦めて自分が掴まって二人だけでも……と足を止めてしまった。


 迫ってくる手がギロスを捕まえようとするが…………










「………あれ?」


 ギロスは目をつぶって反射的に体を庇う体勢になったが、いつまでも何も起こらないと感じて目を開けてみたら……………………、目の前には掴もうとする途中で止まっている手があった。

 つまり…………



『終了です!!さっき、最後の人が退場し、残った10人が本選に進むことになりました!!」



 と、ミサのアナウンスが響き渡っていた。ギロスが捕まる前に、最後の退場者が出たため、ギロスは助かったのだ…………


「い、生き残ったのか……」


 ギロスは生き残ったことに安堵し、地面に座り込んだ。

 だが、ギロスはゲームでは生き残ったが、その後に地獄を見ることになった。






「……………ギロス?」

「ひぃ!?」






 後ろから冷たい声でギロスの肩をギリギリと音をたてて掴んでいる人物がいた。


「り、リリィ?」


 そう、掴んでいたのはリリィだった。


「諦めるなと言ったよねぇ?」

「は、はい!!」

「なのに、ギロスは何をしたぁ?」

「あ、足を止めていました!!」


 さっきまでの気分が悪かったはずだったが、リリィからの気配がそれさえも忘れさせていた。


「不意を打って捕まってしまったなら仕方がないが……、今のは駄目だよぉ?」

「す、すいません!」

「この運営イベントが終わってからお仕置きね…………?」

「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「あわあわ……」




 ひたすら謝り続けるギロス、冷たい眼差しでギロスを見るリリィ、どうすればいいかわからなくて慌てるクナイ。

 こんな三人だったが、予選通過に成功したのだった…………





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