48.ゲームの内容と関係なくねぇ?
鷹野はお風呂から出て、久しぶりにwiwnを見ていた。
見てみると、来週の日曜日にまた運営イベントが始まると宣伝があった。
早過ぎない!?この前のイベントから一週間半しか経ってないんじゃ…………?
そう思い、詳しい内容を見たら、場所は第2の街、【ミディアの街】でやるようだ。
前のイベントと同じ場所でやるんだな。なら、攻略進行とは関係ない内容で勝負か?
鷹野は生産関係の勝負と推測していたが…………、違った。勝負内容はこう書かれていた。
『逃走者』
と。まさかのゲームに関係ない内容であるテレビで有名なバラエティの『逃走者』だった…………
「なんでだよ!!?」
夜遅く、大きな声でツッコミを入れてしまったが、それは仕方がないと思う…………よな?
次の日の朝、三人はホームに集まっていた。
「集まってもらったんだが、wiwnは見たか?」
「あ、はい……」
「まさか、『逃走者』とは思わなかったぜ」
やはり、クナイとギロスもこのゲームの運営イベントで『逃走者』をやるとは思わなかったようだ。
「場所はこの前と同じだからほぼ全員が参加出来る状態だよね」
「ああ、武力の戦いでもないから、生産職の人も参加出来るな」
「もしかして、このイベントは生産職も参加出来るようにするために『逃走者』にしたんじゃないのか?」
「なら生産関係の勝負でも良かったはずだよ。なら、なんでこのゲームに関係ない『逃走者』なの?」
運営の思案がイマイチ掴みきれないリリィ達。ふと、クナイがそんなことを言ってきた。
「まさかと思いますが、運営の人がテレビで有名な『逃走者』をやってみたいから企画したとか…………?」
「……ふ、はははっ!まさか、そんなわけないだろ!!」
「そんな理由で企画を建てるわけないでしょ!」
ギロスは笑い飛ばし、リリィはそんな理由はありえないと言う。
「そうかなぁ…?今、テレビで有名ですし、ゲームの中でも出来ることだからやることにしたんじゃないですか……?」
「……ま、まさか、」
「そんなわけないよね……?」
「「「……………」」」
一旦、皆は黙ってしまったが、理由はわからないままだった。
「ま、まぁ、そんなことを考えても仕方がねぇな!で、出るのか?」
「そうね、タイトルだけで内容はまだ出てないけど、タイトルで大体はわかっちゃうよね……」
「だな……。確か、テレビでは黒服の男から逃げる奴だったはず。さらに何か指令が出て黒服が増えたり減ったりするよな?」
「テレビではそうですね。見る分には面白いかもしれませんが、やる方はちょっとキツイかもしれませんね」
「ここはゲームの中だから黒服が魔法を使ってきたり、飛んできたりするのも想像できるね……」
「うわぁ、そうだったら逃げ切れないだろ……」
「まぁ、内容は後日に発表するからそれまでは待ちかな?」
「ですね。おそらく、生産職との差をなくすために、何か制限がかかってしまうかもね〜」
「あー、その可能性もあるな」
宣伝でも、生産を中心にしている人も参加して楽しめる!と書かれていたから、そう推測したのだ。
この『逃走者』はテレビで有名だからルールや内容は想像出来るが、ここは現実と違って、ゲームの中。つまり、魔法があり、身体能力も高いから、まるっきりテレビと同じと考えない方がいいとリリィは思う。
「『魔妖伝記』の全員で参加するで構わないよね?」
「そうだな、面白そうだしな!」
「私もテレビを見て、一度やってみたいと思ったですよ〜」
「よし、決まりだね!狙うなら三人の誰かが優勝すること!!」
三人とも参加することに決めた。まだ内容は発表されてないが、面白そうなイベントを逃すリリィ達ではない。
運営イベントの内容が発表されるまで、個々は自由に行動することに。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「と言っても攻略はまだしなくてもいいし……」
自覚していることだが、リリィの攻略進行は早過ぎるとも言えるのだ。だから、リリィは自重して、行ったことがあるフィールドで暇を潰すことにした。リリィは他のPTが【ウィータの街】に来るまで、まだ未踏地には行かないようにしている。
ということで、リリィは採掘場がある【鉄竜の洞窟】に向かっている。
「うーん、あのゴーレムでも探すか?」
リリィが言うゴーレムとは、この前に出会った魔法を吸収してしまうゴーレムのことだ。この前は一回しか出会えてなかったからユニークだと思ったが、違うようだ。
理由は、ユニークはソロではないと出会えないようだ。常に一対一になるように現れるらしい。
三人の時に出てきたからユニークじゃないのはわかったけど、遭遇率が低すぎない?まるで、色違いのポ○モンのようじゃないか………
リリィは目的のモンスターを探しているうちに、他のモンスターが出てきているが、相手になってない。【黒太刀】や【闇の槍】で近付かせる前に倒しまくっているからだ。
「本当に、なかなか会えないわね……」
ゴーレムを探し始めて、一時間経ったが、まだゴーレムに会う気配はない。
一時間も回れば一回は出会いそうなんだが……?もしかして、出現条件があるとか?
出現条件。何らかの条件を満たないと出て来ないこと。
リリィはその可能性があると考え、三人で来た時のことを思い返していた。
もし三人で【鉄竜の洞窟】に入るだったらあの二人を呼ばなければならないな……、他に何かがあるならやれることだけ試してみるか?
思い付いたのはこれらだった。
一つ目、モンスターを倒した数の基準を超えた場合。
二つ目、この前のように出会うまでの時間、三時間も歩き回る。
三つ目、沢山の数の鉱石を採掘すること。
その中で可能性が高そうなのは、採掘をすることだった。
ただ鉱石とゴーレムの繋がりがありそうだなーと、そう思ったからだ。
「駄目だったら他の案を試してみるか」
時間はいっぱいあるので、試していくことにした。まず、鉱石を掘りまくることにした。もし、違っても沢山の鉱石が手に入るのだから、問題はない。
というわけで、手当たり次第に掘るか!!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ガンガンと掘り続けていると、この前みたいに足音が聞こえてきた。
ビンゴか!!
どうやら、出現条件が合っていたようだ。さっきまで掘り出した〈不純物の鉱石〉は50個当たりを超えたとこだ。このゴーレムは鉱石を採りすぎると、怒って出てくるゴーレムの設定みたいだ。
鉱石を守る守護のゴーレムってとこか?ならこの強さは他と違うのも納得だな。
「キガァァァァァ!!」
「おっと、」
もう近くまで来ていたようだ。リリィはとりあえず、剣を構えた。
「あ、まず魔法を吸収させてから倒した方がいいな?」
まだ確証はないが、この前の戦いでは、闇と水の魔法を吸収したらゴーレムから〈魔闇玉〉、〈魔水玉〉とドロップ品を落としてきたのだ。だから、魔法を吸収させてから倒すことに。
「もし、闇魔法に闇魔法と連続で吸収させたら……?」
〈魔闇玉〉が二つ出るか、別のが出るか?…………よし、試すか。
「【闇の槍】!」
ゴーレムに【闇の槍】が向かうが、前と同じように吸収される。
「続けて……、【闇の槍】!!」
もう一回、【闇の槍】を吸収させる。ゴーレムは魔法を吸収すると、一時的に動きが止まるので、すんなりと胸にある玉にまた吸収させることが出来た。
「よし、準備完了…………」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
リリィは弱点である胸にある玉を狙い続けて、ゴーレムを倒した。期待のドロップ品は、これだった。
魔闇玉×1
だけだった。おそらく、同じ属性の攻撃を何回かしてもドロップ品は一個ずつになる設定ようだ。リリィは期待しただけ、この結果は残念だった。
このドロップ品は結構、レアだが、ゴーレムが出てくるにはまた沢山掘り続けないと駄目だし、魔法は闇しか持ってないからゴーレムを相手し続けても、ドロップ品は一個ずつになる。
「はぁっ……」
それはあまりにも、効率が悪いので、リリィはもうゴーレムを探すのを止めて、街に戻ったのであった…………
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