45.水の城と採掘場
はい、どうぞ!
ホームを買い、ギルド『魔妖伝記』を作ったリリィ達は三人で水が流れ出ているお城に向かった。
「ねぇ、ギロス。貴方はβテスタだったよね?あのお城、何かあるの?」
「確か、あのお城は、建造物であって、王家がいるわけでもなかった。中身は……まぁ、行って見た方がいいだろう。説明してもなんだそりゃ?と思うだけだしな」
「ふむ?何かあると言っているのね。まぁ、教えてもらうより、見た方が面白いしね」
「どんなのがあるのかな〜。楽しみだな〜」
リリィは外面では、落ち着いているが、内面では、結構ワクワクしているのだ。クナイも何があるか、想像しつつ、楽しみにしていた。
少し歩いたら、水が流れ出てくるお城に着いた。
「思ったより大きいな?」
「ああ、行ける場所は一つしかないがな」
「えっ、どういうことなんですか?」
行ける場所が一つだけ?他の場所は何かをクリアしないと入れないか、入るために、何かが必要とか……?
リリィは推測をしてみるが、まず、中に入ってみないとわからないと言うことで、考えるのを止めた。
「着いたぞ。入口はここだけだ」
「そうなの?窓のようなとこからでも入れそうけど?」
高いが、【飛行】を使えば入れそうな窓がいくつかあった。
「まぁ、【飛行】があれば窓から行けそうだが、意味はないぞ」
「むっ?どういう意味なんだい?」
「そりゃあな……、入ればわかるさ」
ギロスは詳しい説明もせずに、城の中へ入っていった。リリィとクナイも何も言わずに、ギロスの後ろについていった。
「「わぁっ!!」」
リリィとクナイは驚きで目を開き、目の前をあるものを見ていた。
「やはり、驚くよな」
「え、ええ……」
「すごぉい……」
城の中には、蒼くてただ一つだけの水球が浮いていて、数十メートル以上はあるような大きさだった。あの水球が滝のように下に水を落とし、下には水しかなかった。
その水が、街中に流れているようだ。
「なるほど、窓から入っても意味はないということ、わかったわ」
「だろ?」
外見は、城だが、中はただ大きな一つだけの部屋でしかなかったのだ。何処から入っても、ここの部屋に行くだけで【飛行】する意味はないのだ。
「ん、あの水球は何処から水を補給しているの?」
「いや、それはわからないが、その水球は、ずっと水を落とし続けて、絶対に無くならないし、小さくならないんだ」
「へぇ、そこはファンタジーだからと納得しろと言うしかないのね」
「まぁ、ここはゲームだし、難しく考えなくてもいいんじゃねぇ?」
ふむ、難しく考えなければいいか。しかし、面白い街だな。ここでのイベントはないのか?
「ここでのイベントは何も起こらないの?」
「それはわからん。βテスタでは何も起こらなかったしな」
「掲示板ではそんなイベントは書かれてなかったです」
「なら、イベント発動条件があるのかな?こんな目立つものがあって、それに関係するイベントがないなんて、不自然よ?」
「確かに、そうだな。βテスタの時は、第3の街の周りで採掘場が見つかったからそこに集中したしな」
「それで、ここの城に関することは詳しく調べなかったのですか?」
「詳しくといえないが、調べた人もいた。だが、イベントは起きず、観光目的地というイメージとなったな」
ここの城の中や周りを調べたが、行ける場所も限られているし、何も起こらなかったから、多くの人は観光目的地として作られただけなのか?と推測したのだ。
「そうなんだ。もしイベントがあったら面白そうだったのにね〜」
「そうね、今も何か起こらないし。残念ながら、後は情報を集めるしかないから、今日はここまでかな?」
「そうだな。だったら、採掘場に行くか?」
「えーと、採掘場はツルハシとか必要じゃない?」
「必要だな」
「なら、買いに行かないとね。雑貨屋なら売っているの?」
「そうだ。雑貨屋でツルハシをいくつか買って、採掘場に行くか?」
「行く!せっかく鍛治場を追加したんだから、使わないとね!」
ということで、先に雑貨屋へ行くことに。
「もし、良かったら私の槍を作ってくれるか?お金なら払うから」
「あ、私も、お願いしたいです!!」
ギロスとクナイが新しい武器が欲しいと思い、リリィに作ってもらえないか、頼んでみる。
「そうね、【鍛治】のレベルはまだ低いけど、いいのが出来たら無料であげてもいいわよ。ただ、材料を手に入れるのを手伝ってね?」
「了解した!」
「いいんですか!?私も掘るのを手伝います!!」
「よし、決まりね」
三人は雑貨屋でツルハシを買って、採掘場があるフィールドに向かった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ここは【鉄竜の洞窟】。第3の街の周りで発掘場があると言われるフィールド。
「鉄竜って、ここはドラゴンが出てくるの?」
「ああ、中ボスが鉄竜なんだ。まぁ、ドラゴンと言うより、ドラゴンもどきだな」
「戦ったことがあるのですか?」
「ああ、鉄みたいに固いトカゲみたいな奴だった。鉄の通りに物理には強いが、火に弱い。スピードはあまりないが、馬鹿げた攻撃力を持っている」
「なるほど、盾持ちの前衛には、嫌な相手ね」
リリィは中ボスについての情報を聞いているが、今は採掘のために来ているから、中ボスに挑むつもりはない。
「採掘場って、どうやってわかるの?」
「採掘場はな………おっ、あそこを見てみろよ」
「むぅっ?」
ギロスが指を指している場所には、小さく輝くような岩があった。
「もしかして、あれが採掘場?」
「ああ、採掘している時にモンスターが襲ってくることがあるから気をつけろよ?」
「わかりました!一人が採掘して他は周りを警戒するのですね!」
「一人で採掘はきつそうね……」
リリィはそう言いながらツルハシを準備する。
ツルハシを小さく輝く岩にたたき付けると、アイテムが出て来た。
不純物の鉱石×3
アイテムが出ると、岩から輝きが消えた。つまり、輝いている時にツルハシを使えば、アイテムを手に入り、輝きがなくなったらアイテムがなくなったということだ。
「今は1回だけだったが、たまに2、3回続けて手に入ることもある」
「なるほど。採掘は簡単なのね」
「そうですね〜」
「いや、ほとんどの採掘場は危険は場所ばかりに設置されているから採掘をやるのは簡単だが、行くのが大変なのさ」
「へー、ここはまだ最初の方に近いから簡単だけど、その先は簡単にいかないと言うことね」
【鉄竜の洞窟】はそれほどに難易度はそれほどに高くない。だから強者である三人は、モンスターとの戦いでは苦戦せずに進んで行った。
出会ったモンスターは大きな蝙蝠の【ジャイアントバット】、鉄の身体なのに素早いバッタの【スチールバッター】、岩の身体で出来た大きな熊の【ガロットグリズ】など…………
「よし、沢山手に入ったし、ホームに帰るか?」
「もう充分、手に入ったからいいわよ」
「はい!スキルレベルも上がりました〜」
目的の物が沢山、手に入ったからそろそろ帰ることにした。と思ったら、後ろから足音が聞こえた。
「むっ、モンスターか?」
「それしかないでしょ?プレイヤーはまだクリアしてないでしょう?」
「もしかしたら、私達が採掘している内に、誰かがクリアしたかもよ〜?」
様々な推測が出ているが、プレイヤーならいいが、モンスターだったら叩き潰すだけだ。
「足音は一つだけだからモンスターだな」
「このゲームは足音まで細かく再現されているのも凄いですね〜」
「今更、何を言っているのよ?このゲームは凄いし、面白いから私達はやっているでしょ?」
「確かに、そうですね」
「おい、そろそろここに来るぞ!」
ギロスは警戒を高めてここにくるモンスターを迎え撃つようにハルバードを構える。
「ギガァァァァァァ!!」
「なっ!?ゴーレムだと!?」
敵は大きさが3メートルはあるゴーレムだった。
「え、珍しいの?」
「ああ、ここで出て来たという情報はなかった。新しく追加されたモンスターかもな」
「ふーん、それは倒してみればわかることでしょ!!【闇の槍】!!」
リリィは先手必勝というように、魔法を発動する。
ゴーレムに魔法が向かうが…………
「えっ、効かないの!?」
ゴーレムに魔法が当たりそうなところで胸にある綺麗な球に吸収された。
「いや、吸収したように見えたが……?」
「ああ、私もそう見えた。魔法を吸収するとなると、魔法では倒せない?」
ギロスとリリィは落ち着いて、ゴーレムを観察していた。ゴーレムは魔法を吸収したらしばらく動かなくなったと思ったら、また動き出した。
「もしかしたら、魔法を受けるとダメージを受けない代わりにしばらく動かなくなるんじゃないの?」
「なら、試してみるか。【ウォーターランス】!」
今度はギロスが水魔法で攻撃してみた。
想像通りに、魔法を吸収してしばらく動かなくなった。
「今の内にです!」
ゴーレムが動きを止めている間にクナイがゴーレムに向かった。クナイは膝の関節に向けて【刺突】を放った。
「キガッ!?」
関節を狙われて、ゴーレムはバランスを崩した。ギロスはハルバードでクナイが狙った足ではない方に【重斬】を放った。
ゴーレムは両足に攻撃を喰らったので膝を地に着いていた。地についてくれたため、ジャンプもせずに胸にある球を狙えるようになった。そこでトドメを刺すのはもちろん、リリィ。
リリィは〈聖母殺しの剣〉で長剣のスキル、【乱舞】を発動した。ゴーレムはやられたままではなく、手をリリィに向けて振り回していたが、【乱舞】でまず手を打ち落とし、丸裸になった胸の球に向けて三連斬と斬り付けた。
「ギガァァァ……」
やはり、胸の球が弱点だったようで、ゴーレムは悲鳴を上げ、消えた。
【乱舞】は、五連斬の攻撃だが、決まった動きではなく、威力はかわらないまま斬る向きを変えられる。
そのおかげで、ゴーレムの手を捌くことが出来たのだ。
「ユニークじゃなくて、新しく追加されたモンスターかもな」
「ふーん、どっちでもいいよ。帰ろう」
リリィ達は出口に向かって歩いていった。
感想と評価を待っています。