36.イベント後のこと
イベント終了後のことです。
「あー、やっと巻いたか!!」
「あぅあぅ……」
リリィとクナイは今、プライベートルームに逃げ込んでいた。
何から?と聞かなくてもわかるように、様々なプレイヤーから逃げていたのだ。
「はぁ、今はまだ午後6時か、落ちるのはまだ早そうね」
「あ、チケットを今、使いませんか?」
「そうだね、どんなレアスキルがあるか見てみたいしね」
「それに武器や防具もね!!」
まず、スキルの種を使って、リリィは14個に増やした。まだ空きがあるけど、アイテムボックスの肥やしにしても仕方がないからすぐに使うことにした。
「えっと、どんなスキルがあるんだろう……?」
魔法は闇しか使えないし、もう【純闇魔法】があるから、却下。武器関係のスキルは大体【武器解放】で使えているからいらない…………
「むぅ、どんなスキルがあれば強くなれるか……」
「そうですね、沢山あって迷いそうですね……私は【隠密】が欲しいけど、スキル屋で買えるし……」
「スキル屋で買えるなら別のスキルにした方がいいわよ」
難しい……、今のままでも十分戦えているし、生産も2つ持っているから増やすのは後でいいし…………。
「決まらないからあとでいいや。えっと、MVPの賞品があったな?」
確認すると、ランダムに選ばれた3つのレアスキルを選べる特典だった。
またスキルかよ……。ええと、【自動回復】、【猛毒無効】…………は?なんでもう一つが【ベルゼブブ】なんだ?
2つのスキルから掛け離れたスキルだったことに興味を持った。
【自動回復】はHPを1分に30回復するスキルで、【猛毒無効】はその名の通りに、〈猛毒〉を無効する。
「うん、この2つはわかる。では【ベルゼブブ】は…………っ!?」
【ベルゼブブ】の内容を見たら、凄い効果で驚いた。効果は……
【ベルゼブブ】
人型のベルゼブブ化が出来るようになる。ベルゼブブ化している間だけ【暴食】、【飛行】、【速度上昇】を得る。
※制限時間30分間。0時にリセットされる。
【暴食】
相手の魔法の攻撃を吸収し、吸収した魔法を一度だけ使える。吸収する際にMP50消費し、使う時はMPを消費しない。(3個までストックできる)
【飛行】と【速度上昇】はそのままの意味になる。【飛行】はスタミナが続く限り飛行可能。【速度上昇】はAGIが30%上昇する。
というものだった…………
「うん、強すぎるわぁ」
飛行していたら、遠距離で攻撃する方法しかない。弓や投擲で攻撃してもAGIが高いから簡単に避けられるだろう。もし魔法を避けられなくても、【暴食】を使えばいいのだ。
待てよ、【ベルゼブブ】を使っている間に他のスキルを使えるのか?これは試してみないとね。
リリィは何を選ぶかはもう決まっていた。もちろん、【ベルゼブブ】を。
「ねぇ、試したいことがあるから私と対人バトルでバトルフィールドに行かない?」
「えっ、スキルを決めたんですか!?」
「うん、面白いの見つけてね」
「うーー、わかりましたよ」
ということで、非観客にしてからバトルフィールドに移った。
「どんなスキルですかぁ?」
「ふふっ、見ればわかるわよ。【ベルゼブブ】!!」
「えっ…………?」
リリィの身体はそのままだが、頭に触覚が生え、薄い羽が生えた。羽にはドクロの模様があるが、見た目はそれほどに悪くはなかった。
「ほぉ、羽が生えたな。うん…?どうやって動かすんだ?」
「ま、まさか……悪魔シリーズのスキル!?」
「え?悪魔シリーズのスキルって?」
悪魔シリーズって、他に【ベルゼブブ】みたいなのがあるの?
「そうですよ!!そのスキルは掲示板では超レアスキルと言われているんですよ!!」
「そうなのか。それじゃ、運が良かったんだな」
「それはどうやって手に入れたんですか!?」
「MVPの特典でランダムに出て来たレアスキルの3つの中にあった。あと、悪魔シリーズって、他にあるの?」
「ランダムで沢山のスキルの中から引き当てるなんて……、そうです。βテスタでは、【ルシファー】が出ていましたし、さらに天使シリーズもありますよ。それらは一つだけの超レアスキルでなかなか手に入らないですよ」
「へぇ、このゲームは面白いスキルもあるんだな」
「はい、様々なスキルがあって、その組み合わせで強くなれるし、たまに天使、悪魔シリーズのスキルみたいなのもありますしね!!」
ということは先に進むほどに面白いスキルを手に入れる可能性が高まるな。
「そろそろ試してみたいがいいか?」
「はい?」
まず、スキルを使えるか確認する。〈血濡れの短剣〉を持ってクナイに向けて【黒太刀】を発動してみる。
「えっ!?」
クナイは急に【黒太刀】が襲ってきて驚いたが、避けることに成功していた。
「な、何をするのですか!?」
「えっ?今の状態でもスキルを使えるか試しただけだけど……?」
「なら、私に向けなくてもいいでしょ!?」
クナイがギャーギャーと騒いでいるが、無視した。
【魔屍のオーラ】、【純闇魔法】、【浮遊術】と試して、全部発動することが出来た。さらにドーラも召喚しておいた。
『え、マスター……?』
と、驚かれたが何故、その格好になっているか説明したら納得してくれた。
『なるほど。面白いスキルを見つけたのですね』
「やっぱり、そう思うよね!あ、ドーラに頼みたいことがあるけどいい?」
『はい。何でも言ってください』
「よし、私に向けて【怨霊の波動】を放ってみて」
『わかりました』
ドーラはリリィが言った通りに、【怨霊の波動】を放った。
リリィは頭の中で【暴食】と浮かべ、手の平を出した。すると、手の平に吸い込まれて、ドーラの魔法を【吸収】した。
「よし、成功だな」
次に、クナイに手の平を向けて、頭の中で【怨霊の波動】と浮かべると発動した。
「またですか!?」
だが、すぐに察知したクナイは避けた。
「ちっ……」
「舌打ち!?なんで私に当てようとするの!?」
「ただ威力はどうなるのか知りたかったの。当たっても減るものじゃないでしょ?」
「減るわよ!!HPがっ!それに痛いのは嫌なの!!」
ぶむ、実際見るが、やっぱりクナイの回避力は一級品だよね……
リリィはクナイに当てようとしたことを反省もせずに、感心していた。
「飛行はあとで練習することにして、次は解除したら、続けて【ベルゼブブ】を使えるのかな?」
一度解除すると、ステータスに表示されている【ベルゼブブ】の横に残り時間が出ていた。
「つまり、残り時間が残っている限り、何回も【ベルゼブブ】を使えるみたいだな」
これで、【飛行】以外の効果の検証は出来た。
「おーい、こっちの検証は終わったけど、クナイの方はどう?」
「む〜、謝らないんですかぁ?」
「なんのこと?」
「酷い!?攻撃してきたことですよぉ……」
「あれ、対決フィールドに移ったから攻撃してもいいかと……」
「言ってませんよ!?」
クナイは涙目で訴えていた。リリィは仕方がないなと、ため息をつく。
「はいはい、撫でてもいいから泣かないの」
「5分を10分にしてくれるなら……」
朝に約束した5分間撫でる権利のことを言っている。活躍もしたし、ご褒美をあげてもいいと思っていたが、クナイは延長を求めてきた。
「むぅ……、仕方がないか。それぐらいならいいぞ」
「なら、許すです!!」
クナイがまた抱き着いてきたからリリィは横に避けた。
案の定、クナイは顔から地面に突っ込んでいた。今はバトルフィールドだから、少しダメージを受けていた。
「なんで避けるんですか!?」
「今はまだバトルフィールドだぞ。検証が終わったならプライベートルームに戻るぞ」
「はぁぃ……」
リリィは最近、ステータスを更新してないなと思い、ステータスを更新してからプライベートルームに戻った。
もちろん、約束は守って戻ってから10分間、抱き着かせてあげた。
本当に、中身が男だとわかっていても抱き着くなんて変な奴だな…………
ステータス
リリィ
種族 座敷童子
HP 690/690
MP 415/415
STR 151→163
DEF 65→78
AGI 210→285
DEX 59→86
INT 171→201
MDF 145→165
VIT 140→180
LUK 9999
ポイント 0
金額 1413800yen
〈スキル〉
浮遊術Lv.42、武器解放Lv.39、ステップLv.42、危険察知Lv.37、魔屍のオーラLv.31、黒太刀Lv.39、製薬術Lv.31、サモンテイムLv.35、純闇魔法Lv.26、鍛治Lv.27、ベルゼブブLv.1
〈称号〉
幸運を司る者、ユニークを倒し者、聖母を殺めし者、蝿の王
〈装備〉
武器 聖母殺しの剣 STR+90 AGI+50 LUK-50%
頭防備 輪廻の髪飾り DEF+20 INT+40 スタミナ補正-50% LUK-50%
体防備 菊花の和服 DEF+15 AGI+20 LUK-50%
腕防備 なし
脚防備 草履 AGI+2
アクセサリー
その一 スライムの指輪 DEF+2
そのニ 疾走の指輪 AGI+2
その三 邪心のロザリオ INT+80 MDF+100 LUK-50%
〈サモンテイム〉
・ドーラ(夢魔の人形) レベル25
また新しい力を手に入れました。この先はどうなるのか、楽しみにしていてくださいね。
〈称号〉に蝿の王を加えました。
【ベルゼブブ】を使った人が得る称号。効果はなし。