35.運営イベントその6
運営イベントの最後です。
リリィはしばらく防御、回避に専念して、スライムの弱点はなんなのか考えていたら、アナウンスが聞こえてきた。
「ほぅ、ロードさんのPTに勝ったのか」
そう、ドーラが『流星群』のフラグを手に入れたというアナウンスだった。
さすがの、ドーラだな。さて、ドーラが頑張ったんだから、こっちもいいとこを見せないとな。
「さぁて、続けようぜ!!」
ハルバードを振り上げ、リリィに向かう。
振り上げたおかげで腹が隙になっているが……
「見え見えの隙なんて、罠だろ?」
リリィは剣で攻撃せずに、石を飛ばしただけにした。
「やはり、引っ掛からないか。よっと」
やはり、隙はわざと見せたものだった。ギロスはリリィに向かうの止めて、石を弾いた。
しかし、なんで石を弾くだけに集中を上げているんだ……?
そう、攻撃してくるのと違って、石を弾くのに、集中が違っていた。まるで、絶対に当たるのが嫌のような……
待てよ、スライムの弱点は…………
「試してみるか……」
リリィはアイテムボックスに入っているだけの石を全て出して飛ばした。
スピードは早いってことはないので、様々な方向から攻撃してみた。
「むっ、死角からも!!」
ギロスはさっきより必死に石を弾いていた。そして、一個だけだが、肩に掠った。
そうすると、1〜2%も減った。
やはり!打撃が弱点か!!
そう、〈スライム狂い〉のデメリットは、打撃に対する被ダメージが1.5倍になるというものだ。
「くっ、ばれたか!?だが、石だけじゃ、そんなに削れないぞ。武器も剣しかないだろ?」
「いや、武器は2つだけじゃないさ。まさかここで役に立つとはね」
リリィは【武器解放】を使い、剣をしまい、代わりの武器を出した。
「あ、鞭だと?」
リリィの手にあるのは鞭だ。しかし、ただの鞭ではない。
「この〈女王様の鞭〉で終わらせてやるわ!!」
……………観客側ではほうけたような顔をしている人がいるだろう。
目の前のギロスも「は?」とほうけたような顔をしていた。
やっぱりこの名前はアレだよな…………
名前はアレだが、この鞭は、自分で作った武器なのだ。しかも、〈怨恨の塊〉を混ぜた鞭。
ということは、呪いの武器がまた増えたのだ。
「これは出来れば使いたくなかったけどね……」
何故、使いたくないのかは、鞭の名前がアレなのだけではない。内容を見ればわかるのだ。
女王様の鞭 STR+35 LUK-50% HP-50%
と、LUKはいつも通りだが、HPも鞭を持っている間だけ、半減してしまうのだ。リリィはDEFも低いから攻撃を何撃か受けるとヤバいのに、HPがさらに減ると悪ければ1、2撃でやられる可能性があるのだ。
だが、そのデメリットの分、効果はいい。
効果1……〈ドレイン〉与えたダメージの半分を回復できる。
効果2……80%確率で〈硬直〉を与える。
という効果が付いている。
「まぁ、名前はアレだが、貴方を倒すにはこれを使うのがいいわね」
「くっ、当たらなければいいだけだ」
やはり、打撃が弱点なのね。当たらなければいいだけだと言っているけど…………
「貴方にこの鞭の動きを予測できるの?【打蛇】!!」
【武器解放】は技に合った武器があれば様々な技を使える。【打蛇】は、【鞭術】の技であり、蛇のような動きでランダムに動くので予測出来ない攻撃できるのだ。
「くっ、読めない!!」
動きが読めないとわかり、大きく回避をした。【打蛇】は、動きが読めないなら、大きく回避しないと、当たってしまうのだ。だが、大きく回避したため、隙が出来た。リリィはその隙を逃がずに次の技を使った。
「【地打弾】!!」
【地打弾】は鞭が地面を弾きながらそれも予測不可能な動きで敵に向かう技。
「なら、ハルバードで弾いてやる!!」
だが、ハルバードには当たらずにギロスの右足に当たった。
「がぁっ!?」
今ので4割は減った。もしDEFが低かったら5割以上は減っていたが、ギロスはDEFを高めにしていたから4割で済んだのだ。
「だけどあと2、3発で終わりね」
「いや、まだだ!!【尖駆】!!」
ロギスは、スキルを使い、【黒太刀】に似たエネルギーの突きが飛んできた。だが、リリィも鞭を振って【黒太刀】を発動し、相殺した。
その隙にギロスはリリィの横まで移動していた。
「私の切り札を見せてやる!!【一点突破】!!」
ギロスが使った【一点突破】は、今残っているスタミナを全て使うことで発動できる。防御を無視し、プレイヤーのSTRで最大値のダメージを与える。
最大値のダメージと言えば、急所に当てたダメージと同等になる。しかも、剣や盾で防御しても、当たったり掠っただけで、最大値のダメージを受けてしまう。
リリィは防御は間に合うが、回避は間に合わない状況だった。だが、リリィは小さな笑みを残してハルバードを受けた。
バァァァァァン!!
リリィの脇腹にハルバードが当たり、5、6メートルは吹き飛ばされ、周りには砂煙が漂った…………
「は、はぁはぁ………」
技を発動したギロスはスタミナを全て消費して、倒れ伏せていた。スタミナを全て消費すると、しばらく動けなくなり、回復に時間がかかるから一対一にしか使えない技だ。
「か、勝った……」
ギロスは、先程の一撃、外れることもなく、リリィに当たったと確実に感じた。だから勝ったと思ったが…………
「まだよ」
いつの間に、リリィは倒れ伏せているギロスの側にいた。
「な、なんで退場してない……?」
「この服のおかげでね」
リリィは和服を摘んで、言う。
「この服は、一度だけHPが0になるのを防いでくれるの。だから今はHP1しか残っていないけどね」
「ははっ……、その服にそんなカラクリがあるとはね……」
ハルバードはリリィの足で踏んで動かせないし、ギロスもまだスタミナは回復してない。最悪の状況で、ギロスは少し笑った。
「私の負けだ。貴女は切り札に耐え、私は動けないしな」
「そう。でも楽しかったわ」
リリィは一言を残して、鞭でトドメを刺した…………
『『百鬼夜行』が『黒騎士隊』のフラグを手に入れ、優勝は『百鬼夜行』に決まりました』
とアナウンスが流れて、『百鬼夜行』が優勝した。これからは表彰会が始まるので、リリィ達はフィールドから退場し、広場に移ると…………
「スゲェよ!」「たった三人だけだったのに!」「強ぇぇぇぇ!!」「最後の戦い、見事だった!!」「クナイも強かったなんて……」「反則レベルだろ……」「今度、パーティを組んでくれ!!」「リリィちゃん、どうして強いの!?」「マイエンジェルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
と、最後のは関係ないとして……、拍手の嵐に見舞われていた。クナイは周りに人が沢山いて、人見知り発動していて、リリィの後ろに隠れていた。ドーラは我が関せずと言うように無表情でリリィにひざまづいていた。リリィは…………
「黙りなさい!!AIのミサが困っているでしょ!」
鞭を地面に打って、リリィは珍しく、もっともなことを言っていた。
リリィの言う通りに、映像ではなく、本体があるミサが広場の立ち台で困っていたのだ。騒いでいた人もマナーがなってなかったことに気付いたのか、ピタッと黙った。
「「「……………」」」
リリィはみんなが黙ったのを確認して、立ち台にいるミサに謝っていた。
「よし、ミサ、騒がしてゴメンね」
『あ、いえ!!ありがとうございます。では、三人共、こっちに来てくれますか?』
「はい、ほら、クナイは後ろにくっついてないで前に歩きなさい。ドーラもついて来る」
三人は広場にある立ち台に上がっていく。
『改めて、表彰会を始めたいと思います。『百鬼夜行』、優勝おめでとうございます』
ここで観客の方から拍手が起こった。
『優勝したPTには、これが送られます。さらに決勝トーナメントに参加した3PTにも賞品が送られますので、確認をお願いいたします』
〈優勝賞品〉
スキルの種×1
スキルチケット×1
武器、防具チケット×1
と、一人ずつに送られた。ドーラは、召喚モンスターなので、代わりにレベルを20も上げてくれた。
ほぉ、チケットということは無料で手に入れることが出来るようだ。
『そのチケットは、普通のスキル屋や武器・防具屋では買えないレアのもあります。だが、一つしか選べないので、ご注意をお願いいたします』
「レアが手に入るんですか!?どんなのしようかな〜?」
「こら、はたしない顔をしないの。ほら皆が見ているわよ?」
「ふぇっ!?」
クナイも今、立ち台にいて皆に見られていることに気付いたのか、またリリィの後ろに隠れていた。
リリィはこれで終わりだと思ったんだが……
『MVPも発表させていただきます。今回のMVPは………………『リリィ』様です!!』
「へっ?」
「「「「おおーーーーー!!」」」」
さらに拍手が大きくなった。悔しがる人、妬む人もたまにいたが、拍手をしてくれる人が多かった。それだけに今回の戦いには、価値があったということだろう。
『リリィ様、おめでとうございます』
「え、あ、ありがとう……」
『また賞品をアイテムボックスに入れておきました。あとで確認をお願いします。では、第一回運営イベントを終わりにさせて頂きます。見に来てくれた方、参加してくれた方、ありがとうございました。次回も楽しみにして下さい………』
まだ止まぬ拍手の中、ミサは消えていき、運営イベントは終幕を下ろした…………
どうですか??
次回はリリィがとんでもないことになります!
次回も楽しみにしてくださいねー。