29.運営イベントその1
はい、リリィの出番です!
運営イベントも始まり、今はAグループの4PTが戦っている。その戦いをさっきまでAIのミサを写していた映像で見ている。
「ほぇー、予選トーナメントは、草原でやるみたいですね」
「もしかしたら、グループでフィールドが変わるかもしれないわよ?」
グループで変わるフィールドだったら観客にとっては面白くなるかもしれないが、参加するプレイヤーにとってはやりにくいフィールドになってしまったら嫌だろう。
例えば、火山フィールド、沼フィールドなどだろう。まぁ、それらはリリィの想像だから、ああいうフィールドが出るかはわからないがな。
「ふむ、今は魔法特化したPTが目立つな?」
「確かに、そうですね。見たところ、前衛が1で後衛が5ですしね」
「ああ、こういった偏ったPTは珍しいが、コンビネーションはいいみたいだな」
「さらに範囲魔法をガンガンと使って敵の陣地に撃ち込んでいますし。あ、1人倒れました」
そう、魔法に特化したPTは後衛4人が攻めて、防衛には前衛と後衛に1人ずつになっているようだ。
「しかし、魔法をガンガン使ってMPが切れないな?」
多分、MP回復促進のようなスキルか、MPが元から高いからガンガンと使っているかのどちらかだろうな。HPとMPは時間をかければ回復出来るが、雀の涙しか回復しない。だが、MP回復促進のスキルがあれば、ないよりマシって程度は回復出来る。
「範囲魔法は発動までタイムラグがあるといえ、範囲外に出ている時に別の魔法使いが唱えていたらなかなか避けられないですしねー」
「私は大丈夫だけど、クナイはその辺、ちゃんと考えている?」
「いえいえ、大丈夫ですよ!ちゃんと対策もありますよ!!」
クナイは自信満々に胸を張る。リリィはそのクナイを見て、大丈夫だろうと判断した。
もしも、クナイがやられても、私1人で潰せばいいだけだしね。でも、期待はしているよ?
少しクナイと話しつつ、映像を見るが、やはり魔法特化したPTが押しているようだ。他のPTはボスを倒しただけはあって、弱いわけではないが、範囲魔法の嵐を防ぐすべはないらしく、やられていっている。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
最終的には魔法特化のPTが勝ち残ったようだ。攻撃していた人は2人はやられたが、最後は魔法での力で押しきって勝った。補足するが、魔法特化のPTのリーダーはとっくにやられて退場していた。何故、リーダーがやられたかわかるのかは、他の人が「リーダーがやられた!仇を取れ!」と言っていたから。
リリィはAグループの戦いを見て…………
論外だな。まさか、他のPTがこんなに弱いとは思わなかったな。
リリィが何故、そう思ったのかは、その戦い方にある。魔法特化のPTもそうだが、他のPTも単純な攻撃ばかりだった。力押しをして勝っただけだし、負けた方も範囲魔法の対策は考えてなかったように見える。さらにスキルの使い方もまだまだのように見え、動きに無駄が多かった。
だから、プレイヤースキルが低いと感じてガッカリしていた。
まぁ、魔法特化のPTは『魔砲員』だったけ?対策しやすいなら勝ち残るのはこっちにしてはやりやすいんだが……
リリィが望んでいるのは、優勝だけではなく、対等な戦いで楽しめる相手が欲しいのだ。
仕方がない。ロードさんに期待するしかないか。
と考えていたら、リリィ達の出番となった。
「あ、私達の番だよー。やはり、私達のPT名は馴れないですよー」
「ふふっ、この名前以外にピッタリな名前はないと断言できるほどの名称よ?」
リリィ、クナイ、ドーラのPTの名称は、『百鬼夜行』である。この名称は、今回限りだが、リリィは気に入っているのだ。
「まぁ、いいですけど……。私は妖怪じゃないよぉ?」
「えっ?クナイはある意味、化け猫にピッタリじゃない?なら、全員が妖怪と言えるじゃない!!」
「なんで、私が化け猫なんですか!?」
「雰囲気が?」
「この前の返しの真似をしないで下さいよ!?」
リリィとクナイの話は終わりと言うように、フィールドに送られた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ふーん、今回は森林フィールドねぇ。隠れやすい場所が多い分、こっちが有利ね。
「【召喚!】」
『マスター』
「ドーラは前に話した通り、防衛ね」
『はい。【霊体分身】』
ドーラは作戦通りに【霊体分身】で分身を2体作り、本体と一緒にフラグを守り、敵は殲滅と命令する。
『『………(コクッ)』』
分身は、話さない。ただ頷くだけ。
「先にこれを飲んでおきなさい」
リリィはドーラに〈オレジポーションLv.8〉を2本渡して飲ませる。この回復薬はHPを80回復する。
このままでも体力は1000は残っているけど、念のためね。
「さて、攻めに行くけど、油断はなしよ。やるには全力でやりなさい」
『了解いたしました』
陣地は砦のような建物がある。砦の屋上にはフラグが立っている。砦といってもそれほど大きくはなく、二階建ての家とは変わらない。中は2階に向かう階段だけ。
ドーラの分身の1人は砦の入口で待機し、本体は分身の1人と一緒に2階で待機。そういう陣形にしておいた。2階の分身に薬を持たせてみた。
薬は自分で持たないで分身に持たせれば、手が塞がることも邪魔にならないで戦うことができる。
「よし、薬を持たせることが出来るみたいだな。ドーラ、HPが少なくなったら飲むように。私達は南みたいだから、クナイは西へ、私は東ね」
「私は西へ行けばいいですね」
『はい、防衛は私達にお任せ下さい』
と確認を終わらせて、リリィとクナイは敵がいる砦に向かった。地図を見たが、自分がわかるのは、自分の位置、砦、敵の砦の場所だけだ。仲間や敵は表示されないようになっている。
「ふむ、砦に真っ直ぐ行けば、途中で敵に会えるかな?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
砦に真っ直ぐ向かったら、直ぐに敵を見つけた。あっちはこっちをまだ見つけてないようだ。
「ん?6人だと?」
そう、目の前にいたのは6人PTのように見えた。
どういうことだ?砦に防衛を残さなかったのか?…………いや、組んだか?
リリィが推測したのは、2PTが組んで3人ずつ手配して6人PTを作ったこと。悪ければ、『百鬼夜行』以外の3PTが組んでいる可能性もある。
「もしかして、前もって私達を潰す作戦に出たか?たかがボスをソロで倒しただけでその歓迎というなら、慈悲はいらないわね…………クククッ」
リリィは笑っていた。少なくとも、知恵を絞ってこっちを潰してきているのだから、少しは楽しくなっていたのだ。
「うーん、さすがに、3PTが組んで1PTを潰すのはやり過ぎじゃねぇ?」
「そうだよな。リリィちゃんが強いからと言ってもなー」
同じPTの2人が文句みたいなことを言ってきた。
「おい、掲示板を見ない口か?」
「んー、掲示板はあんまり見ないな」
「俺もな」
「だったら、リリィちゃんを舐めるなよ。さらに、クナイもだ」
クナイにも注意しろと言われて、2人は驚いていた。
「え、クナイって、他の人からは金魚のフンと呼ばれてなかったか?」
「やはり、知らなかったんだな……」
「ええ、あのクナイでさえも、【激昂のミノタウロス】をソロで倒したのよ?」
「ええっ!?」
「嘘だろ!?」
「その二人のいうとおりだ。討伐時間はロードPTでは36分かかったのに、クナイは42分。ロードPTは6人PTだが、クナイはソロでその討伐時間だぞ」
「比べてみると、その凄さはわかるだろ?」
「確かに……」
「それはねぇ……」
「さらにリリィちゃんは2人PTの時は1人だけで相手していて、クナイは手を出さないで10分以内だぞ!?」
「だから、まともに正面から戦っても勝てないから、組んでんだよ」
「貴方達のリーダーもそれを知っていたから、了承したのよ?」
説明してもらって、納得した2人。
「そうだったんだ……」
「情報不足ですまねぇ……」
始めにズルイと感じていた二人が謝った。
「さて、こっちの戦力は、防衛のを除くなら、6人PTが2グループがあるわ」
「リリィちゃんのPTは3人だけだ」
「3人?」
「そうだ、リリィちゃんの召喚モンスターがいるだろ」
「そういえば、話を聞いたには、ボスクラスの実力を持っていると聞いたが…………」
「ああ、モヒカンPTとの対決を見たか?動画も掲示板に載っていたが」
「ええ…、あれは対決というより、処刑だったわ……」
「リリィちゃんは敵には容赦しないからなぁ……」
「その話は聞きたくなかったよ……」
前の対決を思い出したのか、顔を青くしているのが多数だった。
「それぐらいは覚悟しとけ。それぐらいの化け物だと思え」
「クスクス、それは酷くない?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
6人の誰でもない声を聞き、聞こえた方法に振り向くと、今まで話していた人物がいた。
「はろー、呼ばれているような気がしたので出て来ましたよ(笑)」
そこには、木の枝に座って足をブラブラとしているリリィがいた。
「いつの間に!?」
「お前、その金髪に服装は……リリィちゃんだな」
「なんか、何故か、みんなからはリリィちゃんと呼ばれるのか不思議だったけど、掲示板でそう呼んでいたから、そうなったんだねー」
「そのことはいい。だが、何故、俺達の目の前に出て来た?」
「んー?どういう意味かなぁ?」
「先にこっちを見つけたなら、不意打ちが出来ただろ?」
「まぁね、やろうとすれば、出来たかもね」
リリィは変わらずに枝に座ったまま話してくる。
「なら何故出て来た?」
「そうね、知らないままイベントから退場するのは嫌だよね?せっかく参加しているんだから、楽しみたいでしょ?」
「それはわかるが……」
「それに!私だって楽しみたいし♪貴方たちを狩ることをね……………イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「ヒッ…!?」
急にリリィが笑い始めたので、敵のPTの女性が小さく悲鳴をあげていた。
枝から降りたリリィだったが、地面に着かずにフワッと浮いて、後ろに下がって木の影に隠れて姿が見えなくなった。
「くっ!構えろ!!」
さっきまで中心になってリリィと話していた人が指示を出した。
「浮かす能力、自分自身にも使えるのか!?」
「それがあったから、足音も聞こえずに近付かれたみたいだな」
「え、ええ……、私達の中に感知スキルを持っている人はいないよね……」
「ああ、防衛に置いてしまった。フラグが大切だからな」
「おそらく、リリィちゃんは陰から攻撃してくるだろうな」
「そうね、わざわざ隠れたんだから」
敵のPTは警戒を続ける。
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
声が聞こえ、そこに目を向けるが、何もない。
「くそっ!こっちを疲れさせるつもりか?」
「おそらくな。魔法を撃たせてMP切れを狙う戦術か?」
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「聞こえているが、なかなか攻撃してこないな」
と話していたら、後ろから石つぶてがいくつか飛んできた。
「く、タンク(盾持ち)!頼む!」
「はい!」
タンクが石つぶてが飛んでくる方向に行く。その時、6人共が石が飛んできた方向に向いていたけど、それがいけなかった。
「痛っ!?」
悲鳴が聞こえた後ろを振り向くと、後衛である人が倒れていた。さらにリリィも浮いていた。
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「な、なんだと!?」
リリィはすぐさまに後ろへ下がった。
「逃がすか!【ファイアストーム】!」
もう一人の魔法使いがすぐに範囲魔法をリリィに向けて使うが…………
「ダメだよ。それじゃ、遅いよ?」
リリィは注意を飛ばして横にステップで避けた。
「なっ!?」
驚いている隙にまたリリィは森の中へ消える。
「待って、今、空中で【ステップ】を使わなかった?」
「俺も、そう見えた……」
ありえないことを見た衝撃で少しの間、放心していたが、倒れている男に気付き、様子を見ると…………
「体力がもう一割きって、〈猛毒〉に〈鈍重〉だと!?」
体力バーの横には状態異常が2つも付いていた。リリィは今、〈血濡れの短剣〉を使っている。
「早く回復しないと!毒消し薬を持っている!?」
「いや、回復薬しかない!」
「こっちもだ!!」
「くっ、仕方がない回復薬を……」
「止めとけば?」
また声を掛けられて見るとリリィがいた。
「だって今から魔法を放つから♪」
「なぁっ!?」
リリィが【闇の槍】を発動して、敵に向けて投げていた。
今は倒れている人を中心に囲っている。つまり、リリィの戦略によって、一ヶ所に集められたということだ。
「くそっ!避けろぉぉぉ!!」
リーダーのような人が声を発して避けていたが、反応して、避けたのはリーダーと【ステップ】を持っている前衛の男だけだった。
ドガァァァァァァァァァァン!!
避けられた2人は砂煙を被り、転がっていた。が、すぐに立ち上がった。
「なんてな威力だよ……」
前衛の人はリリィの魔法の威力に顎が外れそうだった。
「く、〈猛毒〉にしてわざと退場させなかったな?」
「当たりだよ♪」
今のは、猛毒にしてわざと退場させないで回復させようとする人が大体一ヶ所に集まるように仕掛けたのだ。
とその時にアナウンスが流れた。翻訳すれば、敵が4人が退場したということだ。
「一撃で退場させるなんて、ふざけた威力だな!」
「こんなの勝てるわけがねぇ……」
「あら?そこの男は諦めちゃったの?なんですぐに諦めるのかなー?」
リリィは弱音に呆れていた。
「もう諦めているなら、さっさと退場しな」
リリィは【黒太刀】を2発、前衛の人に向けて放った。
「え?うわぁぁぁっ!?」
迫ってくる黒い刃をなんとかすることも出来ずに退場した。
「これで貴方一人だけよ」
「さっきのは見事な作戦だった……」
「あら?褒めてくれるの?」
「ああ、リリィちゃんは6人を相手するから、罠を嵌めたな。石つぶては囮にして視線を集めた。さらに後ろに忍び寄って、わざと退場させずに回復させるために状態異常に留めて、一ヶ所に集めるように仕向けて、魔法でトドメを刺す。結果は4人も魔法一発で退場されてしまったよ。もう一度言う、見事な作戦だったよ」
「一応、お礼を言うね。では、貴方にも退場してもらうね」
「簡単に退場されないさ!」
敵のリーダーは大剣を構えて、こっちに向かってきた。
「ふむ?これだけなの?」
リリィはあえて、短剣で受け止めた。
「まだだ!【身体強化】!!」
「お、重くなったわね」
だが、リリィはまだ余裕だった。リリィの方がSTRが高いからだ。
「くっ!なんてな力だ!?」
「終わりよ【武器解放】」
リリィは【武器解放】で、〈血濡れの短剣〉をアイテムボックスにしまった。
「なっ!?」
急に短剣が消えたため、力を入れていた剣が空振り、バランスを崩してしまった。リリィはバランスを崩したとこに【武器解放】で〈血濡れの短剣〉の代わりに〈聖母殺しの剣〉を交換し、隙だらけの脇腹に向けて一線した。
「がぁっ!?」
〈聖母殺しの剣〉の威力がさすがに高くて、軽装だったリーダーは一撃で退場した。
「うむ、これで6人目か。まぁ、次はさらに楽しめるといいんだけど……」
リリィはまだ少し残っている光粒を無視して、すぐに近くの砦に向かった……
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