18.猫の忍者
はい、次話です!
じっくりと読んでね♪
夜が近づいて、この辺りは少し暗くなった所で、リリィちゃんは、オークとトレントを惨殺して満足しつつ、【浮遊術】で進んで街に戻ろうとしていた。
「ふぅ、やり過ぎたかな?」
周りにはモンスターが全くいなかった。モンスターを見付け次第に、切り裂いていたからだ。モンスターがポップするまでは時間の差があるため、今はモンスターがいない状態なのだ。
まぁ、帰りは楽だから、いいけど……。
リリィは気にしないと決め、街に戻ろうとすると…………危険察知のスキルが何かを感じ取り、後ろにステップをした!!
後ろにステップしたら、横から何かが飛んできて、木に刺さった。よく見ると、忍者が使う手裏剣のようなものだった。
誰かが私を狙っている?っ、後ろか!!
また危険察知に反応があり、後ろを振り向きながら〈聖母殺しの剣〉を構える。
ガチッ!!
構えた剣に、刀が合わせられた。
「!?止められた!?」
暗くてよく見えなかったが、声を聞くには、女性のようだ。
「貴女は誰なのよ!私をPKするつもり?」
「モンスターが喋った!?」
「「えっ?」」
2人が発した言葉に、2人とも剣を組み合わせたまま、固まっていた……
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「誠に申し訳ございませんでござる……」
襲ってきた女性は地面に土下座していた。
「ねぇ、貴女は間違いなく、PKをするつもりで襲ったわけじゃないよね?」
リリィは優しそうな声で、顔は笑顔だったが、目が笑っていなかった。
「は、はい!!モンスターだと思って、襲っていたのでござる!!」
リリィの目が笑っていないことに気付き、すぐさまに弁解する。
「では、何で私をモンスターと勘違いしたの?」
「遠くて、暗かったから名前は見えなかったのですが、貴女は浮いていたのですよ?さらに、この辺りには他のモンスターがいなかった。だから、貴女はユニークモンスターだと思ったのでござる……」
「えっ、周りにモンスターがいなかったらユニークモンスターが出るの?」
初めて聞いた情報に興味を持った。
「あ、はい。ユニークモンスターが出ると周りにモンスターは出なくなり、ユニークモンスターとの戦いでは一対一になりますでござる」
なるほど、確かに【暴食のオーク】と戦った時も周りにモンスターはいなかったよな。でも、それより…………
「ねぇ、さっきから気になったけど、最後の『ござる』は君の口癖?」
「あ、いえ。これはロールプレイングで付け加えているだけでござる」
「はぁ、すまないけど、気が紛れてしまうから私と話すときは普通に話してくれない?」
「えー、でも、こっちが悪かったので普通に話すね」
「それでいいよ。で、名前は?」
「あ、そうですよね。頭の上に名前があるけど、自己紹介は大切だよね!!」
土下座をしていた女性は、土下座から正座に変わって、自己紹介をし始めた。
「私はクナイと言います。種族は亜人族のワーキャットです。あと15歳で、忍者のようなのを目指しています!!」
元気よいな。ワーキャットの女性……いや、15歳だから少女だな。
身長はリリィより高い。大体は150センチはあると思う。頭にはネコミミがあって尻尾もチョロチョロと動いているようだ。名前はクナイという。
服は忍者服のようなものだったが、仕立屋にあったっけ…?
「私はリリィ。座敷童子をやっているわ。歳は……12歳以上とだけ言っておくわ」
リリィの自己紹介を聞いたとたん、クナイの笑顔が固まった。
「え、えっ、ざ、座敷童子のリリィ?掲示板での……リリィちゃんのことですよね?」
「ん、知っているの?そうだけど?」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
クナイは、正座から土下座に戻って、また謝ってきた。
「あれ、何故、また謝るの?」
リリィはまた謝っていたクナイに困惑していた。
「リリィ……リリィ様だとことを知らずに襲ってしまって私がバカでした!!すいませんでしたぁぁぁ!!許してください!!」
「ち、ちょっと?何故、様付けにしたの?」
クナイの必死な姿に、リリィは若干引いていた。
「だ、だって!痛いのは嫌ですからぁぁぁ!!掲示板で聞いたんですよ!?」
「えっ、何を?」
「味方には優しいが、敵には容赦しない、死に等しい苦しみを与えると聞いたんですぅぅぅ!!」
「あ、ああ……それでか」
「敵に回すなと掲示板に書いてあったけど、襲ってすいませんでしたぁぁぁ!!」
「まぁまぁ、反省しているみたいだから気にしてないけど……」
「ほ、本当ですか!?」
クナイは笑顔で土下座から顔を上げていた。
「それに、私はPKを否定するわけでもないし」
「えっ、PKに怒っていたんじゃ…?」
リリィは首を振って否定する。目を細めて笑顔でただ、一言だけをクナイに言ってやった。
「PKするなら相手を選べ」
その言葉で顔を上げて正座に移行していたクナイだったが、すぐさまに土下座に戻った。
「は、はい!!リリィ様のおっしゃる通りです!!」
クナイはブルブルと震えていた。
「わかってもらえた所で、土下座はやめて立ってくれる?あと、様は止めて普通に呼び捨てでいいわ」
「は、はい!リリィさ………リリィ」
「よし」
また様付けになるところを目で射ると、普通に呼び捨てにしてくれた。
「では、私は街に戻るけど貴女は狩り?」
「あ、待って下さい!お詫びをしてないのに別れるのは嫌です!」
「は?」
「お詫びをするために何かしたいんですよ!!」
つまり、クナイは何かお詫びするためについていきたいということか?
「何をって、何をするの?」
「え、えっとまだ考えてないのですが、とりあえず、PTを組んで狩りを手伝いたいと思いますが!!」
「無理だね」
リリィはきっぱりと言う。
「な、なんで!?」
「次の狩場は第2の街の傍だよ?まだ貴女はボスを倒してないでしょ?」
「うっ………」
「それに、スキルも秘密にしたいし、今はソロで充分だし」
そう言って、街に戻ろうとすると……
「ま、待って!!お願いよ!!スキルのことは皆には言わないし、秘密にするから、PTを組んでぇぇぇぇぇ!!」
「ち、ちょっと!?」
リリィは後ろからクナイに背中を抱き留められていた。120センチの少女に抱き着く15歳の少女、なにこれ?と思うリリィだった。
リリィはその気になれば、ズルズルと引きずっていけるが、涙目の女の子を引きずるまでの鬼ではなかった。
「はぁ、何故、そこまでPTを組みたいの?」
「友達がいないの!!」
「はぁ?」
「私は、現実では引っ篭もりなのよ……」
「………」
リリィは黙ってクナイの話を聞くことにした。
話を聞くには、クナイは引っ篭もりであり、友達がいない。そして、人見知りであり、PTを組みたくても、声をかけられないし、声をかけられても答えられなくて逃げてしまう。だから、今までソロでやってきたという。
「なんで、私と話せているわけ?」
「そういえば……なんででしょうかな?」
「はぁ、もういいわ……」
理由はわからないが、リリィだったら人見知りしないようだ。
「ええと、無理ですか……?」
クナイはシュン、とネコミミを垂れる。
……ふむ、嘘は言ってないみたいだな。仕方がないな……
「条件がある…」
「……!?な、なんですか!?」
「スキルのことは秘密。誰にもばらさないこと。固定PTではなく臨時PTでやる。最後に……私とフレンドになること」
「!!」
まぁ、最後のは条件というより、同情に近いけどな……。まぁ、いいや。フレンドになっても障害はないしな。
「あ、ありがとうございますぅぅぅ!!こっちから送りますので、よろしくお願いします!!」
クナイも喜んでもらっているしな。
【リリィはクナイのフレンド申請を請けました】
「よし、フレンドになってPTを組んだところで……」
「うんうん!」
「ボスを殺しに行くわよ!!」
「うんうん………えっ、ええええええええっ!?」
うん、見事な驚きっぶりだな!
「本気で!?」
「うん、まだ貴女は第2の街に入れないでしょ?」
「それはそうだけど……、まだ今のスキルレベルじゃ勝てないよ!!」
「忘れたの?」
「えっ?」
「私はもうソロで討伐し終わっているわよ」
「あ、そうでした……」
「まぁ、今回も私だけでやるけどね」
「え、どういうこと……?」
あれ?わからないのかな?
「だから、クナイはボスから離れて見学していればいいの。私が討伐すればPTに入っているクナイも一緒に第2の街に行けるようになるわよ」
「え、それは……」
「ズルイと思うと?」
「えっと……はい」
「そこは気にしなくていいのよ。これは私の我が儘だからよ。それにお詫びは第2の街に着いたら返せばいいのよ」
「あ、はい!」
リリィは街に戻るのを止めて、ボスの扉がある方に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さて、ボスの部屋に入ったんだが、感想はある?」
「ボスはあんなにデカイのですか!?」
「やっぱり、その感想だよね……」
コロシアムの真ん中には、斧を持ったミノタウロス、【激昂のミノタウロス】が変わらない姿で立っていた。
「あの…私も手伝ったほうが…」
「いや、いいよ。その服はDEFが低いでしょ?もし当たって死んじゃったら挑んだ意味がなくなるでしょ。だからクナイは、回避だけに専念していなさい」
「はい……」
PTに入っていると言っても、死んでしまったら片方が生き残っても死んだ人は次の街に行けないらしい。
「よし、惨殺よ!!」
リリィはまず、【魔死のオーラ】を発動して、【黒太刀】でミノタウロスのHPを減らすことに。
「一発目!!………1割減った!?」
リリィは驚いていた。たった一発だけでミノタウロスの1本目の体力バーが1割も減っていたのだ。
後ろもほうけた顔で見ているクナイがいた。
「思ったよりすぐに終わりそうね……」
【空中ステップ】で近付いて〈聖母殺しの剣〉で斬りつける。面白いようにグングンとバーが減って行き、残り、最後のバーが2割をきったところで、ミノタウロスから離れた。
「よし、試してようか♪」
リリィは【純闇魔法】の【闇の槍】を発動し、近付いて来るミノタウロスに向かって投げつけた。
ドバァァァァァァァァァン!!
砂煙が漂っていたが、砂煙はすぐに止んだ。
止んで、見えたのは、あっという間に、ミノタウロスの体力バーが真っ白になり、消えていく姿だった…………
『おめでとうございます。リリィ、クナイPTは【激昂のミノタウロス】を討伐いたしました』
というようなアナウンスが聞こえてきた。前と変わらないセリフみたいだ。
『リリィ、クナイPTは、次の街である【ミディアの街】に行けるようになります』
『では、その後もお楽しみください』
と、アナウンスは終わり、扉が出てきた。
「おーい、クナイ?」
「………はっ!?」
「気絶していた…?」
「い、いえ!まさかすぐに倒してしまうなんて…………」
「それより、ここを出るよ?」
「あ、待ってぇぇぇ!!」
これで無事にクナイを第2の街である【ミディアの街】に連れていくことに成功したリリィであった。それがまた掲示板で騒がれることに…………
フレンドが増えたリリィちゃんでした!
感想と評価を楽しみにしています。
あと、友人達にこの小説を紹介してくれると嬉しいです。