~3~
船に揺られること数十分、薄気味悪い霧が立ちこみはじめ、波がいやに静かにゆれ始めた。
「つきましたね。やけに静かで逆に気味悪いです」
「そうだな。ここらへんにいることは間違いないだろう」
「思ってたよりでかいのがいそうね……私が囮になっておびきよせてみるわ」
燐音は狐化し、妖気を放出した。海がうねりはじめ、巨大な渦潮となり、ダイドたちの船を飲み込んだ。ダイドは燐音の背にのり、空中に退避した。
「うわ、船って弁償すんのかな?」
「戦闘による破壊は責任問題にならないからたしか大丈夫よ」
「ならよかった。おーいそろそろ出てくるぞ」
渦潮の中心から衝撃とともに、10Mクラスのタコが出現した。
巨大な8本ある足をうねらせ、零を威嚇する。
大木のように太い吸盤つきの足を零めがけて叩きつけてきた。
電撃を練り、吸盤に打ち込む。白い矢がオオオクトパスの足を焼いた。
大きくのけぞった隙をみて、零は船を動かし、距離をとる。
するとオオオクトパスは口から、黒色の溶解液を吐き出してきた。零は退魔力を放出し、盾をつくったが、すぐに消滅してしまう。すぐに燐音が対応し、瞳を見開き溶解液を一瞬にして蒸発させた。
「あれは今の零では受けきれないわ!なんとかならないときは私にまかせて」
「ありがとうございます!」
零は退魔力を練りこみ、10本のナイフを空中に作り出した。
オオオクトパスに向かい、ナイフを飛ばす。硬い皮膚を突き破り、青い血を流しながら刺さった。
「いまだ!ああああああああああああああああ!!!!」
右手から退魔力を生み出し、左手で電撃を練成する。融合された二つの力は零の手の中で球体となった。右腕を突き出し、一気に力を放出する。球状のエネルギー体から紫色の電撃をまとったビームが放たれた。