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やっとこの章で男女比が2:2になります。おまちかねのハーレムまでいましばらくお付き合いください
傷も癒え、零たちは隣町、アクオスにむかっていた。アクオスはその名の通り水が豊富な町で、海に面している港町でもある。
「移動がてら、少し詠唱魔法と簡易魔法を教えてやろう。退魔力だけでの戦闘には限界があるからな」
「はい」
「まず、小さな雷、炎、水を生む魔法だ。やってみせるから見て覚えろ。これといった呪文はいつようない。退魔力を発動する要領で発動できるはずだ」
ダイドの手の平に小さな電撃と炎、水が浮かんだ。
「こいつに魔力をさらにくわえると、……っほ」
親指ほどしか大きさのなかった自然の力は、柱のように巨大化し、空中に舞った。
「まあ、俺くらいになるとこんぐらいだせるようになる」
「す、すごい」
驚く零と、自慢げなダイドの顔に燐音は少し不服そうにいった。
「契約者なんだからそれぐらいできて当然でしょ!まったく」
「さっそくタネばらしちゃうか。まあ契約者になるとあらゆる力が上昇するんだ。強力なやつとの契約なら尚更な。よっし、やってみろ」
「はい!」
手のひらに力を集中させる。しかし出てきたのはパチパチとはじける小さな静電気だけだった。
「あれ、雷しかでませんね」
「これは簡単だから零くらい退魔力があったら全部だせてもおかしくないんだがな。うーん、魔力あげてみろ」
「はい。だぁっ!」
小さかった静電気はたちまち膨れ上がり、カミナリのように爆発した。ダイドの目の前で。
「うわあ危ねえ!俺を殺す気かっ」
「す、すいませんこんなすごいの出るとは思いませんでした。それにフラフラします」
「たいした魔力もってないのに一気に放出しちゃうからだろ。まあ普通は出力あげる訓練しないと全放出なんてできないんだけどな」
「大丈夫?」
燐音が肩をかしてくれた。華奢な体だが、バランス感覚がいい。とても歩きやすくなった。
「申し訳ないです」
「しかし水と炎はだせないけど電撃なら一級魔術師レベルか。よし、電気系の技を主に使っていこう。何度も魔法をつかってくうちに加減にもなれるし、根本的な魔力もあがってく。タイプがみえてきたな」
「タイプ?」
「俺は燐音を前で戦わせておきながら、強力な詠唱退魔術で敵を叩く、いわば契約魔術師タイプだ。スキも大きいが、威力もすさまじい。俺の契約相手は6尾狐の燐音だから、安心して身をまかせられるしな」
「なるほど。僕はどうなるんですか?」
「零は、魔力による電撃で敵をいたぶりながら、退魔の力でとどめを刺す戦士タイプだ。契約相手がでたらまた話は変わってくるが、とりあえずその方向性で行こう」
「なんか本格的になってきましたね」
「まあな。ゴリゴリ成長していこうではないか。なはは」
「ゴリゴリってなによ。まったくもう」
「燐音はまだ昨日のこと怒ってるのか?」
「怒ってないです!」
「ならいいんだけどね」
「やっぱり怒ってます!!」
「やっぱり。ごめんよ燐音ちゃーん。ちゅっちゅ」
「気持ち悪い、離れて。」
「そんな目でにらまれると俺癖になっちゃう」
燐音の右左ストレートがわき腹を直撃した。