~1~
「さあて、村についたぞ」
そこにはRPGの世界でよくみるような町が広がっていた。村、というよりも小さな町のほうがしっくりくる。商業が盛んで色々なところで商い(あきな)がおこなわれていた。
「すごい活気ですね」
「私ちょっと用事があるからいくね」
「おう、気をつけてな」
「はーい」
燐音はいそいそとどこかにいってしまった。しかし不思議なものだ。どこからどうみても、狐ではなく人間なのだから。姿だけが人間になっているわけではない、生活や考え方まで、すべてが人間と同じようだった。
「よし、まず零の服を買おう。そんな布切れじゃ一発でもくらったら死んじまう」
「でも、僕この世界の通貨を……」
「買ってやるよ。一式そろえてやる」
「ありがとうございます、ほんとに何から何まで」
「いいってことよ。なにせこの世界では人間で退魔師の力をもっているやつは零をのぞいたら5人しかいないんだ。だが、みんな能力はそれはすごいもんがある。この世界にきたとき、零の体も自然と世界と対応したんだろう。だから突然退魔の力を得た。とにかく俺は嬉しいんだ」
「そんな貴重な存在なんですね、僕。でも力の扱いとかわからないし」
「だーかーら、俺が一から鍛えなおしてやるよ。妹守りたいんだろ?」
「はい。お願いします」
零は深く頭を下げた。
「よっしゃ、じゃあ零はここで待っててくれ。俺が適当にそろえてくるから」
そういってデイドは商店街に向かった。1時間ほど経過したあと、デイドがもどってきた。
「まずこいつに着替えろ。特殊な糸で編んである服でな、多少の魔術や妖術なら耐えられるはずだ」
「はい。」
「それと、このグローブをはめろ。零が力を発動したのは右手だよな。なら右手にはめるんだ。これで何倍も制御しやすくなるはずだ。そら、着替えて来い!」
民家の裏側で着替え、デイドのもとに戻った。燐音が用事からもどってきていた。
「うん、とっても似合ってる」
「ああ、俺のセンスはやはりいいようだ」
「ははは。そういえば、燐音さん用事って」
「ああ、零の妹がいないか探知してたのよ。残念ながらここにもあなたの世界の人間の女の子はいなかったわ」
「え、ありがとうございます!すいません、僕がやるべきことなのに」
「私が探知したほうが一瞬で終わるからいいのよ」
「じゃあ、飯にするとしますか。それが終わったら実践積みにいくぞ、零」
僕のためにこんなに一生懸命になってくれている。なんとか役にたたなくては。そう思った。
「がんばります!」