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~2~


「燃え盛る3本の柱よ、槍となりて敵を貫け」

ダイドが生み出した炎の槍に、燐音が狐火を巻き付け、強化する。大きくダイドが腕を振り、ペガサスを追尾した。同時に何十発もの炎の塊を発生させ、ショットガンのように乱打する。

炎の散弾で動きが鈍くなったペガサスに炎槍えんそうが直撃する。しかし、たいしたダメージを受けている様子はない。

「燐音、直接燃やせるか?」

「視線による直射的発熱は威力が低い、聖獣には効かないわ」

「だよなぁ。くそ、スキをつくって大技をあてにいこう」

ペガサスの一撃は非常に重い。高速で移動し、角を使っての突進、カミナリなど、万が一直撃すれば、即死に至る威力である。それに、この開放状態を維持できる時間は短い。短時間で、尚且つ安全に攻撃しなければならなかった。

「零、防御はルルにまかせて、ペガサスに攻撃してくれ! 退魔の力が効くはずだ」

「わかりました!」

ダイドたちとペガサスの攻撃は凄まじい衝撃波を生む。その衝撃波から、船を守らなくてはならない。ルルの両手はいつでも水盾を召喚できるように、準備してあった。

零も指示通り、退魔の力を練り、15本の紫色をした剣を生み出し、ペガサスにむかい、放つ。

これは短時間できめなくてはならない。零にもそのことはわかっていた。出し惜しみなどせず、対魔力の続く限り、剣を創造し、放ち続ける。

零の剣と燐音の散弾によってペガサスは回避に手一杯になっている。この隙に、ダイドが詠唱を始めた。土、水、雷、炎の巨大な球を生み出し、ひとつに練り合わせた。そこに魔力と退魔力を注入する。

ペガサスが出現した魔法陣があった場所に向かって、その球を投げた。何もなかった場所にその球はぶつかり、もとの魔方陣がもう一度出現した。

「零、燐音、あそこにぶちこむぞ!」

しかしダイドの意識が魔方陣に向かっていた一瞬の隙をつかれてしまう。猛攻の間をすり抜け、燐音の懐に入り込んだ。

「くそっ!」

障壁と炎で盾を作るが、聖獣の角はその盾をものともせず、尖ったそれは、燐音を突き刺す。

悲痛の叫びを上げる燐音をよそに、雷鳴を轟かせ、容赦なく燐音にカミナリを突き落とした。ダイドもろとも感電し、空中から地上に落ちていく。

「師匠!」

「燐音お姉さま!」

二人は声を振り絞ったが、返事はなく落ちていった。

もちろん、次に目を付けられたのは飛行船である。

「ルル、かまえて!」

「はい!」

二人が倒せなかった相手を僕たちでどうにかできるわけがない。そんなことはわかっていたが、恐怖に怯える時間さえ、二人には与えられなかった。ペガサスが高速で突進してくる。急いでルルに魔力をおくりこみ、水の龍を作り出させる。うねりうごめく水龍はペガサスを喰らった。水龍めがけて零はほぼ全放出の力で雷を生み出し、打ち込んだ。ルルと零の最大ダメージを与えるコンビネーションである。しかしペガサスは飄々(ひょうひょう)と空に浮かんでいた。

「そ、そんな……」

ひざをつく零とルル。二人の頭上をひどく黒い雷雲が覆った。

死を覚悟したとき、ペガサスの下から紫色の炎の柱が出現する。炎に焼かれペガサスは吹き飛ぶ。

「ちょいと……聖獣をなめすぎてみたいだな」

赤い紋章の外側が紫色に染まり、6尾狐はさらに大きな姿になっていた。

「よくこの時間を守りきった、こっからが反撃だ」

そう笑うダイドの姿はボロボロだった。感電により一瞬気絶して、目を覚ましたあと落下しながら回復呪文をかけた。ダイドの全身を燐音が6尾で包んでくれていたおかげで、大ダメージをくらわずにすんだのだ。瞬時に体勢をたてなおし、燐音の力をさらに解放させる。しかし、ダイドの体を燐音の妖気が逆流し、蝕む。雷撃というより、開放により、ダメージを受けているのだろう。

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃなくても、やるっきゃないだろ」

そういって笑って、空に向かった。体のいたるところから血が噴き出している。長くはもたないだろう。零も魔力消耗で崩れそうな体を奮い立たせ、ペガサスの攻撃に備える。遠距離による雷撃は十分ありえるからだ。

「燐音、今から炎を放出し続けろ! 再生させた魔方陣のもう一度戻し、その後魔方陣を破壊する!」

「わかった、でも無理しないでよ」

「おう、わかってら。いくぞ」

残像を残しながらペガサスが接近してくる。あまりに早すぎで目標を定められない。

「これじゃあたるかわからんな……しょうがない、散弾で動きを封じ込めて――」

「待ってください! これ以上力を放出すると危険です、僕にチャンスをください!」

ルルに残っている力をすべて流し込む。ペガサスを水の檻に閉じ込めた。激しく暴れ回るペガサス。

「あと5秒ももちません! お願いします!」

「よくやった、お前らぁ!!」

ダイドの体からより一層血が噴き出す。しかし口角は上がっていた。

燐音の周りからダムが決壊したかのように、紫色した炎が噴き出した。ペガサスを襲い、魔方陣まで一気に叩き込む。ギチギチと音をたて、封じ込められるペガサス。全身が魔方陣に入りきったあと、そのまま炎で破壊した。


飛行船では大きな歓声があがる。

赤と紫の紋章に覆われていた体は金色のみに戻り、体の大きさも元に戻った。

飛行船に降りて、倒れているダイドを寝室に運び、みんなで回復魔法をかける。傷は塞がったが、顔色が良くならない。すこしたって、ゆっくりと目を開いた。

「おお……飛行船の中か」

かすれた声で、そうつぶやいた。小さな歓声が沸きあがる。

「師匠、やりました、もう安心してください」

「ゆっくり休んでくださいっ」

「いわれなくても……ゆっくり休まして貰う、へへ」

「最後の一撃のとき、ほぼ50%近く開放してたでしょ、まったく。今回奇襲で、強力な魔法具なしだったでしょ。心配したんだからね」

「すまんな燐音、心配かけて」

「す、素直に謝られると調子くるっちゃうなぁ、もう。何か飲みたいものは?」

「酒」

「ダメ」

「ジュースで」

「はい。ちょっと待ってて」

いそいそと機内食売り場に向かっていった。回復さててくれたみんなに軽くお礼をし、ダイドは零にいった。

「いやあ、危なかったよな。魔方陣の残骸残ってなくて、リカバリーできなかったら今頃みんなお陀仏だ」

「あれなんだったんですか。神聖獣っていったい?」

「まあ簡単に言うと精霊の超上位種だな。ほぼ神に近い力をもった霊獣で、神々しい姿としてるから、神聖獣。ペガサスっていう架空の生き物に姿が似てるから、そのままペガサスって呼ぶようになった、この世界を徘徊してる、悪魔みたいなもんさ」

「そんなヤバいやつだったんですね……」

「燐音の全力のがヤバいけどな」

零はゴクリと音をたてつばを飲んだ。想像するのも恐ろしい。

「なにかいいました?」

そういってジュースを差し出す。

「いえ、なにも。お、サンキュー」

「あの勢いだと、2日くらいは気絶するかと思ったけど、全然大丈夫そうね」

「俺も成長してるってことさ!」

ふふふ、と笑いながらダイドのベッドの中にもぐりこむ。

「今日はもう寝るわ、私たち疲れちゃった。二人も疲れたでしょ。お隣どうぞ」

本来は飛行船なのでベッドはないが、特別においてあったふたつを貸してくれていた。

燐音の好意に甘えて、零とルルも眠ることにした。同じベットでまた眠ったが、今度は疲れもあってか、ぐっすりと眠りにつくことができたのだった。


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