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第三者視点の多いこの小説ですが、今回は基本的に主人公、零の視点から動かしていこうと思います。
今僕はルルと二人きりで宿屋にいる。なぜかって?
それは数時間前にさかのぼることになるんだけどね。
僕たちは海で遊んでたんだ。
初めてお酒も口にして、みんなで騒いで遊んで、無礼講で楽しかったよ。この世界の人々といつか別れないといけないと思うと、涙が出てしまう。おっと、話がそれた。
それで、日も沈んできたし、そろそろ片付けようってなって、僕がゴミを拾っていたらね、師匠がこういったんだ。
「今日は宿2人部屋をふたつとっといたんだ」
いつもは大体みんなで同じ部屋で寝泊りしている。なのに突然、今日に限ってそんなことをいいだす。僕は当然聞いたさ、なんでですか?ってね。そしたら師匠は、
「燐音がな、欲しがってしょうがないんだ。俺のビッグなこのマグナム――――痛てててて耳ひっぱらないで」
っていったんだ。燐音さんと師匠は間違いなく付き合ってる。本契約とかいってたから、結婚みたいなもんなのかな。どっちかが契約破棄する前に死んだら両方死ぬとか言ってたし、契約破棄にはお互いの了承が必要ともいってし。むしろ結婚なんかよりよっぽど凄い。だからいいんだ。僕は邪魔なんじゃないかと思ってたし、正直に二人きりになりたいといってくれることは、とても助かる。
でも問題はそこじゃない。
燐音さんと師匠が二人きりになるってことは、当然僕とルルが二人きりになる。ということなんだ。
部屋についたら、零と話がある。って師匠が言い出してね、20時まで僕と師匠、ルルと燐音さんのペアで分かれてたんだ。
わざわざ二人きりになって僕に話しがあるっていったから、大変な用事なのかと思ったんだけどね。
宿についたら、師匠は延々と、女性のエスコートの仕方について語ってくれたよ。
僕はまだ16歳だし異世界だし初めてだし妹に会うまではそんなことできないし、とウダウダいってみたんだけどね、ダメだった。
「そんなじゃ立派な男の子になれないぞ! もとの世界に戻ったときに、成長し男になった零を家族に送り届けないと、この世界の保護者として顔がたちませんぜ零さんよぅ!」
とか言ってた。まあ僕も男の子だし、ね。ルルにまったく興味がないわけではないんだ。
人魚だし100歳だけど、見た目も中身も若いし、優しくて明るい性格で可愛いし。
僕にはもったいないくらいの美少女だよ。彼女ですって家族に紹介したら、多分両親は喜びの失神をするだろうね。でもね。やっぱり僕は妹に会うまで、そういううわついたことはしたらいけないと思うんだ。
愛美は安全だって教えてもらったけどね。やっぱり、会うまでは不安じゃないか、お兄ちゃんとしては。もちろん信用してないわけじゃないよ。信頼する師匠の友人だし。でも、やっぱりね。うん、ダメだよ、女の子と遊んでるっていうのは、よくないと思う。
でもルルは仮契約とはいえ、僕のかけがえのないパートナーだし、失礼のないようにしないといけない、とも思う。いったい僕はどうすればいいんだろう。
師匠のエロトークは白熱してたんだけど、約束の20時前になってしまってね。
「おっと、もうこんな時間か。それじゃあ熱い夜を過ごせよ、兄弟!」
なんていいながら、部屋を出て行ってしまったよ。熱い夜を過ごすのは師匠たちなのに。
あ、まずい、一瞬いかがわしい妄想をしてしまった。燐音さんにバレたら燃やされてしまう!
そのときガチャっと、ゆっくり、ドアが開いてね。ルルが入ってきたんだよ。
まるで新婚初夜のような、少女の瞳で入室してきたルルに、僕はいったいどんな言葉をかけていいのかわからなくてね。もう緊張しまくり……。