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その後、燐音のご機嫌は意外とすぐに回復し、4人でビーチバレーを楽しんだ。
魔力、退魔力、妖力の使用を禁止した、秩序あるビーチバレーはとても楽しく、まるでもとの世界に戻ったかのような安息を与えてくれた。
一通り飽きるまでビーチバレーを楽しんだあとは、ダイドを砂の中に埋めたり、海で競争をしたり、スイカ割りなどをした。しかし、スイカはダイドの渾身の一撃によって粉砕してしまい、食べられなかったが。
そんなこんなで、腹がすいたのと、喉が渇いたので、零とルルは買出しに出かけていた。
「すっごく楽しいですねっ」
「うん、とても異世界で命がけで妹にあうために奮闘してる日々を送ってるとは思えないよ。こんなに笑ったの久しぶりだなぁ」
にか、っと表情を明らめ、ルルに送った。
「こんなに楽しそうな零様、初めてみました、ルルも楽しいですっ」
ルルも、とびっきりの笑顔を零にお返しした。その顔があまりに可愛いくて、零は長く直視することが出来なかった。
数分話しながら歩くと、店についた。そこで頼まれていた大量のお酒と、自分たちがのむジュースを一本ずつ、それと適当に食べ物とお菓子を買ってかえった。
海につくとダイドと燐音が寄り添って海を眺めていた。遠慮することなくいつもイチャイチャしている二人だが、零たちがあらわれるまでは二人きりで生活していたのだ。気を使って少し時間を置いてから二人のもとに戻った。
「サンキュ! 零、ルル!」
「ありがとう」
買ってきたものを手渡す。ダイドは酒を受け取ると、一気に飲み干した。
「くぁぁあ、海で飲む酒は最高だなあ、零も飲め飲め」
そういって新しい酒を勧めてきた。燐音もぐびぐびとお酒を進めている。酒をのんでいるだけなのに妖艶に見えるセクシーな燐音に、ルルは見惚れていた。
「いえ、僕は未成年なんで」
「ん、未成年、ってなんだ?」
「20歳になるまで酒は禁止されてるんですよ、僕の世界ではですけど」
「そんなんあるのか、めんどくせー世界だな、こんなにうまいのに。ルルは飲むか?」
「れ、零様が飲まないようなので、ルルも遠慮しときます」
ごくっ、と生唾を飲む音が聞こえた。どうやらルルは本当は飲みたいらしい。
「そっか、となると零とは酒を酌み交わす前にお別れになっちゃうのか、少し寂しいな」
ダイドの寂しそうな遠い目で海を眺めた。零はきゅーっと心を締め付けられた気分になり、考えを改めた。法律は国ごとによって違う。異世界ならなおさらだ。零の飲まない理由はダイドには理解できないだろう。せっかくみんなで飲もうと考えていたに違いない。
「あの、この世界では未成年とかないんですよね?」
ぱあっと明るくなるダイド。心底嬉しそうな表情を見て、零も喜んだ。
「もちろんだ! 郷に入りては郷に従え、だぞ!」
「いただきます!」
「ああ、本当はルルも飲みたかったんです、ルルも飲みますっ!」
「あら、ルルちゃん、そんなに飲みたかったの?」
「とっても、とってもです!」
4人は日が沈むまで飲んで食べて騒いで遊んで語って、日頃の疲れを癒した。
魔法では回復することのない、かけがえのない時間が4人の心を満たしていった。