~2~
燦燦と太陽から降り注ぐ熱光線は、爽やかな波音をより涼しげに演出させる。
広大なプライベートビーチを貸し出してもらった4人は現地で水着を調達し、着替え場に向かった。
――――男子更衣室―――――
「師匠、なんかこの水着小さくありませんかって、うわぁ!!」
零は驚きの声をあげた。初めてみるダイドの裸は凄まじかったからだ。
もともと腕は見えていたので筋肉質であることはわかっていたが、予想の範疇を大幅に超えるその肉体美は、それはそれはすばらしかった。
キュっと引き締まり、余計な脂肪の一切ついていない、戦闘のために鍛え上げられた、戦士の体だ。
傷跡が多いことを想像していたが、魔法ですぐに回復させるためか、そのような爪跡は一切なかった。
「なんだ、突然変な声だして。虫でもいたか?」
「いえ、あまりに師匠の体がしっかりしていたので……」
ダイドは、げぇ、と表情を歪めた。
「なんだ、零は男もいける口か?!」
「いえいえいえいえっ、そういうわけではなくてですね、その、理想的だなぁと思って。やましい意味はももももちろんありません!」
やましいことは本当にないんだが、慌てて噛みまくってしまう自分が不甲斐ない。
「なるほどな。でも零もなかなか良い体してるぜ」
そんなバカな、と思って鏡を見ると、驚愕した。
自分の体をみたのは、もとの世界での風呂場以来だった。
なんと零の腹筋は6つに割れ、胸筋は適度に膨れ上がり、腕も足も引き締まっていた。
もちろんダイドのそれと比較してしまうとテンでダメだが、以前の自分の体からは考えられないほど、屈強な体の男になっていた。
「いつの間にこんなに鍛えられたんだ……」
「あんだけ激しい戦いしてんだ、自然と筋肉もつくよ。俺も筋トレしてるわけじゃなく、自然にこの体になったしな」
零が自分の体に惚れ惚れしていると、ダイドは、にまぁっと笑い、口を開いた。
「それにしてもいいことに気付きましたね、零さん」
「え?」
「俺らの水着がちっちゃいってことは……?」
「……?あっ、女物の水着も――」
「ちっちゃいってことですね! これは期待だな零!!」
――――女子更衣室――――
「燐音おねえ……さま?」
ルルはそう口にせずにはいられなかった。なぜなら燐音がさっきから裸のまま、じろじろとルルの体を舐め回すように見つめてくるからだ。
「あの、さっきからなんでルルの体を睨むんでしょうか?」
耐え切れずに、質問した。少し間を置いて、返事が返ってくる。
「ずるい」
「え?」
「なんでそんなにスタイルがいいのよ!!」
そういうと燐音はルルの背後に瞬時に入り込み、着替えの途中で何も着用していない豊満な胸を鷲掴みにした。
「ふわぁっ、やめてくださいお姉さまっ」
ルルの願いは聞き入れられず、ねっとり、じっくりと胸を揉まれた。
「な ん で こ ん な に 大 き く て 柔 ら か いのがついてるのよっ」
「そ、それは私が人魚だからです、スタイルは種族の特徴のひとつなんです、だから揉むのを、んっ、やめてくださいっ」
「恨めしやー、恨めしやー」
決して燐音の体が貧相なわけではない。スレンダーだし、胸だって充分にある。
しかしルルの体は、ほかの女性の肉体とは一線を画していた。流石、人魚の妖怪である。その種族に恥じない、魅力的で、むっちりと、尚且つ締まってほしいところは締まっている、最高の体だった。
「こんなエッチな体して、零はもう大変ねー」
そう文句をいいながらも、指の動きは加速し、揉みしだきつづける。
「零様にまだ何もしてもらってません、本当です、ぁんっ、やめてくださ……いぃっ」
ようやく満足したのか、燐音は手を放した。
「ふんっ。いいもん、私にはダイドがいるからね! 零より強いしかっこいいんだから」
見事な大人気なさである。つい最近能力者になった、弟子である零と、この世界で人類最強の男を比較。ここまでムキになるというのは、相当、ルルの色気むき出しの体が羨ましかったんだろう。
しかし、ルルは珍しく食って掛かった。
「たしかにダイド師匠は強いしかっこいいですけど、零様も負けてませんよ! なにせ私たち人魚族を救ってくださった勇者様ですからっ」
ルルは顔を赤く染めて声を荒げた。燐音も自分のいったことが、どんなに大人げなかったか気付き、顔を赤らめた。
「そうよね、零は最近この世界にきたばっかなのにすごく強いし、頭もいいし、顔もなかなかいけてる、ごめんなさいねルルちゃん、言い過ぎたわ」
そこまで聞いてルルも焦った。圧倒的妖力を誇る6尾狐に対して、こんなに強気に口答えしてしまった。本当なら殺されてもおかしくない。燐音がその気になればルルは一瞬で灰になる。
普段、あまりに燐音が優しいため、種族の差を忘れてしまった。
「もももも申し訳ございませんでした!」
「ええ、なんで急に謝るのよ、それはこっちのセリフ。突然嫉妬して胸揉んだのも私だし、零とダイドを比較しはじめたのを私だわ」
「大妖である6尾狐の燐音お姉さまに対して、人魚の分際でこのような口の利き方、大変失礼――」
「ストップ!!!」
ルルが謝罪の言葉を告げようとしたとき、燐音は大きく声をあげ、ルルの言葉をさえぎった。
「私たちは仲間なのよ。種族なんて関係ない。そんな他人行儀なこと言ったら、次は許さないんだからね!」
胸を揉んだときと、零とダイドを比較したときのような、冗談じみた言い方でなく、真剣な眼差しでルルを見つめた。
「おねえさまぁぁぁあああ、一生ルルついていきますぅっ!!」
ルルは泣き出し、燐音に抱きついた。燐音はよしよしと頭を撫でる。
ルルの胸が燐音の胸と重なった。大きなルルの胸により、燐音の胸は見えなくなった。その瞬間燐音の優しい表情は一変し、ひくひくと口角を上げた。
「でもやっぱり――」
「ふぇ?」
「このおっぱいはずるいずるいずるいずるいずるいっ」
「お姉さまぁお許しくださいっ!!あぁん揉まないでくださいぃ」