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零たちは海を渡り、次の町のギルドに来ていた。
「おまえさんたち、本当にあの土龍を討伐しちまったのかい?」
受付のハゲたおっさんが、目を見開いてダイドを見つめた。あまり信じていないようだ。
「ああ、この収容袋にはいっているよ。出そうか?」
そういってダイドはちいさな袋を取り出した。オオオクトパスのときもそうだが、ダイドはこのなんでも吸い込む袋に討伐したものを入れて、ギルド本部に送るらしい。死にかけの気絶以上のダメージを与えないと、抵抗されて収容できないので、そのまま武器にすることは不可能だ。
「いや、いいよ! ギルドがぶっこわれちまう。へえー、それにしてもあんたがねえ。名はなんというんだ?」
「ダイドだよ」
受付のおっさんは突然腰を抜かして椅子から飛び落ちた。一人でギャグをやっているような驚き方だ。ルルは少しキモかったのか、零の腕にしがみついた。
「ダ、ダイドというと、あの6尾狐使いの退魔師ダイドっつうことかい?」
「ははは、さすがに土龍討伐っつたらバレるか。その通りだ。俺の隣にいるのが、その6尾狐」
宜しく。と燐音は微笑んだ。
「ひえー、マスタークラス(最上級退魔師)なんて初めて目にかかったよ」
マスタークラス?とルルが燐音に聞いた。その間もハゲの賛美はダイドに送られ続けていた。
「上位種との契約者で、尚且つ最高の戦闘技術と退魔力か魔術を扱える者だけに与えられる称号みたいなものだよ。本来ならバッチがあってつけてるべきらしいんだけど、それつけると目立っちゃってね。あらゆるところで神様とか、救世主扱いされちゃうから……普段はどっかにしまってるわ。それつけてギルドに行けばいくらでも軍資金は与えられるんだけど、ダイドは性に合わないみたいで、ね」
「ほえー、凄い人なんですね、ダイドさんって」
「人間の中じゃほぼ最強だよ。私と契約できるのはダイドくらい」
「退魔師の人間って数えるくらいしかいないんですよね?」
零が聞いた。
「うん。ほとんどは魔術師ね。あとは妖怪と魔族と人間のハーフとかかな」
「あ、そうか、退魔力はなくても魔力を持ってる人はいるのか」
「退魔力は魔族により有効、魔術は魔族により有効。覚えておくと戦闘で有利よ」
「それ初めて聞きました、ありがとうございます」
「まあ、結構些細な差だけどね。でっかい術になればなるほど、与えられるダメージに差が出るの。今の零はそんなに気にしなくていいわ。ルルの攻撃はどっちにも有効だし」
そんなこんなで、手続きが終わったようだ。ダイドが戻ってきた。
「龍燐による短刀、作ってもらえることになったぞ。完成次第、俺のもとに転送するように頼んどいた」
「転送とか、そんな近未来的なことできるんですか?」
「ワープ魔法をかけた袋を渡しておいたんだよ。これにいれると自動的に俺の収容袋に転送される」
「なるほど。今から楽しみです!」
「そいつは良かった。それと、妹さん預かってる仲間から連絡があってな。元気にしてるから、焦らずに来るといい。だそうだ。こっちにきてから連戦続きで疲れたろう。少し休養をとらないか?」
「でも――」
「疲れからくる判断ミスは死を招く。休むのも練習だ」
「わかりました。師匠がそういうのなら」
「よし、決まりだ! というわけで」
ダイドが大きく振り返り、燐音とルルのほうを見た。
「海! 行きますか!!」