~6~
「師匠、燐音さん!」
「お前らよく待機してたな。調子にのって出てきて、殺されちまったらどうしようかと思ってたところだ、偉いぞ」
「すいません、力になれなくて」
「いや、違うんだよ。当初の予定では、頂上にいるのは龍じゃなくて、オーガの長だったんだよ」
「え、じゃあなんで龍と――」
「俺らがついたらオーガが龍に食われててさ、こっちに気付いたらしく、襲い掛かってきた。本当はオーガで零たちに経験積ませてやろうとおもってたんだが、すまんね」
「そうだったんですか、でも、本気の師匠を見れたほうが収穫です」
「燐音お姉さま、素敵でした! 命がけで主人を守る姿、かっこいいですっ」
「ふふ、ルルはまだマネしちゃだめよ、死に急ぐことになるわ。無理だと思ったら零と一緒に逃げなさい」
「はーいっ」
ところで、と、ダイドは言った。真剣な態度から、いつものニヤニヤとした表情に戻っていた。
「零、こいつの龍燐を使って作る武器、欲しくないか?」
「そんなこと出来るんですか? ぜひ欲しいです!」
「武器の加工には金が大量に必要なんだがな。こいつはきっとお尋ね者の土龍だ。どっかに引き渡せば大量の金が手に入る」
零は龍に目を向けた。遠くから見ててもその巨体には圧倒されたが、間近で見ると、本当にデカい。龍が倒れたときに巻き起きた土埃がまだ空を舞っている。
こんな恐ろしいものを倒してしまったダイドと燐音の凄さを、再認識した。
「ありがとうございます。燐音さん怪我は大丈夫ですか?」
「外傷はダイドが治してくれたから大丈夫よ。疲労と妖力切れによる精神的な疲れのが大きいけど、なれっこよ」
そういって燐音は笑った。こんな激しい戦闘が慣れっこだなんて、一体どういう生活を送っていたのだろう。
「まあ、私が本気を出せば、あんな龍瞬殺なんだけどね」
「ええ!? お姉さま本気出してなかったんですか?」
「燐音は俺と契約するために力を制御してるんだ。本物の妖狐だぞ、下級龍なんぞ赤子同然だよ」
「まあ、100%の力出したらダイドが死んじゃうから出来ないけどね」
すんません、とダイドは手を後頭部にあて、わざとらしく謝った。