~5~
零とルルは山頂付近で歩みを止めていた。
決してさぼっているわけではない。
進めなかったのだ。
なぜなら山頂では、龍とダイドたちが戦っていたからである。
山頂といっても尖っているわけではなく、広い荒野のようになっている。
縦横無尽に駆け回り、激しい攻防を繰り広げる。
あの中に入ったら、絶対に足手まといだ。そう直感した。
「ルル、よーく見ておこう、あれが僕たちのたどり着かないと行けないレベルの動きと魔力だ」
「は、はい」
「燐音ぇえ!!」
空中戦を繰り広げるダイドと燐音。
背に乗ったダイドが名を叫ぶと、燐音は自分の周りに、狐火が6つ出現させた。雄々しく燃え盛る高密度の火球は燐音の咆哮とともに、高速で移動する龍を追尾した。岩のようにゴツゴツした龍燐を、燐音の狐火が砕く。ごおお、と鈍い龍のうめき声が聞こえた。
龍も負けじと、口から巨大な岩の棘を何十発も吐き出す。ダイドは急いで詠唱を始めた。燐音も足元の火輪を焚き付け、さらに加速し、距離をなるべく稼ごうとした。
「この地に住まう大地の精霊、捧げるは25の花、我が声を聞き、応えたまえ!」
詠唱終了とともに、25人の精霊を出現した。巨大な棘にそれぞれ一度ずつ防御壁を生み出し、相殺する。しかし龍の猛攻は終わらない。鋭いカギ爪でえぐるように襲ってくる。間一髪でそれをよける。
「ダメだ、ここままじゃ防戦一方になっちまう! 燐音、何秒もたせられる?」
「ダイドを守りながらだと、多分500秒が限界!」
「上等! じゃ、頼んだぜ」
「うん、まかせて!」
ダイドは燐音の背を飛び降り、地面に着地する。すかさず龍はダイドを狙うが、燐音の生み出した炎に全身を包まれ、身を翻す。ダイドは目をつむり、詠唱を始めた。全身が青色に発光し、強く輝いている。
龍がダイドを爪でえぐりにかかるが、体に狐火をまとい、燐音がたいあたりをして防いだ。燐音の20倍(目測40M)はあるであろう巨体が、吹き飛ぶ。ダイドから龍を離すように、燐音の猛攻は続く。龍を追って、狐火の火球をぶつける。大きく悲鳴をあげる龍。尚も火球を生み出し続け、龍の岩を焼いた。さらに狐火を火炎放射のように全身から発生させ、龍の全身を熱した。
しかし、狐火を放出し続けたものの、翼で風をおこされ、吹き消されてしまう。
一瞬の隙をつき龍は再び巨大な岩の棘を吐き出した。超高速で避ける燐音。ダイドに当たるであろう起動の棘も焼き消したが、一本消しきれなかった。急いでダイドの前に入り込み、体で受け止める。
燐音の悲鳴が空にこだまする。
しかし、瞳は龍を捕らえたままだ。急接近する龍めがけて、巨大なひとつの狐火を練り上げ、ぶつけた。だが、龍は体を焼きながらも失速せずむかってきた。
捨て身の体当たりだ。質量からいって、燐音が受けきれるわけがない。
しかし、ダイドの詠唱はまだ続いている。燐音は最後の力を振り絞り、もう一度全身に火を纏い、龍に激突した。大きな悲鳴を上げ、一瞬失速したが、全身で突っ込んでくる龍の速度はそこまで変わらない。
ダイドまであと10Mない、大きな口がダイドを噛み千切ろうとしたそのとき、詠唱が終わった。天に両腕を掲げ、振り下ろす。空から超巨大な剣が出現し、真上から龍の体を突き刺した。
龍は岩肌から大量の血を流し、山に剣で串刺しになった。やがて召喚された100Mはある剣は消滅し、龍は気を失った。
すぐに燐音のもとに走るダイド。燐音は狐の姿のまま、倒れていた。
「燐音、大丈夫か?!」
「大丈夫よ……ダイドは怪我してない?」
「ああ、おかげさまでな。よくやったぞ!今すぐ治してやる」
駆け寄りながら発動しチャージしていた回復魔法の暖かい光が、燐音の体を包み込んだ。