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「どっちにしろあのバカダコ倒さなきゃ進めなかったんだがな」
ダイドは高速で移動する船に乗りながらつぶやいた。
「まあ、私は零が『やります!』っていうこと信じてたけどね」
「もちろん俺も俺も!」
「零様、勇敢ですっ、素敵ですっ」
「ははは……」
よくほめてくれる二人だけではなく、崇拝されているといっても過言ではない一人が増え、ますます照れ笑いの増える零であった。
少し進むと、ルルの人魚一族が手を振って見送ってくれた。
ルルは少し寂しそうに手を振って、笑顔を向けていた。瞳にはうっすらと涙が浮かんでいるようにも、見えた。
「ルル、僕と契約してくれてありがとう。これでまた一歩妹に近づいたよ」
「妹?」
「そうか、いってなかったね。僕はこの世界の住人じゃないんだ。異世界から、妹を助けるためにやってきたんだ」
「そうだったんですか……」
「もう妹の場所はわかってる、ダイドさんの仲間が見つけてくれたからね」
「精一杯恩返しできるよう、がんばります!」
「うん、ありがとう」
陸が見えなくなり、360度海に変わった。この世界には我々4人しかいないんじゃないかという錯覚が、孤独心をくすぐった。
すると突然水しぶきがおき、100Mほど先の海面からオオオクトパスの群れが現れた。20体、は確実にいるだろう。
零はさっそく電をためはじめた。しかし、零の目前にすっとダイドの手がおろされた。
「このごろ連戦続きだろ。たまには休ましてやる。この数零にはちときついしな。よっくみとけよ。燐音!」
はいっ、と凛とした声が響き、6尾の狐に変化した。その背にのり、群れにダイドたちは突っ込んだ。
ダイドが空に手の平を仰ぐと、快晴だった青に、ゴロゴロと雷雲が立ちこみはじめた。
燐音とダイドの体が強烈な青に発光し、その雲に光が送られた。
雷雲は轟々と立ち込み、激しい落雷がオオオクトパスを襲う。
すべてのオオオクトパスは気絶し、海にプカプカと浮かんだ。
「ふう、楽勝だったな」
「すごい……これが本当の魔術師の力なんですね」
「いや、まだまだ本気の10分の1も出してないぜ」
「オオオクトパスをみてごらん。みんな殺さず気絶してるだけでしょ。もともとここに生息してるんだから、殺生はしない、ダイドの優しさよ」
「ほんとだ。僕は殺されないよう精一杯で加減とか出来ませんでした」
「アクオスのやつはアレでよかったんだよ。町荒らしてたしな」
「なるほど」
「ま、もっとすごい技いろいろあるから、楽しみにしとけよー」
「調子にのらないの!」
「はい」
そうこうしてる間に船は目的地に着いた。ここは魔族がうじゃうじゃと蔓延る、孤島だ。もともとは人類が住んでいた島らしいが、魔族に占領されてしまったらしい。ダイドにギルドから直接ここの奪還を命じられ、やってきたのだ。
しかし、空気が悪い。所謂瘴気というものだろうか。
ずっとこの島にいたら、体を悪くしそうだ。