~7~
ダイドの公開処刑が終わり、アクオスに戻り、ギルドで金を受け取った。
それぞれ小遣いを渡され、1時間の自由時間となった。
「燐音ちゃんごめんねーまだおこってるよね?」
「……」
プイッとそっぽを向いている燐音。ご機嫌は斜めのようだ。
「へへへ、やっぱり。まあこっち見てよ、これなーんだ」
燐音がしかめっ面でダイドのほうを見ると、手にはルビーがおかれていた。
「さっきトイレ行ってくるって言ったときに買ってきといたんだ。冗談が過ぎた。俺が悪かったよ燐音、許せ」
まっすぐな偽りのない瞳でダイドは燐音を見た。
「いっつもダイドはそうやって……ずるいよっ」
そういいながら燐音はダイドに飛びついた。仲直りはうまくいったようだった。
「勇者様、どこにいきますか?」
「その勇者様っていうのやめてよ。なんか恥ずかしい」
「では零様とお呼びしてもよろしいので? ルル感激です!」
「もうなんでもいいや。えっとね、まず服屋にいって新しい服を買おうかな」
口では文句をいってるようだが、まんざらでもなさそうだった。
「おじさんー、この一番高い服とグローブください」
「あいよ! おっと、あんたもしかして港のデカダコを退治してくれた人じゃないかい?」
「あ、はいそうです」
「やっぱり! 町中の人が感謝してるよ。こいつぁお礼だ、受け取ってくれ」
そういって水色の魔法石の埋まったリングを渡してきた。
「こんな高価なものいいんですか?」
「あんた、隣の人魚と契約してるんだろ?こいつがありゃ水の力が増す。きっと役にたつよ」
「ありがとうございます、使わせて頂きます」
零はリングを親指にはめ、もう一度礼を言って、店を出た。
「ルルは欲しいものあるかい?」
「ものではないんですが、零様から人間の姿を想像していただきたいです」
「おっとしまった。そういえばそんなことができるんだったね」
「魚の尾では地上を歩きにくいので、ぜひお願いしたいです。ちなみに今はちょっと浮いて移動してます」
てへっとルルが笑うと、後ろからダイドがやってきた。
「服装はもちろん制服だよな零!」
キッと燐音がにらんだ。しかし様子をみる限り仲直りしたようだ。首にはルビーのネックレスがついていた。
「制服……でもルルに似合いそうでいいですね」
「ルルも燐音お姉様と同じ服装がいいです、可愛いですっ」
「じゃあ決まりで。はいっと」
ルルの魚の尾が足に変わり、水色のリボン付きとミニスカートに包まれた。
「わぁっ! 可愛いです、ありがとうございます零様!」
「よく似合ってるよ」
「うん、可愛いわ」
「やっぱり制服は最高だな、男のロマンだ」
ドガっとすねに蹴りが入った。
「いてて。そういえば零、薬指爪に紋章が入っただろ?」
「薬指?いえ、親指に紋章はありますが」
それを聞いて、ダイドと燐音はひどく驚いた。
「ちょっと見せてみろ……ほんとだな。すげえ、零、やっぱりただもんじゃないな」
「え、どういうことですか?」
「本来なら契約出来る相手は一人だけなの。でも親指に紋章がでたってことは、最大で5人まで契約できるわ。本契約はたぶん一人だけだけど」
「初めてみた。これがジョーカーってやつか」
「これすごいんですか?」
「人間ででたのは史上初だ。おめでとう」
「ええっ! めっちゃレアですね、これで少しは役にたてそうです」
「契約者になった時点で、相当な戦闘力だよ。もう零は立派な戦士だ。急いで次の町へ向かうか!」
「はい!」