~5~
「み、みなさんのお役にたてたようで嬉しいです」
頭をポリポリとかきながら、恥ずかしそうに零は言った。
それでは。といい、あとを去った。船を進めていると、一人の人魚にもう一度声をかけられた。
「あの」
「はい」
ふりむく零。事態を察知し、ダイドはいつにもなく瞳を輝かせた。
「もし嫌でなければ、わ、私と仮契約を結んでいただけませんか?少しでも勇者様に恩返しがしたいのです」
赤面しながら人魚は願いでた。
「えっと……」
零はこまってダイドのほうをみる。どうしたらよいのかわからなかったのだ。
「もちろん!大!歓!迎!だ!!よかったな零!これでもお前も仮契約者の仲間入りだ」
「あ、宜しくお願いします」
ペコペコと零は頭を下げる。
「ありがとうございます!精一杯ご奉仕させていただきますね、勇者様っ」
そういって人魚は零にひれ伏した。ダイドと燐音はそれを見て驚いた。仮契約には上下関係がある。このポーズは最大の敬意、最も主人に忠実であり、心臓を主人に捧げることを誓うポーズだ。このポーズによる契約は自分から仮契約を破棄できないため、なかなか行われない稀な契約である。本当に感謝していることが手にとるようにわかった。
ダイドが呪文を唱えはじめる。
「あっ……んっ」
人魚は艶やかな声を上げた。貝の下着からはみ出るように露出された豊満な胸に刻印が浮かびあがる。
零の親指の爪にも、同じ紋章の刻印がうかびあがった。
すると同時に零の体に変化が起きた。視力、筋力、回復力、体力すべてが上昇したのだ。
「すごい……」
湧き上がる力という力に零は感動を覚えた。
「契約者は契約相手の力を分けてもらえる。その結果、あらゆる基礎能力が上昇するんだ。精神力の上昇によって魔力と大魔力もあがっているはずだぞ。雷一発放ったら気絶なんてことももうないだろう。あの出力でも、2発は放てるはずだ。しかし、過信するなよ」
「ははは、これで気絶しなくてすみそうです。あ、そういえば人魚さん、名前はなんていうんですか?」
「契約者が名付け直すんだよ。今決めてやれ」
「えーと、じゃあ……アクルル、なんてどうでしょうか?あだ名はルルとかで」
「素敵な名です!大事にしますっ」
パァっと顔を明るくし、両手を組んで喜びを表現した。