第3話 地下に眠る嘘と、ギリアムの密約
カタコンベの隊長室。俺とヴォルフ、そしてシトリンの三人が、ギリアムの到着を待っていた。
「あんたたち、あの村で何かヤバい物でも見つけたの?」
シトリンの鋭い問いかけに、俺とヴォルフは顔を見合わせる。
「……まあ、なんだ。その辺は代表から聞いてくれよ」
ヴォルフが曖昧に言葉を濁したその時、重厚な扉が開かれた。
「遅れてすまない。シェルター東域に大規模な虚人の発生が確認された。他班にはそちらへ向かわせた」
代表のギリアムは疲れた様子で椅子に座り、すぐさま本題に入った。
「ヴォルフ、エルム。君たちが回収任務で訪れたあの廃村についてだが――地下室から『ある紋章』が見つかったそうだな」
シトリンが眉をひそめる。
「教団の紋章ですか? ですが、教団の設立は【白夜の審判】の後のはず。あの村にそんなものがあるはずはありません」
「そうなんだ。あってはならない紋章だった」
ギリアムは深いため息をつき、指先で卓上を叩いた。
「考えられることは二つ。一つは教団関係者が人目を忍んで紋章を残した可能性。だが、地下室の封印と、虚人が蔓延るあの環境を考えれば現実的ではない。二つ目は――教団が審判以前から存在していた可能性だ」
部屋に重苦しい沈黙が落ちる。
「……だとしたら、教団は何のために設立された? その目的は何なのか。謎は深まるばかりだ」
耐えきれなくなったように、ヴォルフが口を挟む。
「だったら、教団の幹部を一人とっ捕まえて吐かせれば早いんじゃないですか?」
俺はギリアムの険しい表情を横目に、冷静に否定した。
「そんな単純な話じゃない。教団施設は一般信徒の立ち入りが厳しく制限されている上、構造すら不明だ。幹部を拉致するなんて自殺行為だ。それに、教団はシェルターの評議会にも太いパイプを持っている。俺たちの活動を疎ましく思っている議員も多い。ここで無益な摩擦は避けたい」
ギリアムが力強く頷く。
「その通りだ。教団については、私の方で少し当てもある。独自に調べてみるつもりだ。君たちはこのことは他言無用とし、これまで通り任務に励んでくれ」
「……了解しました」
俺たちは隊長室を後にした。
重苦しい空気が廊下を支配する中、ヴォルフがわざとらしく肩をすくめた。
「まあ、悩んでいても腹は減るだけだ。とりあえずは、いつも通り任務に励むとしますかね」
俺は無言で頷き、カタコンベを後にした。
だが、心の中で何かが確実に軋み始めていた。教団という巨大な「嘘」が、じわじわと俺たちの日常を侵食し始めている――そんな嫌な予感が消えなかった。




